イレウス(腸閉塞)の種類とそれに対する看護

質問したきっかけ

眼科に勤めています看護師です。先日、90歳の男性が白内障の手術をしに入院してきました。既往歴に「鼡径ヘルニア」と記載されており、下腹部に膨隆(ぼうりゅう)している部分がありました。看護をするため患者さんに質問すると「いつものことだから大丈夫だよ。力が入ったりすると出てくるのだけど、こうやって押して行ったら戻るよ。」と言って、患者さんが下腹部を押すと戻っていきました。看護をする側として主治医の医師に報告しましたが、いままで問題が無かったのであればそのまま様子観察で良いとの指示がありました。

白内障の手術が無事に終わり、夜勤帯での出来事でした。その患者さんが「おなかが痛い。押しても戻らない。看護師さん、助けてほしい。」とナースコールがあり、訪室すると下腹部の膨隆は今まで見たことが無いくらいに大きくなっていて、下腹部痛と嘔吐が頻回でした。すぐに当直医師に報告し「絞扼性イレウスの可能性が高いから緊急レントゲンの後、必要であれば手術をする。」と言われました。その後、絞扼性イレウスの診断が付き、緊急手術になりました。

質問したいこと

イレウス(腸閉塞)には種類があると思いますが、今回のようなイレウスは何と言いますか?看護師として何に注意し観察、看護すればいいのでしょうか?
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ひとこと回答

イレウス(腸閉塞)は2種類に分類され、機械的イレウスと機能的イレウスに分かれます。注意点は、腹部膨満感や悪心・嘔吐と下血で、絞扼性(複雑性)イレウスには細心の注意が必要です。

詳しく説明すると

眼科にお勤めの看護師さん、はじめまして。消化器外科に勤める看護師です。イレウスといっても複数あり、今回のような事例では、機械的イレウスの中の絞扼性(複雑性)イレウスと呼ばれるものです。このイレウスは、機械的イレウスの中でも重症で血行障害を伴い、最悪の場合は腸管の壊死がはじまる状態でした。このことからすぐにその血行障害を解除することが大切だったので、緊急手術で原因を解除することになったのだと思います。以下、イレウスについて説明させていただきます。

イレウスは大きく分けて2種類に分かれます。一つは、物理的に腸の一部が閉塞を来たしたものを機械的イレウス。もう一つは、閉塞する原因が不明瞭で腸管の運動障害により腸の内容物が停滞したものを機能的イレウスと言います。また機械的イレウスには2種類あって、閉塞性(単純性)イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分かれており、この違いは血行障害の有無で決まります。

閉塞性イレウスは、腸の内腔を閉塞するような腫瘍であったり先天性の腸管狭窄があることで発症します。絞扼性イレウスは、今回のようなヘルニアであったり腸重責のような大腸の中に小腸が迷入したり、腸ねん転のように腸がねじれてしまうことや、十二指腸閉塞症のように上腸管膜動脈によって腸を抑えつけられるような血行障害が出現する事で発症します。

機能的イレウスも同様に2種類あって、腸管の蠕動運動の低下による麻痺性イレウスと腸管の蠕動運動の亢進により痙攣をおこす痙攣性イレウスがあります。麻痺性イレウスの原因は、急性腹膜炎や薬によるもの、腸間膜血管の血栓や塞栓、または胆石発作でもしばしばみられます。痙攣性イレウスは腹部打撲といった外傷性であったり、鉛中毒といった重金属による中毒で起こるとされています。どちらかでいうと機械的イレウスの方が発症が多く、術後の癒着によるイレウスのことを術後癒着性イレウスが多いとされています。

症状としては、閉塞部より口側で食物や水分が停滞するので、腹部膨満感や悪心・嘔吐が起きます。その後間欠的な腹痛(機械的イレウスの場合、急激な腹痛)も自覚するようになります。絞扼性イレウスの場合血行障害あるので下血等も特徴的な症状です。

診断は、レントゲンで容易につき、ニボー像が出たらイレウスを疑う所見になります。基本的には、絶飲食で点滴加療を行うことで症状は改善しますが、症状の改善が見られない場合は、イレウスチューブを(経口または経肛門的に)挿入し腸管の減圧をすることで改善を試みます。しかし、絞扼性イレウスの場合は血行障害があるため、腸の壊死の可能性もあるため緊急手術を実施しイレウス解除を行う必要があります。体内で腸管が壊死した場合、腹膜炎や敗血症といった重篤な状態になる可能性があるからです。

おわりに

眼科病棟に勤務されている看護師さんなら、なかなか遭遇することが無いことでびっくりしたでしょうね。眼科の手術では局所麻酔による手術が多く、全身麻酔下で手術を行う事が少ないので、術後イレウスが発症することは少ないと思いますが、看護師として覚えておいて損ではないので、頭の片隅に置いておくといい看護知識になるかと思います。

また今後、高齢の患者さんが増えることが予想されます。高齢になると筋肉の減少・衰退の為、鼡径ヘルニアの既往歴がある患者さんがいますので、これからも注目して看護してくださいね。
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