2024.2.9
「うつ病から現場に復帰したい」 国立病院の急性期病棟で4年間勤務したFさん(26歳)の場合
国立病院の急性期病棟で4年間働いてきたFさん。気がつけば中堅の立場で先輩と後輩の板挟み状態となり、激務の果てにうつ病を患ってしまいました。長期療養から現場復帰を目指すものの、どのくらいの仕事なら携われるのか、どれほどの無理をするとダメなのかが見えていないとのこと。アドバイザーは、Fさんと一緒に働き方について悩み、働くイメージを固める方針を導きました。
日本看護協会の「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書(P.23)」によると、傷病による連続休暇を取得した正規雇用の看護職員のうち、メンタルヘルス不調者がいた病院割合は73.9%でした。
いたと回答した病院割合 |
平均値 |
中央値 |
|
傷病による連続休暇(7日間以上)を取得した正規雇用の看護職員 |
85.2% |
12.4人 |
6人 |
うちメンタルヘルス不調者 |
73.9% |
4.9人 |
3人 |
引用:日本看護協会「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書(P.23)」
うつ病は病気として認識されている傾向にあるものの、症状への理解やうつ病の状態にある方への接し方については、わからないという人も多いのではないでしょうか。
26歳のFさんは、新卒で国立の病院に入り、急性期病棟で4年間看護師として勤務していました。
常に患者さんの入れ替わりが激しく、忙しい病棟でしたが、懸命に仕事を覚えてきました。気づくとFさんは中堅の立場になっており、先輩と新人の板ばさみの中で激務を乗り越えてきたそうです。
そのような状態が続いた結果、Fさんはうつ病になってしまい、長期療養を余儀なくされました。
Fさんは真面目で責任感が強く、周囲に気遣いできる人です。アドバイザーの私にさえも、会話の端々に細かい気遣いが感じられました。
また、「できない」や「無理」という言葉をあまり使わない方なのです。
転職では、以前の職場でつらい経験や不満を感じたことから、それらをできるだけ避けた条件の病院を探そうとするものです。しかし、Fさんはこちらがご提案するものに対し、難色を示さないのです。
これはFさんの2つの心情の現れだと思います。
1つ目は、Fさんが「人から言われたことにNOと言えない」ことです。NOと言えないFさんは、仕事での頼みごとが積み重なり、必死でそれに応えようとしてしまいました。結果的にFさんの身体が悲鳴を上げ、うつ病になってしまったのでしょう。うつは、無理しすぎた自分からのサインだったのです。
2つ目は、うつ病を治し、「社会に復帰しよう」と思えるようになったものの、自分が「どの程度の仕事が可能」で「どのくらいの無理をするとダメなのか」ということが、ご本人にも見えていないことです。
人に迷惑をかけることが苦手なFさんは、「曖昧なことをアドバイザーに伝えても悪いから」と気を遣い、不安を口にすることができなかったのです。
私は、「一緒に悩むことが私たちの仕事なのです。先が見えない未来を一緒に悩み、探させて下さい」とお話ししました。
そして、数ある病院のなかからどのような働き方が可能なのかを、2人でイメージしながら考えました。Fさんが働いたと仮定する場合、どのような問題が出て、どう対処できるのか、できないのかを具体的に仮説を立てました。
Fさんと話を進めるなかで、一緒に気づけたこともありました。それは、「病院側が受け入れてくれるのか」という不安の前に、Fさんが「鬱病だった自分自身を引け目に捉えている」ということでした。
うつ病はサボりではありません。悪いことでもありません。うつ病になった人は根性のない人でもありません。
Fさんは責任感が強く、一生懸命で、自分でなんとかしようと誰にも言わずに頑張った結果、身体が耐えられなくなってしまったのです。
うつ病は、「自分を見つめてあげて」という心身からのメッセージです。そのメッセージを無視したり、なかったことにしようとしたりしては、せっかく現場復帰しようと思っても、また症状が出てしまうかもしれません。
せっかく心の叫びに気づくことができたのですから、その声に耳を傾けながら生きていく、と思ってほしいのです。
うつ病と向き合ってきた苦しみは、患者さんの気持ちに寄り添える力となり、決して無駄ではありません。
Fさんは、ともに仕事探しを進めるうちに少しずつ自分を受け入れ、「無理しなくてもいいんだ」という気持ちになっていきました。
じっくり話し合った結果、Fさんが再出発の始めの一歩に選んだのは、今までのキャリアの延長線上にあり、心と身体に無理な負担をかけ過ぎない程度の勤務が可能な、急性期寄りの有床クリニックでした。規模は小さめで、働いている人のアットホームさが患者さんにも評判のクリニックです。
クリニック側には、Fさんの経歴やうつ病のこと、現状と不安、それでも看護をしたいという意欲、真面目で勤勉な性格などをしっかりお伝えしました。
クリニックの先生からは、過去にも持病を持ちながら長く勤めた看護師さんがいたので、無理せずにはじめは勤務日数や時間を少な目で、体調を見ながら少しずつ増やしていけばいい、と言って頂きました。Fさんは、不安はあるけれど、一歩踏み出せた自分に安心したようでした。
うつ病は目に見える病気ではないため、本人が自覚するのに時間がかかり、自覚した時点ではかなり状況が悪いこともあります。しかし、多くの看護師さんが現場復帰をしています。決して無理なことではありません。
自分でどのくらい働けるか、どのような病院がいいのか、イメージが見えていなくても大丈夫です。転職における不安や悩みを抱えている方は、アドバイザーに何でも相談して下さい。
看護師がやむを得ない事情から復職する際は、働く環境のイメージを固め、病気であったことを悲観的に捉えすぎないことが重要です。それぞれのポイントを掴み、転職活動に活かしましょう。
看護師として復職する際は、自分がどのような環境でなら働けそうなのかをイメージします。想定できるトラブルやその対処方法も具体的に考えてみると、自分が無理なく活躍できるかどうかを判断することが可能です。「この職場なら一歩踏み出せそう」と思える環境が見つかれば、勇気をもって進みましょう。
やむを得ない事情で働けない期間があったとしても、その空白期間をマイナスに捉えるのは避けましょう。仕事が原因でうつ病を患っていた人は、仕事に対する責任感が強く、物事をやり遂げようとしていたという強みがあります。病気になった過去があった場合も、同じような状態にある患者さんのサポートにつなげることが可能です。
「どの求人なら無理なく働けそうなのか、自分では判断が難しい」とお悩みの方は、レバウェル看護にご相談ください。
レバウェル看護では、専任のアドバイザーが親身にヒアリングを行い、求職者の働くイメージが掴みやすい求人をご提案いたします。病気などの事情があった場合も、アドバイザー経由で病院側に伝えることが可能です。働く条件の調整や交渉を担当いたしますので、1人で仕事探しをするよりも効率的。復職を検討している方も、安心してサービス利用ができますよ。
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