医療の質向上と患者・家族のウェルビーイング向上を推進する法人

本記事では、周産期メンタルヘルスプロフェッショナル研修を実施する財団、母乳バンクの取り組みを展開する財団、チャイルド・ライフ・スペシャリストの普及に努める協会、そして感染管理を担う看護師の連携やスキルアップを支援する法人をご紹介します。

これらの組織は、それぞれ異なる専門領域でありながら、医療の質向上を通じて患者と家族により良いケアを提供するという共通の理念を持っています。周産期のメンタルヘルス支援、母乳提供による新生児ケア、子どもの心理社会的サポート、感染管理の専門性向上など、臨床現場でより質の高い医療を実践したい看護師さんや医療従事者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

一般財団法人北村メンタルヘルス学術振興財団

一般財団法人北村メンタルヘルス学術振興財団は、メンタルヘルスを「文化・倫理・法・家族・人間関係」といった広い視点から捉えています。若手研究者や臨床家の学問の進展と技術の向上に資する、さまざまな活動を行う目的で設立されました。

メンタルヘルスに関する問題は、単に「病名を診断して治療する」だけでは解決しません。こころの問題を考えるには、その人が暮らしている環境や、文化・価値観・法律、そしてライフスタイルといった背景を無視することはできないからです。
近年では、厚生労働省の「すこやか親子21」にも述べられているように、「周産期メンタルヘルス」の重要性も注目されるようになってきました。

しかし、生物学的な分野に比べ、メンタルヘルス領域で活躍する若手の研究者や臨床家を支える体制は、まだ十分とはいえません。意欲ある若手を支援し、育てていく仕組み作りが、今まさに求められています。

周産期メンタルヘルスプロフェッショナル研修

周産期メンタルヘルスプロフェッショナル研修は、精神科医、産婦人科医、看護師、助産師、心理師など北村メンタルヘルス研究所スタッフが、「現場で役立つ」を最優先に作成した動画講義シリーズです。

各講座は約15分で視聴可能。スマートフォンを使った隙間時間での学習にも対応しており、忙しい医療現場で働く方も隙間時間で無理なく受講できます。研修修了者には修了証が授与されます。修了証は、自己研鑽の成果を形に残す証明として、キャリア形成にも役立てていただけることでしょう。

コースは「評価技法コース」「援助技法コース」「多職種連携技法コース」の3つを展開。
内容は基礎から応用まで学べる初級・中級・上級の3段階に分かれています。それぞれ8巻ずつの動画コンテンツで構成されており、体系的に学べるよう設計されています。
初級編は初めての人にもわかりやすく、基礎から学べる入門編としてお勧めです。
「評価技法コース」では、気分障害、不安など、周産期に起こりうる精神疾患や問題の評価方法を学習。「援助技法コース」では、面接の技術について事例を通して学びます。「多職種連携コース」では、医療機関内や行政、各種施設などとの多職種連携について、法律や生命倫理の視点をもちながら学んでいきます。

さらに中級・上級編へと進みながら、それぞれのコースについて、ご自身のペースで、より深く、高度な技術を身に着けていくことができる仕組みとなっています。

周産期は多くの女性にとって喜ばしい時期であると同時に、多様なストレスがかかりやすい時期でもあります。この重要な時期に関わる皆様が、動画研修を通じて周産期メンタルヘルスについて基礎から正しく学び、専門職として自信を持ってクライエントを支援できるよう学んでいただければ幸いです。

周産期メンタルヘルスプロフェッショナル研修は、周産期における疾患や心理メカニズムの理解、面接の技術、多職種連携の実際についての知識など、日常臨床ですぐに役立つ重要なスキルを豊富に盛り込んでいます。専門性の向上は職業人生を通じて一生涯にわたり活用可能で、キャリア発展にも寄与するでしょう。

一般財団法人日本財団母乳バンク

一般財団法人日本財団母乳バンク(以下、「日本財団母乳バンク」)は、母乳を必要とする早産・極低出生体重児に対してドナーミルクを安定供給することを目的として、2021年4月に設立された団体です。
年間約5,000人の早産・極低出生体重児が母親以外の母乳を必要としている現状において、ドナーから寄付された母乳を適切に低温殺菌処理・冷凍管理し、医療機関の要請に基づいて安全なドナーミルクを提供する事業を展開しています。

日本財団母乳バンクは、国内最大規模の母乳バンクとして、「母乳バンク運用基準」に則った衛生管理体制を構築し、小さく生まれた赤ちゃんの命を守ってその健やかな成育に貢献しています。
また、ドナーミルクの栄養価や生理活性物質量の測定・分析を進めることで、一人ひとりの赤ちゃんに適したオーダーメイドのドナーミルクの研究にも取り組んでおり、小さく生まれた赤ちゃんたちの健康と将来の可能性拡大に寄与している組織です。

必要とする赤ちゃんにドナーミルクを届ける「母乳バンク」

母乳バンクは、ご自身のお子さんに必要な量を超える母乳の出るドナーから母乳を寄付していただき、その提供された母乳に対し、適切に低温殺菌処理と細菌検査、冷凍保管を実施し、NICU(新生児集中治療室)からの要請に基づき、「ドナーミルク」として早産・1,500g未満の極低出生体重児へ届ける仕組みです。

1909年にウィーンで世界初の母乳バンクが設立されて以降、66ヶ国750ヶ所以上(2022年時点)で運営されており、日本国内では2つの母乳バンクが協力して事業を推進しています。

ドナーミルクの最大のメリットは、体の小さな赤ちゃんに過度な負担をかけることなく、理想的な栄養を供給できる点にあります。分娩後、さまざまな事情でお母さんの母乳分泌が困難な状況でも、すぐに赤ちゃんの経腸栄養をスタートさせることが可能です。
母乳には、早産・極低出生体重児の消化管の発達を助ける成分が豊富に含まれており、母乳を得られない状況の小さく生まれた赤ちゃんにとってドナーミルクは生命維持と長期的な健康増進において「おくすり」のような存在となっています。

具体的には、壊死性腸炎などの重い病気の罹患や重症化のリスク軽減が期待される点がメリットです。さらに、早期からの経腸栄養開始により静脈栄養の実施期間を短縮でき、赤ちゃんへの身体的負担の軽減も見込まれます。

日本財団母乳バンクにおいては、徹底した品質管理システムが確立されています。ドナーから送付された冷凍母乳を受け取った後は清潔を保ちながら点検を行い、62.5℃で30分間の低温殺菌処理、細菌検査を経て、安全が確認されたドナーミルクのみが医療機関に送られます。

処理段階で付与されるバッチ番号システムにより、万一の際の追跡調査が可能となっており、NICU内での取り扱いに関してもガイドラインが整備されています。

現在、北海道から鹿児島まで全国43都道府県(2025年8月1日時点)の医療機関でドナーミルクが活用されており、導入施設からは「ドナーミルクのない診療体制には戻れない」との声が多数寄せられ、その効果の高さが実証されています。

2022年4月以降、登録医療機関には初年度に限り無償・無制限でドナーミルクを供給する制度が開始されており、ドナーミルク使用施設登録の手続きを行えば利用開始となります。手続きの流れは、同意書への記入後、ドナーミルク使用施設登録フォームから送信をすると、日本財団母乳バンクから登録が完了のお知らせが届きます。それ以降はドナーミルク注文フォームを使ってオンラインで注文ができ、注文完了後、速やかにドナーミルクが配送される体制が構築されています。

このように、日本財団母乳バンクが提供する「ドナーミルク」は、早産・極低出生体重児だけではなく、人工乳を受け付けない赤ちゃんにも使用ができ、母乳分泌が困難なお母さん方の負担軽減にもつながることから、医師や看護師の方々にとって重要な医療支援ツールといえるでしょう。

一般社団法人日本チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会

一般社団法人日本チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会は、日本国内で活動するチャイルド・ライフ・スペシャリスト(Child Life Specialist:CLS)職能団体です。
医療現場で子どもとその家族を対象に、継続的かつ質の高い心理社会的支援を提供するため、CLSの専門知識と実践スキルの向上および維持を重要な目的としています。
また、米国を拠点とするAssociation of Child Life Professionals(ACLP)との連携体制を築きつつ、チャイルド・ライフ分野における教育プログラムの充実や研究活動に取り組んでいます。

同協会は、日本の社会や文化に即したチャイルド・ライフのあり方を探求し、医療チーム内でのCLSの役割を明確化することに貢献しています。
さらに、医療・福祉・教育・保育・心理学などの多様な分野の専門家と連携し、入院中の子どもとその家族がより良い環境で心理社会的支援を受けられるよう努めている団体です。

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)

CLSは、医療現場で治療を受ける子どもとその家族に対し、心理社会的支援を専門的に提供する職種です。
医療体験による心理的負担を軽減し、子どもが主体的に治療プロセスに参加できるよう援助することで、「子ども・家族中心医療」の推進を目指しています。

治療環境では子どもが消極的な立場に置かれやすい一方で、CLSは子ども一人ひとりが自立した存在として医療体験を乗り越えられるよう、医療遊びを通じた医療体験の理解や感情の外在化を促す支援、治療に向けた心理的準備のサポートを行います。

CLSは医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、心理専門職、教育関係者や保育専門職、さらには保護者を含む多様な専門職で構成される医療チームの重要な構成員です。
特に、子どもの心理社会的ニーズに特化した対応を行い、日常遊びや治療的遊び(セラピューティック・プレイ)を活用して子どもの不安や緊張を和らげ、今後受ける医療処置への理解を深め、積極的に臨めるよう心理的準備の支援を提供しています。

また、治療を受ける子どもだけでなく、その兄弟姉妹にも心理社会的援助を行い、家族が直面するさまざまな困難な状況や別れの体験に寄り添った支援を展開しています。

医療スタッフや看護師の方々にとって、CLSとの協働は数多くの利点をもたらします。
プリパレーション(子どもへの説明と心の準備支援)では、各種検査や医療処置、外科手術の実施前に、医師や看護師と密接に連携し、子どもの年齢や発達レベルに応じたわかりやすい説明を提供して、治療に向けた心の準備を整える援助を行います。

治療・検査実施中には、玩具や絵本を用いたディストラクション(注意転換技法)やリラクセーション手法を駆使し、子どもの緊張や不安、身体的な苦痛の緩和を図ります。これにより医療処置を円滑に進められ、子どもの協力も得やすいため、医療従事者の業務負担軽減にもつながります。

CLSの資格認定はAssociation of Child Life Professionals(ACLP)が管理・運営しており、認定を取得した者は「チャイルド・ライフ・スペシャリスト(Certified Child Life Specialist:CCLS)」の称号を用います。
米国小児科学会では「チャイルド・ライフは質の高い小児医療に不可欠な構成要素である」との見解を示しており、CLSによる介入が入院期間の短縮や鎮痛薬使用量の減少に効果的であることが実証されています。

日本においても1999年から、主に病院を中心にCLSの実践が広がっており、子どもと家族により質の高い医療や医療環境を提供する重要な専門職として位置づけられています。
看護師の方々にとっても、CLSは小児医療や看護の質向上と業務効率化を両立させる心強いパートナーとなるでしょう。

一般社団法人日本感染管理ネットワーク

▲画像提供:一般社団法人日本感染管理ネットワーク

一般社団法人日本感染管理ネットワーク(ICNJ)は、医療現場で感染対策の中核を担う看護師(以下ICN)たちが互いに連携し、感染管理の質を高めることを目的として2003年に設立しました。
看護師の活発な情報交流と相互支援を促し、保健医療福祉分野の感染管理を牽引しています。

同法人では、最新の知識と技術を共有する学術集会や各種セミナーの開催、実践に役立つ学会誌の発行などの事業を展開。社会の変化に伴い、医療機関にとどまらず活動の場が多様化していることを受け、さまざまな現場で活躍できる人材の育成に力を入れています。

同法人の学術集会やセミナー

感染管理の専門性を高めるには、最新の研究成果から実践に役立つ知見まで、幅広く学ぶことが欠かせません。
同法人が開催する学術集会やセミナーは、そうした学びを深める機会を提供しています。

たとえば、2025年には「Mission Action Passion~しなやかにつなぐ・つながるICNを目指して〜」というテーマのもと、「第13回日本感染管理ネットワーク学会学術集会」が福岡で開催されました。
学術集会では大会長の講演から特別講演、教育講演、シンポジウム、ランチョンセミナーまで多彩なプログラムを用意。演題は過去最高の登録数で、個々のスキルを高める実践的なものだけでなく、組織の体制づくりやICNのキャリアパスを考えるものなど、参加者のさまざまな関心に応える内容でした。
参加者が直面する課題解決の糸口を見つけるとともに、同じ想いを共有する仲間との意見交換を通して、次の一歩を踏み出すきっかけが掴める場と言えるでしょう。

▲画像提供:一般社団法人日本感染管理ネットワーク

一方、セミナーでは特定のテーマを深く掘り下げているのが特長です。
2023年度に行われた「ICNJ 20周年記念講演 Web教育セミナー」は、ICNの歴史と未来を展望する内容で構成されています。
第1部でICNJ発足までの歴史と感染管理認定看護師1期生の活動の軌跡、第2部はICNJの20年間の軌跡と今後のビジョンが共有され、専門職としての原点と未来像を確認する機会が設けられました。
そして、第3部では高齢者医療・介護施設や訪問看護ステーションなど急性期病院以外での活動に焦点が当てられています。
多様な現場の活動報告に触れることで、これからの地域包括ケアシステムでICNがどのように貢献できるかを考え、先の10年に向けて自分の役割を明確にする、未来志向のセッションとなりました。
その他、会員限定ではありますが、ICNの自己学習に役立つe-ラーニングの作成や、他施設の感染対策実践状況を共有する会員アンケート調査など、ICNの日常業務を支援するための様々な活動が行われています。
一度立ち止まって専門性を見つめ直し、明日への活力を得られる同法人の学術集会やセミナーに参加してみることで、自分のキャリアをより豊かなものにする足がかりとなるかもしれません。

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