ひとこと回答
手術直後のシバリングは、術中の低体温や、手術侵襲により患者さんの体温の設定温度が高くなるために起こります。シバリングの予防のために、術直後は保温・加温・痛みのコントロール・バイタルサインを含めた全身状態の観察が大切です。
詳しく説明すると
ICU病棟での勤務お疲れ様です。手術直後のシバリング、患者さんも辛そうで、何とかしたいところですよね。メカニズムを理解して、予防と看護に活かしていただければと思います。
シバリングとは
患者さんの体温が、維持したい温度(設定温度)より低下したときに、患者さんの体が筋肉を収縮させて熱を産生させようと反応して起こる、ガタガタと震える身震いのことです。
手術直後のシバリングの原因
手術中は、滅菌ガウンや灼熱等などで暑くなりやすい術者が、汗をかいて拭いたりすることで滅菌を保てなくなる可能性や、細菌繁殖の視点から室温を低く保つことが多く、患者さん自身も術野の露出により低体温になりやすくなっています。
手術中は、麻酔の影響により、患者さんの体の設定温度が下げられているため、患者さんの体温が下がっても設定温度との差が少ないことから、シバリングはほとんど起こりません。手術が終わり、麻酔から覚醒しはじめると、患者さんの設定体温はいつも通りに戻りますので、その差を埋めようと体が反応してシバリングが起こります。
また、患者さんの体温が設定体温から下がっていなくても、シバリングが起こることがあります。手術の侵襲により、細胞からサイトカインという物質が分泌されます。サイトカインは、患者さんの体温の設定温度を上げる影響があります。患者さんが通常の体温でも、サイトカインによって設定温度が上がるため、その差を埋めようとシバリングが起こります。手術の侵襲が大きいほど、サイトカインは分泌されるため、シバリングが起こりやすくなります。
手術後のシバリングに対する看護
手術後の患者さんを受け入れるときは、低体温に備えて電気毛布などで布団とベッドをしっかりと温めておきます。また、術後受け入れ時の創部やドレーンの確認の時は、しっかりと観察しつつ体温の低下を最小限にするように、掛物を全部取らないで観察していったりと配慮をします。
痛みはシバリングを誘発するといわれており、要因とならないためにも術後の痛みのコントロールを徹底します。
シバリングが起こってしまった場合は、まず加温します。温罨法や電気毛布を使用し、シバリングを最小限にできるよう努めます。
手術後は、心電図やSpO2モニターなどを装着し、常時観察しているかと思います。シバリングが起こることで、心電図の基線は揺れてモニターが不十分になったり、末梢の血管が収縮するためSpO2モニターが感知できなくなったりします。モニター観察が不十分な時は、いつも以上に見て触って感じてという全身状態の観察が大切となります。
加えて、シバリングは、酸素消費量を増大させ、末梢血管が一気に収縮することで急激に血圧が上昇したり、脳圧を上昇させたりします。また、意識的ではない筋収縮により創部の痛みも増大します。早期に加温してシバリングの時間を最小限にするとともに、シバリングによるバイタルサインの変動が術後出血など合併症を引き起こさないか、注意して観察します。
シバリングが続くことにより、バイタルサインの変動が大きい場合は麻酔科医や医師に報告し、必要に応じて薬剤投与で対応します。
おわりに
シバリングは、患者さんの苦痛はもちろん、術後の経過に影響する可能性があるため、予防と早期対応が大切です。今回得た知識とこれからの経験を重ねて、今後の看護に活かしていってくださいね。応援しています。