看護師の残業代って実際どのくらい?計算方法や請求までの流れをご紹介

2024.3.7

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看護師の仕事では終業時間の直前に緊急対応が生じることもあり、残業はある程度仕方がないことです。それでも残業代の未払いは仕事へのモチベーションも下がってしまい、体調不良のきっかけにもなりかねません。「新人だから我慢しなくては…」「請求すると周りの目が気になる」など様々な思いを抱えながら働いてる方が多いのではないでしょうか。この記事では、看護師の大きな悩みである残業代についてご紹介します。

「新人看護師は残業代をもらえない」って本当?

新卒としてまっさらな気持ちで働き始めたのはいいものの、なかなか業務の要領がつかめず残業が多くなってしまうことがあるでしょう。看護師の仕事に限らず、どんな仕事でも残業の日が続くことがあります。そこでモチベーションを保つのに大切なのが残業代といえるのではないでしょうか。

必要不可欠な業務を行っているのに残業代が出ないことが続くと、心と体の疲労が溜まってしまいます。しかし、ベテラン看護師でも「残業代が欲しいです」なんてことを簡単には口に出すことができないのが現状でしょう。新人看護師であればなおさらです。しかし、新人看護師もベテラン看護師も働く側の権利の1つとして残業代をもらうことができます。

前残業と後残業とは

一般的に残業というと勤務時間が終了してからの業務のことを指します。これを後残業と呼ぶことがあり、看護師の業務でいうと勤務終了後の急なナースコールや急患などの対応が当てはまるでしょう。残業代や手当が出ないケースとしては、勤務時間外に行われる勉強会や研修、人手不足による過重労働などが挙げられます。

これに対して、前残業は業務が始まる前の準備等で費やす業務のことです。始業前の申し送り、掃除、準備など職場から決められた業務であれば前残業とみなされます。この場合、決められた出勤時間より早く出勤しなければならない環境にも関わらず、その分の賃金が出ていないケースが考えられます。

看護師の残業代未払いが多い理由とは

残業代未払いの大きな要因として挙げられるのは、看護師の業務内容が時間で割り切れるものではないということです。病棟勤務であれば急患の対応、手術室勤務であればオペの延長などがあり、外来では診療終了時間ギリギリに受付をする患者さんの対応が発生する場合があります。定時だからといって看護や引き継ぎをせずに仕事を終える看護師はまずいないでしょう。そのため、「看護師の仕事に残業は当たり前」という風潮が今も残っているところが多く、残業代の未払いを請求しづらい環境になってしまっていると考えられます。

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看護師の残業代は平均いくら?

厚生労働省の毎月勤労統計調査(令和5年5月速報)によると、「医療・福祉」に携わる一般労働者の平均現金給与総額338,964円のうち、所定外給与額(残業代、ほか手当など)は平均19,122円となっています。また、所定外労働時間(残業時間)は平均6.6時間でした。この所定外労働時間にはサービス残業は含まれないので、実際にはもっと長時間の残業をしている人もいるかもしれません。なお、看護師のデータではなく、「医療・福祉」と幅広い分野での統計であるため実際の看護師の残業代・残業時間とは異なることがあるでしょう。

参照 : 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年5月分結果確報

看護師の残業代の計算方法

看護師の残業代の計算方法はまず自分が勤務している病院が変形労働時間制を採用しているかどうかの確認から始めます。労働時間制度によって計算方法に違いがあるので注意しましょう。

一般的な労働時間制の場合

1.残業時間を計算する

残業時間は「実際の労働時間-労働基準法で定められた法定労働時間(または所定労働時間)」で計算します。ここでいう実際の労働時間というのは、始業時間前の業務、定時後の業務、研修など全ての業務時間です。まず1カ月分の自分の労働時間を正確に記録しておく必要があるでしょう。労基法で定められた法定労働時間は1日8時間、週40時間までになります。つまり、それを超えた分が残業時間です。

2.残業代を種類ごとにわける

残業代は法定内外のどちらか、深夜残業に該当するかによって割増の割合が変わります。そのため、自分の残業時間を法定内残業、法定外残業、深夜残業などに分類しておくと良いでしょう。

3.月給を時給に直す

時給は「月給÷1カ月あたりの平均所定労働時間」で出すことができます。この場合の月給には住宅手当や通勤手当など1人ひとり異なる額の手当などは含みません。1カ月の平均所定労働時間は「(1年間の日数-年間所定休日数)×1日の所定労働時間)÷12」で出します。

4.残業代を計算する

残業代は「1時間あたりの賃金(時給)×残業した時間×割増賃金率」で計算します。割増賃金率は法定外残業の場合または法定内の深夜残業の場合は1.25倍で、法定外残業かつ深夜の場合は1.5倍です。残業時間が1カ月に60時間を超える場合や、休日出勤をした場合などは、さらに割増賃金率がアップします。

変形労働時間制の場合

この勤務体系は月単位、または年単位で労働時間を調整しています。そのため、1日の労働時間が8時間以上だとしても月単位で考えたときに法定労働時間内であれば残業代は発生しません。変形労働時間制は夜勤や休日出勤が多いシフト制の病院で採用していることが多いので、まず確認しましょう。この労働時間制の場合も、就業規則に定められている労働時間を超えて働いているときは残業代が発生します。計算方法は上記と同じですが特例などがあるので注意が必要です。

残業代の計算例

実際の労働時間が200時間で、法定労働時間(1日8時間22日出勤の場合)が176時間だとすると、残業時間は24時間です。全て深夜残業には該当しない法定外残業だとします。月給が200,000円で平均所定労働時間を172時間((365日-106日)×8時間)÷12)だとすると時給は1,162円。つまり残業代は34,860円(1,162円×24時間×1.25)となります。

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残業代を請求するための一般的な流れ

自分の残業時間や残業代を把握すると高額な未払いがあることに気が付くかもしれません。病院側に残業代を請求するためには必要な書類の準備や証拠集めが肝心です。

請求できる残業代の計算

上記の計算方法で残業代が出れば、実際に支払われている残業代に対していくら足りないのかがわかると思います。その足りない分が請求できる残業代のベースとなるでしょう。

労働条件、労働時間が証明できる書類

労働条件や労働時間が証明できる書類が残業代請求のための鍵となります。まず、残業代を計算するときにも使用する就業規則(契約上の労働時間がわかるもの)のコピーや雇用されたときの労働契約書などの書類を準備しましょう。また、労働時間が証明できる書類としてシフト表、タイムカード、電子カルテの記録、時間外で働いたことがわかるメールやメモなどを集めておきます。未払い残業を請求する場合は、自分の都合で残業したのではなく病院側の業務として残業していたという証拠が必要となります。

病院と交渉する

証拠となる書類が集まったら病院側に交渉をします。こちらが計算で割り出した足りない分の残業代を全ての回収が難しくても、ともに譲歩し納得できるような話し合いであれば解決することができるでしょう。しかし、全く話し合いに応じてくれない場合や隠ぺいされる場合は直接の交渉は難しいため、次のステップに進むことを考えたほうがいいかもしれません。

労働基準監督署への申請や通常訴訟を起こす

労働基準監督署では残業時間の証拠があれば残業代の計算や勤務先への介入をしてくれる可能性があります。ただし、残業代を回収してくれるための部署ではないので、どうしても回収してほしい場合は弁護士に頼むことも1つの方法です。弁護士に依頼して通常訴訟を起こすこともできますが、病院側にはすでに顧問弁護士がついていることがあるため難しさがあると考えられます。また、ここまで話が大きくなるとその病院で勤め続けることが難しくなってしまう可能性もあるでしょう。転職を含めて考える必要がありそうです。

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残業代を請求するときに気を付けること

「残業代がもらえていない!」という勢いだけで請求してしまうと、同僚や先輩に迷惑をかけてしまうことがあるかもしれません。良い職場環境を保つためにも、残業代の請求をする前に自分の業務のやり方を見直してみるのがおすすめ。もしかしたら今よりも簡素化できる部分があるかもしれないからです。まずは時間外に行われている業務や研修に関して自分で日時をメモするところから始めてみてはいかがでしょうか。

また、残業代は退職後も請求が可能ですが、2年経過すると消滅時効になってしまいます。証拠集めや準備に時間がかかるので、残業代の請求を考える場合は早めに行動すると良いでしょう。

労働環境に問題を抱える職場は転職を視野に入れて!

多少の時間外労働は仕方がないとしても、どれだけ頑張っても時間内に終わらない業務量や未払いの残業代が続くのであれば転職を視野に入れても良いでしょう。過重労働で心と体を壊してしまう前に、1歩踏み出して残業代の請求や転職を考えてみてはいかがでしょうか。

また、転職サイトでも残業代を含めた給与の相談や、次の職場を探すアドバイスなどを得ることができます。残業代は法律に触れることなので1人で考えこまずに誰かに相談すると良いでしょう。

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