誤嚥予防とは?役割・目的・取り扱い時の注意点まとめ

2016.9.5

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はじめに

誤嚥とは、「食物を間違って飲み込み気管に入ること」です。脳血管障害などの神経障害や加齢などにより、嚥下障害・嚥下機能が低下。

そのため、誤嚥を招き肺炎や気道閉塞を起こした結果、死に直結する可能性があります。

楽しいはずの食事が苦痛にならないよう、誤嚥予防を学習し実際の看護に役立てて行きましょう。

誤嚥予防とは?

食物や水分を飲み込む(嚥下)運動は、先行期(食物を認知する過程)・準備期(食物を嚥下しやすいように咀嚼する過程)・口腔期(咀嚼した食塊を嚥下反射が起こる場所まで送る過程)・咽頭期(嚥下反射により食塊を食道口へ送る過程)・食道期(食道口から胃の噴門部まで食塊を送る過程)を経て行われます。

嚥下中枢は延髄にあり、嚥下運動にかかる口唇から食道までの筋群は、脳神経のⅴ三叉神経、ⅶ顔面神経
ⅸ舌咽神経、ⅹ迷走神経などに支配されています。

嚥下障害になると、日常的には当たり前に行っていた食事行為に、食事時間の延長や食形態の変化、体位の補正などによる精神的苦痛をもたらし、食べる楽しみを喪失する場合があります。

看護師は、誤嚥を引き起こしやすい患者に対し間接訓練(食物を用いない基礎訓練)と直接訓練(食物を用いる摂食訓練)を行い誤嚥予防により患者の安全・安楽をはかりながら、患者の食べる意欲を促進させ、食のQOL(生活の質)を向上できるよう援助していくことが重要だと考えます。

誤嚥予防の目的とは?

栄養・水分接種を口から安全に摂取できるようにする。

食べることによる苦痛を最小限にとどめ、口から食べることの喜びを持てるようにする。

以下誤嚥予防訓練(間接訓練と直接訓練)について説明していきます。

間接訓練について

間接訓練は嚥下運動の各期の神経障害に応じて、残存機能を維持、または刺激を与えて嚥下機能を拡大させるために重要です。

下記の項目を把握してから訓練を行いましょう。

1 嚥下機能の評価(障害部位と程度の確認)
 出現する症状や嚥下運動にかかわる筋群を支配する神経反射を確認することで、障害されている部位を 推測するこよができます。

2 間接訓練を始めるための確認事項
 バイタルサインの安定
 全身状態のチェック
 疲労感を与えないよう無理のない範囲で行いましょう。

3 間接訓練前の口腔の衛星保持
 間接訓練の段階から、できるだけ口腔内の衛星環境を整えましょう。

嚥下体操

食事動作は口腔や咽頭周囲の運動だけでなく、上半身や全身の運動を行うことで嚥下に必要な機能を高めることができます。

1 姿勢の確認
椅子に深く腰掛け、背筋が伸びていることを確認。リラックスできるように、背もたれやひじ掛けを利用します。車いすを利用する場合は、ブレーキがかかっているかの確認も忘れずに行いましょう。
出来る限り患者自身に正しい姿勢を意識させ、可能なところまで本人が行うようにします。

2 深呼吸3回
下腹部に患者自身の手を当て、深い腹式呼吸を促す。通常の深呼吸と反対に呼気から始め、肩を上げて無理な吸気をしないよう注意し、吐ききったらお腹の底までたっぷり吸うを3回くりかえします。

3 首の運動(負担をかけないようすべてゆっくり行いましょう)
斜め左上→斜め右下(2回)、斜め右上→斜め左下(2回)正面を向いた位置から左上の天井をみるようにゆっくりと首を斜めに回し上げる、上げきったところで静止し5~10秒止めます(2往復)。右下で静止したのち、一度正面に戻し再度反対側の斜め右上→斜め左下を同じく2往復行います。
顔を左右に向く(3回)横に倒す(3回)下へ向けてうなずいたところからぐるっと一周ゆっくり回す、左回し右回し各1回行います。

4 肩の運動
ゆっくり肩を上げて、上げきったら力を抜いてストンと落とします(ゆっくり3回)
肩を回します(前からゆっくり2回うしろもゆっくり2回行います)

口腔周囲筋群の自動運動訓練

1 口腔運動
「ゥ-」の口唇を出来るだけ前に突き出し「ィ-」の口唇を出来るだけ左右にひきます。
口唇をすぼめたまま左右に動かします。

2 舌の運動
舌を前に突き出しもとに戻します。
舌で左右の口角をなめます。
舌で鼻と顎をなめるようにします。

3 顎の運動
口を大きく開けパッと閉じます。

4 軟口蓋・頬の運動
ストローでコップの水をブローイングします。
丸めた紙を息を吹いて遠くへ飛ばします。
頬を膨らませたりすぼめたりします。

口腔周囲筋群の他動運動

1 上唇のマッサージ 上唇を中央部・左右側と3等分して指2本でつまんだり伸ばしたりを行います。

2 下唇のマッサージ 下唇も同様に行います。

3 口唇のストレッチ 口唇を上下方向に開閉します。

4 口輪筋のストレッチ 口腔内に人差し指を入れて口輪筋をつまみ、上下左右にストレッチを行います。

5 舌のマッサージ スプーンや指で圧迫・指でストレッチを行います。

口腔内のアイスマッサージ

仮性球麻痺者では、K-pointを冷やした綿棒で軽く圧を加えて刺激すると、咀嚼運動に続き嚥下反射が誘発されます。

また強い刺激を与えると悪心・嘔吐を誘発させるので注意が必要です。

呼吸訓練・発声訓練・咳嗽訓練

1 呼吸訓練
はじめに、ゆっくり大きく息を吸うゆっくり息を吐くを数回繰り返します。慣れてくれば大きく息を吸って3秒息を止めゆっくり息を吐き出すを数回繰り返します。次にゆっくり息を吐きだし3秒息を止め大きく息を吸うを数回続けます。

2 発声練習
「かあ」と発声して口蓋の奥を上げる「ああ」と発声しながら一気に息を吐きだすを数回繰り返します。

3 咳嗽訓練
空咳を1セット(5~10回)を2~3セット行います。

シャキア訓練(喉頭挙上訓練)

喉頭を挙上する訓練により嚥下機能に必要な舌骨上筋群の筋力強化をはかることで食道入口部を開大させる効果があります。
1 仰臥位になります。

2 両肩を床につけたまま足先をみるように、頭部のみ挙上します。

3 可能であれば頭部挙上したまま60秒間保持し、その後頭部を下し60秒休憩。これを3クール行います。

4 1秒間隔で頭部を挙上する反復挙上を30秒繰り返します。(頚椎症や関節可動域に制限がある患者には行わないでください)

声門閉鎖訓練

反回神経麻痺など声門閉鎖不全がみられる場合に行います。
押す動作や引く動作に合わせて声を出すことで、声門閉鎖を強化することができます。

椅子に対して垂直に両手で力を込めて引き上げたり、壁を強く押しながらできるだけ強く発声します。

嚥下パターン訓練

嚥下前に吸気を鼻から入れて、しっかり一度息をこらえてから嚥下し嚥下後、口から息をはきます。

<h3>直接訓練について< h3=””>

実際に食べ物を用いて行う訓練」です。摂食動作の一連の過程をすることで嚥下をつかさどる筋肉の強化ができ、経口摂取のために嚥下機能を回復させることも誤飲防止につながると考えます。

患者の全身状態の把握

1 覚醒状態の確認(覚醒状況が不十分な場合飲み込みや咳反射の反応が鈍く、誤飲を起こしやすくしてしまいます。)

2 咽頭咳の確認(喀痰量が多いと出し切れない痰が喉にたまることで食物の通貨を困難にしてしまいます。咽頭がゴロゴロする場合は食事の前に吸引をしておきましょう。)

3 呼吸状態の変化に対応できるようにパルスオキシメーター・吸引器を準備しておきましょう。

口腔環境の整備

1 口腔内に物理的な刺激を与えます。(口腔内アイスマッサージなど)

2 口腔内の感覚や味覚に刺激を与えます。

3 口腔内の細菌除去(不顕性誤飲などの危険性を低下させます)

4 口腔周囲筋のストレッチをおこないます。

5 食事前の関節訓練(上記)をおこないます。

環境整備

食事がとれる環境を整えゆったりと食事ができるようにします。

他からの刺激が入らないように、個室での食事を試みたりカーテンで周囲と隔離したり、テレビなどの食事に集中できないものを視野に入らないようにします。

(注意力障害や前頭葉障害のある患者の場合は、環境を整えることにより食事への意欲や集中力アップに期待できます)

安全な体位の工夫

安全に食べ物を摂取できる姿勢は、口腔・咽頭の障害の程度によって異なります。

リクライニングの角度や体幹の向きは、患者の状況に応じて選択する必要があります。

食物形態・量を調節し、嚥下しやすい食べ物を選択して直接運動を行う

嚥下しやすい食べ物とは、咀嚼や食塊を形成することを補い、咽頭に残りにくいものをいいます。

・味付けは、濃く温度は冷たいものか温かいものか、はっきりしているもののほうがいいです。(濃い味付けや温かいものは唾液産生や嚥下反射の誘発に効果があります)

・増粘剤(とろみ剤)を使用して食べ物の粘度を調節します。(液体に粘度をつけることことで咽頭への送り込みの速度が遅くなり誤飲しにくくなります)

・スプーンはすくう部分が小さくて、薄く平たい(浅い)ものを選びましょう。

・嚥下後口腔内を観察し残留物の有無・患者の状態変化の確認を行います。

摂食状態を観察し直接運動の評価を行う

摂食時の体位・摂取量・誤飲の有無・食物形態の適切さ・摂食が安全に行えたかなど評価して実際の食事摂取への移行を判断します。

おわりに

食べる楽しみを失わないためにも、訓練は必要です。

今まで意識せず出来ていたことができない悲しみ、屈辱を患者のみなさんは、味わっているのではないでしょうか。

看護師はできるだけ患者の気持ちに寄り添って訓練終了後は、患者の労をねぎらい経口摂取できるよう支援していきましょう。

患者の疲労の程度を観察しながら訓練の必要性を説明し、主体的に実施する意欲を高められる看護が出来ればうれしいです。

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