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看護技術Q&A

吐血を起こす病気とその対処法を教えてください。

質問したキッカケ

私は一般内科の病棟看護師です。先週、食道静脈瘤で入院した患者さんが、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を受けたあと、突然、吐血して倒れてしまいした。結局ICUに運ばれましたが、私は何もできなくてオロオロ…。

瞬時に行動できない自分にショックを受けていた時、今度は胃がん術前の患者さんが吐血しました。焦って、トイレに向かうと患者さんはケロッとしていました。同じ吐血なのにどうして違うのでしょうか?先輩看護師は、「吐血した時の血液の色とかでだいたいわかるけどね」と言っていました。教えてください。

質問したいこと

吐血を起こす病気にはどんなものがありますか?またどんな吐血が危険ですか?吐血の血液の色の違いなども教えてください。

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ひとこと回答

吐血した場合は上部消化管と呼ばれるところの出血が疑われます。赤くて、大量の吐血は危険です。


詳しく説明すると

内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)後の吐血は大変でしたね。大量に吐いてしまったのでしょうか?吐血はいろいろな病気でおこります。少しずつ、お話していきましょう。

吐血をした患者さんをみたときは、「上部消化管からの出血」を疑います。さて、「上部消化管」とはどこでしょうか?食べ物は、口から入ると、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸、肛門まで通り、便として排出されます。このうち、食道、胃、十二指腸までが上部消化管です。それ以降は、下部消化管と呼ばれます。

この食べものの流れの中で、注目すべきは、十二指腸と空腸の境目が左上腹部の頭側に固定されているということです。そのため、空腸以下から出血した場合、重力に逆らって消化管を血液が逆流できないので、下血はする可能性はありますが、吐血は起こしません。つまり、吐血の原因となる疾患は、食道、胃、十二指腸までの疾患ということです。具体的な病気については後に記載します。

次に、どんな吐血が危険なのかについて記載しましょう。吐血を起こす病気はいろいろあって、ひとくちに吐血といっても様々なものがあります。まず、先輩看護師が言っていた吐血をしたときの血液の色の違いについて説明しましょう。吐血の血液の色で危ないものは、真っ赤な鮮血を吐いた時です。逆に黒い血の場合は比較的大丈夫なことが多いです。では、どうして色の違いが出るのでしょうか?

血液は、ご承知の通り真っ赤なものです。でも、採血してしばらく置いておくと血液が黒くなってきているのを見たことはありませんか?実は、血液は空気に触れると黒くなります。なぜなのでしょうか?それは、赤血球のヘモグロビンに含まれる鉄が空気に触れて酸化鉄になるからです。

酸化鉄は、錆みたいなものなので、その色は黒です。その吐物をコーヒー残渣様の吐物と言われることもあります。すなわち、消化管から出血したあと、空気に触れる時間が長いと酸化鉄になり血液が黒くなるということですね。

じわじわと長く少量ずつ出血する場合は、出血してから時間がたっていることが多いので黒い血液を吐きます。それに比べ、出血してからすぐに吐血する場合(短時間で多量の出血をする場合)には、真っ赤な血、鮮血を吐血するということです。どちらがより危ないかはお分かりですね。

その他、血液が黒くなる原因には、胃液の胃酸(塩酸)が、ヘモグロビンを塩酸ヘマチンに変化させることも挙げられます。塩酸ヘマチンになると、血液は黒くなります。胃の中に血液が溜まると変化をして黒くなるということです。食道が原因であったり、変化が起こる時間もない短い時間での出血では黒くはなりにくいということです。まとめるとこんな感じです。

吐血の色の違いと疑われる出血の特徴


■鮮血の場合(特に注意が必要!)
  • 食道が原因の疾患
  • 食道、胃、十二指腸の比較的短い時間での吐血

■黒色(コーヒー残渣様)の場合
  • 食道、胃、十二指腸の出血から時間がたった吐血

あと、出血の色ではないですが、吐物の中に血液の塊(凝固塊)があると大量出血が疑われますので、注意が必要です。

では、吐血する病気にはどのようなものがあるのでしょうか?H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターなど潰瘍の良い薬が開発され、歴史とともにすこし吐血する病気の種類が変わってきていますので、ここでは、ある病院から2005年に発表された、上部消化管出血を起こした517例の原因疾患を見てみましょう。

【上部消化管出血(517例)の原因疾患】
第1位・・・・胃潰瘍(32.4%)
第2位・・・・十二指腸潰瘍(11.5%)
第3位・・・・食道静脈瘤(9.1%)
第4位・・・・逆流性食道炎(5.1%)
第5位・・・・胃がん(3.1%)
その他・・・急性胃粘膜病変(2.2%)、マロリーワイズ症候群(2.6%)、吻合部潰瘍(1.0%)
(参照元:長谷川ら/日本腹部救急学会雑誌26(4):491~496,2006

良い潰瘍の薬が開発されて潰瘍が原因の出血は減少してきてはいますが、いまだに、第1位と第2位は消化管潰瘍です。食道静脈瘤や逆流性食道炎といった食道の病気も多いことは重要ですね。それぞれの病気が、どのような色の血液を吐血することが多いのかを記載します。

吐血の性状からの鑑別


■鮮血の場合
  • 食道:食道静脈瘤、食道癌、食道炎、食道潰瘍、Mallory-Weiss症候群など
  • 胃・十二指腸:潰瘍などで短時間の大量出血

■黒色(コーヒー残渣様)の場合
  • 胃・十二指腸:胃・十二指腸潰瘍、胃癌、急性胃粘膜病変など


吐血の原因を調べるには、上部消化管内視鏡が必須です。全身状態が許せば、吐血をした場合は必ず上部消化管内視鏡を行います。その手配をすることも重要ですね。その他、吐血をする前の患者さんの状態から吐血を起こした病気を推測することもできます。

誘引によるものからの鑑別


■解熱鎮痛剤、非ステロイド系消炎鎮痛剤、副腎皮質ホルモンなど
急性胃粘膜病変

■熱傷、外傷、手術のストレス
急性胃粘膜病変あるいは急性胃潰瘍

■アルコール過飲後の嘔吐に続いて新鮮血を吐血
Mallory-Weiss症候群

どのような吐血が危険なのかは、鮮血を多量に出血した時であることがわかってもらえたかと思います。では、出血した量が客観的に分かる方法はあるのでしょうか?実は、患者さんの全身状態から、出血量をある程度予想することができます。患者さんのバイタル・状態と出血量・重症度との関連を記載します。

出血性ショックの重症度


●ごく軽症
【出血量】750mlまで
【脈拍(/min)】100以下
【収縮期血圧(mmHg)】 正常
【尿量(ml/h)】 やや減少(40~50)
【症状】無症状、不安感、皮膚冷感

●軽症
【出血量】750~1500ml
【脈拍(/min)】100~120
【収縮期血圧(mmHg)】80~90
【尿量(ml/h)】減少(30~40)
【症状】四肢冷感、冷汗、口渇、蒼白

●中等度
【出血量】1500~2500ml
【脈拍(/min)】120以上 
【収縮期血圧(mmHg)】 60~80
【尿量(ml/h)】乏尿(10~20)
【症状】不穏、意識混濁、呼吸頻拍、虚脱、チアノーゼ

●重症
【出血量】2500ml以上
【脈拍(/min)】触れない
【収縮期血圧(mmHg)】 60以下
【尿量(ml/h)】無尿
【症状】昏睡、虚脱、下顎呼吸
(参照元:吉岡ら/救急医学8:1304-1309,1984

吐血した患者さんに出会った場合、患者さんの症状のみならず、脈拍、血圧、尿量など全身の観察が非常に大切だとわかってもらえるでしょうか。吐血の患者さんにあったときは参考にしてください。

おわりに

吐血を起こす病気には様々なものがありますが、原因となる病気がなんであっても、初期治療を間違わずに適切な対応を行うことが重要です。危ない吐血をなるべく早く判断して適切な処置ができるように頑張ってください。

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