質問したきっかけ
私は循環器内科病棟に勤務する新人看護師です。入院患者さんの病名で「うっ血性心不全」と診断されているのですが、調べてみても詳しい病態がわかりません。心不全と診断されている患者さんもおり、違いがよくわかりません。うっ血性心不全について詳しく知りたいです。
質問したいこと
うっ血性心不全の詳しい説明と看護について教えてください。
ひとこと回答
うっ血性心不全とは心臓のポンプ機能が低下し、心拍出量の低下が起こり、肺や体静脈系のうっ血による症状が主体となる病態です。
詳しく説明すると
お仕事お疲れさまです。心不全については、うっ血性心不全、急性心不全、慢性心不全、右心不全、左心不全など、色々な呼び方があり混乱するかもしれませんね。これは心不全の進行速度、症状、身体所見による分類から呼び方が変わっているのです。
うっ血性心不全とは、うっ血による症状が主体となった状態であり、わかりやすくそのように呼ばれています。また、低拍出心不全と呼ぶこともあります。
うっ血による症状が主体の心不全では、肺うっ血による左心不全症状、体静脈うっ血による右心不全症状が顕著に出現します。このうっ血という症状は、心臓のポンプ機能が低下し、心拍出量が低下することにより起こるものです。そのため、うっ血症状とプラスして低心拍出症状も出現します。
具体的な症状としては一般的に示されている心不全の症状と大きく変わることはないため、心不全に対する看護を理解することで適切な看護を実践できると思います。
では、具体的な看護を詳しく見ていきましょう。
心不全の症状
・肺うっ血による右心不全症状
呼吸困難、息切れ、頻呼吸、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、呼気性喘鳴、ピンク状泡沫状痰など
・心拍出量低下による低心拍出症状
易疲労感、意識障害、冷汗、不穏、チアノーゼ、低血圧、乏尿など
・体静脈うっ血による右心不全症状
頚静脈怒張、浮腫、体重増加、食欲低下、腹部膨満感(腹水)、心窩部不快感、肝うっ血(肝腫大、肝胆道系酵素上昇)など
うっ血性心不全はうっ血による症状が主体となるため、肺うっ血による左心不全症状、体静脈うっ血による右心不全症状に注意しながら観察していくことが大切です。
必要な観察項目
(1)バイタルサイン
(2)連続モニタリング
心電図モニタ、大動脈圧、肺動脈圧、右心房圧、心拍出量
パルスオキシメーター表示酸素飽和度など
(3)12誘導心電図
不整脈、呼吸状態、ST-Tの変化など、
(4)呼吸
呼吸数、ラ音の有無、呼吸様式、呼吸困難、喘鳴、動脈血酸素飽和度など
(5)水分出納バランス
尿量、輸液量、飲水量など
(6)体重増加の有無
(7)意識レベル
(8)胸痛の有無、程度
(9)冷汗、皮膚湿潤、冷感の有無
(10)浮腫、肝腫の有無
(11)腹部膨満感、食欲不振、悪心・嘔吐の有無
(12)検査所見
動脈血ガス分析、電解質、肝機能、腎機能、胸部X線写真など
肺うっ血による症状が進行してくると、安静時にも呼吸困難がみられ、夜間、仰臥位での睡眠が困難になってきます。そのため、起座位やファウラー位などの安楽な体位をとる援助が必要です。
入院中は安静を保持する必要があるため、環境を整えること、排泄、清潔、食事などの生活上の援助も行います。
体静脈うっ血による浮腫もよく見られる症状です。浮腫をきたした皮膚は薄くなっており、わずかな力を与えるだけで傷つきやすくなっています。皮膚の乾燥、血流障害をきたしやすいため、なるべく刺激を与えないように心がけることが大切です。皮膚の乾燥を防いだり、循環を促進するよう足浴を行ったりして清潔を保つよう心がけましょう。
以上をふまえた上で、緊急時に備えて救急カートの準備をしておくことも大切です。
心不全は血行動態が急激に悪化し、心停止や心原性ショックをきたす危険性があります。
急変する可能性もあることを頭にいれておきましょう。
おわりに
うっ血性心不全について理解していただけたでしょうか。名称がかわることで難しく考えてしまいがちですが、心不全の基本の病態を理解した上で患者さんを観察することによって、必要な看護が自ずと見えてくると思います。心不全の患者さんはたくさん入院されてくると思いますので、経験を積んで日々の仕事に生かしていってくださいね。応援しています。