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2014年05月13日

死と向き合う仕事

日本での1日の死亡者数は、約3000人だそうです。

何ものにもかえがたい命が、
毎日、それほど失われている事実に驚かされます。

誰かの死が、周りの人に与える影響は計り知れません。
身内はもちろん、その人に関わるすべての人にとって
人の死は大きな出来事なのです。


今回、ご紹介するKさんは、
新卒で総合病院の3次救急に入り、
がんばってきた看護師さんでした。

しかし、Kさんはめまぐるしい忙しさの中で、
患者の死を幾度か目の前にして、
救えなかった人の命に心を痛め、
次第に体調を崩されていき、
最終的には退職をされたのでした。

その後、看護職を離れ、
飲食店で勤務をするようになりましたが、
お客さんたちとの楽しい交流をするうちに、
看護師時代の患者さんとの交流を
思い出すようになっていったKさん。

「転職するって決めたわけじゃないんですけど…」
と相談くださったのです。


Kさんに看護師の頃の様子をお伺いしていると
「つらいことも多かったけど、でも、看護師は楽しかったな」
と看護職に戻りたいという思いを強め、
求人を紹介して欲しいとのご依頼を頂きました。

飲食店での仕事は続けたいということで、
両立できる仕事を探すということになりました。

そこで、時間に融通がきき、残業が殆ど無い
耳鼻科クリニックや施設でのケアなどの
日勤の求人をご提案しました。

しかし、Kさんは
「訪問看護がしてみたいんです」とおっしゃるのです。

訪問看護では積極的な治療をせず
ご自宅で終末期のケアを受けている患者さんに出会う可能性もあります。
人の死に心を痛めて看護師を離れたKさんが、
また苦しむことになるのではないかということが
気がかりに思いました。

それからじっくりと話し合い、
Kさんの中で「訪問をやりたい」という気持ちが
強いことがよくわかったので、
訪問看護ステーションをご紹介することにしました。

事業所側には、
Kさんのブランクについての事情を正直に伝えました。

2件の面接を受け、ひとつから内定をもらえました。
Kさんの人柄と経験を高く評価してくださり、
飲食店と無理なく両立ができる条件で、
とんとん拍子に話が進んでいましたが、
入職が近づくほど、Kさんの中で、
「人の死に直面するかもしれない」という不安が、
再び強くなっていくようでした。

看護師としてもう一度自分にできることをしたい、
でも、怖い、
という二つの思いの間で揺れているKさん。

「無理をして、戻らなくてもいいんですよ」とお伝えし、
もう一度、じっくり考えて頂くことになり、
事業所の方からも
「心が決まってから来てもらいたい」と言ってもらえました。


3日後に、Kさんから電話があり、
訪問看護に携わりたいけれど、
また何の力になれないかもしれないから
自分には戻る資格がない気がする、
と落ち込まれていらっしゃいました。

本気で悩まれているからこその言葉だと感じたので、
以前、緩和ケアにご紹介した看護師さんから聞いた、
『患者さんから言われた言葉』をお伝えすることにしました。

それは、
「自分の死に向き合ってくれる人が、自分以外にいてくれてありがたい」
という言葉でした。

「ありがたい」とは、「有り難い」と書きます。
「難しいこと」が「有る」。
困難と一緒に乗り越えてくれた人に与えられる言葉なのだそうです。

人は、死の前では何も手出しはできないかもしれません。
それでも、
そこに立ち会うことのできる看護師は
けっして無力ではないのです。


Kさんは最終的に、
「気持ちが揺れたらまた相談します」と約束し、
訪問看護ステーションに入職されました。

その後、介護の必要な方や自宅療養の方などを中心に
訪問看護に慣れていったKさん。
最近はターミナルケアの方もいらしたようですが、
今のところ、相談のお電話はありません。
きっと自分のできることを精一派、
頑張られているのだと思います。


人の死に立ち会うことは
想像を越える辛さがあるのではないかと思います。

でも、あなたは無力ではありません。
看護師として、その方のそばにいることこそ、
“有り難い”チカラになれるのですから。

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