「“あなたが来るのを楽しみにしていた”というお言葉が、すごくうれしいです」訪問看護師インタビュー・吉田さん・松村さん

2021.6.15

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在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回取材したのは、「株式会社わざケア 訪問看護ステーションわざケア」に勤務する吉田さんと松村さん。病院での勤務を経て訪問看護師にキャリアチェンジしたお二人に、訪問看護の道に進んだきっかけや仕事のやりがいについて伺いました。

プロフィール

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右:吉田(よしだ)さん
「株式会社わざケア 訪問看護ステーションわざケア」に勤務。脳神経外科病院のICUで4年間働き、もともと興味のあった訪問看護の仕事にチャレンジするために退職。2018年4月より現職。趣味はゲームや映画鑑賞。休日は出産予定のお子さんのベビー用品を準備している。

左:松村(まつむら)さん
「株式会社わざケア 訪問看護ステーションわざケア」に勤務。2017年に大学を卒業したあと、東京の大学病院に入職。NICU・GCUの病棟で看護師としての経験を積み、結婚を機に退職。旦那さんの転勤で宮城県に移住し、県内の総合病院を経て2020年11月に当ステーションに入職。休日はダンスやサッカー、近所のサイクリングなどを楽しむアクティブ派。

■はじめは病院で経験を積み、ゆくゆくは訪問看護の道に進みたいと考えていた

——現在のお仕事内容について教えてください。

吉田さん:利用者さまの健康状態の確認・服薬管理・医療処置・排泄ケア・入浴支援などがメインです。点滴をはじめとする医療処置については、医師の先生から指示を受けている利用者さまを対象に行っています。一日の訪問件数は4~5件で、訪問先にはステーションから1人1台支給されている社用車で向かっています。

松村さん:私も利用者さまの健康管理とケアを行っています。病院を退院されてきた利用者さまのケアで多いのは、尿道カテーテルの交換をはじめとした排尿・排便のコントロールですね。そのほかには、胃ろうの管理や点滴の投与、褥瘡の処置などを行っています。お体に褥瘡や傷がある方はお一人での入浴がむずかしいので、そのような場合は入浴の介助に入ることもあります。

——これまでの経歴について教えてください。

吉田さん:当ステーションに転職するまでは、脳神経外科病院のICUで働いていました。4年間勤めたあとに病院を退職し、2018年の4月に当ステーションに入職して現在に至ります。訪問看護師歴は、2021年の4月で4年目を迎えました。

松村さん:私は2017年に大学を卒業してから東京の大学病院に入職し、NICUとGCUの病棟で新生児の看護を担当していました。その後、結婚と同時に旦那さんの転勤が決まり、転勤先の宮城県についていくために東京の病院を退職しました。

宮城県に移住後、はじめに県内の総合病院に入職したのですが、そこでの働き方が自分には合わず、早い段階から次の転職先のことを視野に入れていました。そのタイミングで、ずっと気になっていた訪問看護の仕事にチャレンジしてみようと思い、2020年の11月に当ステーションに転職しました。もう少し病院で経験を積んでからキャリアチェンジをしようと考えていたので、最初は「思い切った決断をしてしまったかな」という思いもありました。でも、今では勇気を出して飛び込んでみて正解だったなと思っています。

——訪問看護の道に進もうと決めたきっかけは何ですか?

吉田さん:看護学生のころに、実習でお世話になった訪問看護師さんに憧れたことがきっかけです。その訪問看護師さんはとても明るい方で、リハビリを拒否する利用者さまのやる気を出させるのが上手だったんです。看護師さんの一言で利用者さまが楽しそうにリハビリに取り組まれている姿を見て、病院で基本的なスキルを身につけたうえで、いずれは自分も訪問看護の道に進みたいなと思いました。病院に入職してICUで働くなかで、患者さまと過ごす時間を大切にしながらケアにあたれる訪問看護の仕事への興味がさらに大きくなっていきました。

そのようなときにプライベートで結婚が決まり、夜勤のない職場を探していたため、「これは丁度良いタイミングだな」と思って訪問看護ステーションへの転職を決めました。

松村さん:学生時代から訪問看護の仕事に興味があり、いずれは訪問看護師として働きたいと思っていたことがきっかけです。まずは病院である程度の臨床経験を積んでから訪問看護師を目指そうと思っていたので、大学を卒業してすぐには訪問看護の仕事に就きませんでした。

ただ、病院に入職してからも訪問看護への興味は強くもっていました。病院では急性期病棟の患者さまのケアを担当することが多く、すぐに退院したり別の病棟に移ったりされていく患者さまを見て、「ご自宅に戻ったあとはどのような生活をされているんだろう」とずっと気がかりに感じていました。その後、結婚を機に宮城県に引っ越してきたことや、転職先の病院が自分に合わなかったことなど、いくつかの要因が重なって訪問看護の仕事にチャレンジしてみようと思いました。

 
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■訪問中でも仲間と連絡が取れるので、「1人じゃない」という心強さがある

——訪問看護師へのキャリアチェンジを考えるにあたって、どのような不安がありましたか?

吉田さん:訪問看護では幅広い疾患をお持ちの利用者さまのケアに携わるので、これまでに脳神経領域に特化した看護を行ってきた自分にとって、診療科目を問わずさまざまな分野の知識を身につけなければならないのは大変だなと思っていました。また、入職して1人で訪問に行くようになったときに、自分だけで問題なく立ち回れるのかという不安もありました。ただ、不安な気持ちよりも、どちらかというと在宅看護の仕事ができることへの希望やワクワク感のほうが強かったですね。

松村さん:私は20代で訪問看護の道に進むことを決めたので、周りにいる30代・40代の方と比べて看護師としての経験が全然足りていないことに大きな不安がありました。「病院で経験したことがない処置が必要になったときに、自分一人で適切な判断ができるだろうか…」という不安を抱えながら当ステーションに入職しました。

——実際に入職してみて、そのような不安は払拭されましたか?

吉田さん:はい。iPhoneが1人1台支給され、訪問中に分からないことがあれば先輩に連絡して相談できる体制があったので、不安はすぐに解消できました。入職するまでは「訪問看護の仕事は何があっても1人でどうにかしなければならない」という印象が強かったのですが、いざ入職してみると先輩が丁寧に仕事をフォローしてくれたので、「1人で仕事をしているわけじゃないんだ」という安心感がありました。
ちなみに、iPhoneはスタッフと連絡を取り合うときだけでなく、訪問中に利用者さまのデータを入力するときにも使用します。訪問中のすきま時間を利用して記録作業ができるので、残業はほぼないですね。

また、現在は妊娠中ということもありまして、重症度の高い利用者さまの訪問は、必要に応じて上司に相談しながら融通を利かせてもらっています。オンコール対応も、「今はちゃんと休みなさい」「夜はしっかり寝なさい」と言われて、お休みさせてもらっています。妊娠初期は切迫流産で2週間の自宅安静になってしまったのですが、仕事に復帰したときにスタッフのみなさんが「おかえり」と言って温かく迎え入れてくれたので、本当にありがたかったです。

松村さん:周りにいる先輩がみなさんとても優しくて話しやすい方ばかりだったので、分からないことを一つずつ教えてもらいながら仕事に慣れていけました。また、自信をもって1人で訪問できるようになるまで先輩が何度も同行してくれたので、不安は少しずつ解消されていきました。

当ステーションにはベテランの方だけでなく20代・30代の方もいるので、看護師としての経験年数が近い先輩にアドバイスをもらうことで、「こうやって働いていけば良いんだ」という要領がつかめてとても参考になりました。

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■訪問を重ねるなかで利用者さまとの距離が縮まり、名前で呼んでもらえるように

——訪問看護のやりがいはどのようなところだと思いますか?

吉田さん:一人ひとりの利用者さまと丁寧に関われるところだと思います。病院のICUで働いていたときは、業務に追われて患者さまと向き合う時間がなかなか取れなかったのですが、今は利用者さまとゆっくりお話ししながらケアにあたれることがとても楽しいですね。

利用者さまと向き合う時間が増えたことで、利用者さまによってコミュニケーションのとり方を変えていくことの大切さに改めて気づきました。以前よりも表情や声のトーンなどに気を配り、「この利用者さまにはどのように接すれば心を開いていただけるのか」を考えるようになりました。利用者さまとのコミュニケーションで悩んだときは、ほかのスタッフに相談して「あの利用者さまは○○の話題が好きだよ」「こういう話をしたら興味をもってもらえると思うよ」といったアドバイスをもらっています。

利用者さまに合わせたコミュニケーションの方法を模索していくのは簡単ではないですが、自分なりに工夫してきたことが実を結び、利用者さまとの距離を縮められたときはやりがいを感じます。

松村さん:ご家族との関係性を含めて、利用者さまの生活を深く知れることにやりがいを感じています。病院では患者さまの入院中の生活をサポートすることに特化しているので、普段はどのような生活をされているのかが見えにくい部分がありました。利用者さまのご自宅に訪問すると、お酒やタバコを楽しみながら羽を伸ばしていらっしゃる方もいて、その方らしく生活されている様子を見られるのが面白いです。

——反対に、「ここは大変だな」と感じるポイントがあれば教えてください。

吉田さん:夏は暑く、冬は寒いことですね(笑)。病院では空調が効いた室内で快適に仕事ができていましたが、訪問看護の現場では、真夏でも扇風機1台のみで過ごされていたり、冬にストーブがついていなかったりするご家庭があります。今ではそのような環境にも慣れてきましたが、慣れないうちは汗だくになりながらケアを行って熱中症になったり、寒さで風邪を引いたりしていましたね。

また、終末期の利用者さまが増えてオンコールの呼び出しが多くなると、電話が来ないか気になって夜になかなか眠れないことがありました。現在はそこまで重症度の高い方はいらっしゃらないので、問題なく眠れています。

松村さん:現場に向かうのはあくまでも自分1人なので、最終的には自分で判断して対応しなければならないのは大変ですね。「時間内にやるべきことが終わらない!」というときでもスタッフの直接的な助けを借りられないので、もっと経験を積んで上手く立ち回れるようになりたいなと思っています。判断に迷ったときは、すぐに上司や先輩に連絡して質問するようにしています。

また、はじめのうちは覚えることが多くて大変でした。たとえば、ケアの内容は同じでも、ご家庭によって使う道具やケアの手順が変わる場合があります。「ここのご家庭では、あまりなじみがないオムツやペーパーを使っているな」というケースもあるので、利用者さまに合わせたケアのやり方を覚えていくのに苦労しましたね。あとは、訪問エリアの土地勘が全くなかったので、スタッフに道順を口頭で教わっても最初はスムーズに訪問先を回れなくて大変だったのを覚えています。

——訪問看護師として大切にしていることは何ですか?

吉田さん:看護師としての価値観を利用者さまに押しつけないことを大切にしています。お酒やタバコについては、「これくらいの量であれば大丈夫だけど、このラインを超えたらダメ」という落としどころを見つけて、健康に影響が出ない範囲であれば利用者さまのお気持ちを尊重するようにしています。

松村さん:1回の訪問で利用者さまと約1時間一緒に過ごすことになるので、その時間を少しでも「楽しい」と思っていただけるように心がけています。利用者さまのなかには、ほとんど外出をせずに一日を家の中で過ごされている方もいらっしゃるので、ご自宅に訪問した際には、利用者さまのお話を積極的に聞くようにしています。利用者さまに「若いころに何をしていたか」「どのようなものが好きだったのか」を聞くとみなさんとても楽しそうに話してくださるので、そこからいろいろなことを聞き出して話を広げていますね。

——利用者さまとの印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

吉田さん:70代くらいの寝たきりの利用者さまのお看取りに立ち会った際に、ご家族のみなさんと一緒にとても和やかな雰囲気のなかでお看取りができたことが印象に残っています。エンゼルケアでは、ご家族と話し合って利用者さまのお気に入りのジーンズの服を着させて、髪の毛もバリカンで綺麗に整えました。最後は利用者さまとご家族の集合写真を撮らせていただいたのですが、みなさんが穏やかな表情でカメラに笑顔を向けてくださっていたのが印象的でした。その後、ご家族から「家の中で笑顔で看取れて本当に良かったです」と感謝の言葉をかけていただき、とてもやりがいを感じました。

松村さん:訪問看護の仕事を始めたばかりのころに、ある利用者さまから「あなたが来てくれるとすごくうれしいわ」と言っていただけたことがありました。はじめのうちは「これで大丈夫だったかな…」「何かやり残したことはなかったかな」という不安を抱えながら仕事をしていたのですが、「あなたが来るといつも楽しいから待っていたのよ」というお言葉をいただいたときは、とてもうれしくて大きな励みになりました。

また、最初に名前を覚えてくださった利用者さまのことも強く印象に残っていますね。はじめは「新人さん」と呼ばれていたのですが、何度か訪問を重ねるうちに「松村さん」と名前で呼んでくださるようになったときは、本当にうれしかったです。

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■利用者さまが一日でも長く、安心して在宅生活を送れるようにサポートしたい

——今後の目標を教えてください。

吉田さん:利用者さまがご自宅で安心して生活できる環境を整えてあげられる看護師になりたいなと思っています。ご自宅にいると、どうしてもお体の状態がすぐれずに入院になることもあるかと思います。ただ、そのような状況をできるかぎり防ぐためにはどうすれば良いかをスタッフ全員で考え、一日でも長くご自宅で過ごしていただくためのお手伝いをしていきたいですね。

松村さん:私は訪問看護の仕事を始めてからまだ1年未満と経験が浅いので、まずは訪問看護師としてできることをもっと増やしていきたいです。そして、利用者さまとの心の距離をもう少し縮めて、より強い信頼関係を築いていけたら良いなと思っています。

また、訪問看護師として外部のドクターの方やケアマネジャーさん、ヘルパーさんなどと関わる機会が増えたことで、さまざまな職種の方と連携しながら地域の方々を支えられる人になりたいと思うようになりました。

——「訪問看護に興味があるけど迷っている」という看護師の方にメッセージをお願いします。

吉田さん:「訪問看護は敷居が高い」「幅広い知識がないと働けない」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、個人的には基礎的な看護スキルとやる気があれば十分チャレンジできると思っています。当ステーションの看護師は約9割が訪問看護未経験からスタートしていますし、看護師としての経験年数が3~4年という方もいます。利用者さまとコミュニケーションをとることが好きで、利用者さまの生活スタイルを尊重したケアができる方であれば、技術や経験はあとからついてくると思います。

松村さん:私自身、看護師としての経験が浅いなかで訪問看護の世界に飛び込むようにして入りましたが、実際に仕事をしてみて思うのは「すごく楽しくてやりがいがある」ということです。病院と違う環境に身を置くのは不安だと思いますが、そこを乗り越えて思い切ってチャレンジしてみると、「やって良かった!」という気持ちを強く感じられると思います。

また、職場が違えば考え方も雰囲気も大きく変わるので、いくつかのステーションを見学してみて、自分に合った転職先を見つけてほしいなと思います。

——ありがとうございました。

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