清拭の看護のポイントとは?目的や手順について看護師向けに解説

全身清拭は、単なる「身体を拭くケア」ではなく、看護師が患者さんの身体・心理・生活を包括的に捉えることができる重要な看護技術です。

入浴が困難な患者さんにとって、清拭は清潔保持だけでなく、快適さの提供や身体状態の評価、さらには信頼関係構築の機会にもなります。清拭の目的・準備・実施のポイント・具体的手順を看護の根拠とともに解説します。日々の看護ケアの参考にしてみてください。

この記事を書いた人
齊藤 さくら
看護師・助産師
大学在学中に看護師、助産師資格を取得。 助産師として大学病院に勤務した後、現在は精神科単科の病院で看護師として働いています。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

清拭の目的

清拭の第一の目的は皮膚の清潔保持です。皮膚は外界からの病原体侵入を防ぐバリア機能を担っており、汗・皮脂・汚れを除去することで感染予防に繋がります。特に寝たきりや発汗の多い患者さんでは、皮膚環境の整備が重要となります。

また、温かいタオルで身体を拭くことは血行を促進し、末梢循環を改善します。これにより冷感の緩和や筋緊張の軽減が期待できます。さらに、清拭は爽快感やリラックス効果をもたらし、不安の軽減や睡眠の質向上にも寄与します。

加えて、清拭は看護師にとって全身観察の貴重な機会です。皮膚の色調、発赤、浮腫、乾燥、褥瘡の有無、傷の状態などを直接確認でき、異常の早期発見・早期対応につながります。

入浴と比較すると、清拭はエネルギー消耗が少ないため、循環動態が不安定な患者さんや術後、発熱時などでも安全に実施できるのが利点です。露出を最小限に抑えることでプライバシーや羞恥心への配慮を行いましょう。

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全身清拭の目的を教えてほしい

清拭の事前準備

安全で快適な清拭を行うためには、事前準備が重要です。

バイタルサインの確認

バイタルサインの確認を行い、実施可能かを判断します。発熱、血圧変動、呼吸状態、疼痛の有無などを評価し、無理のない範囲で実施するようにしましょう。

また、食事の前後を避けましょう。食前に清拭を行うと、​​エネルギー消耗や疲労から誤嚥や消化機能の低下を起こしやすくなります。​​食後は胃腸に血流が集まり消化活動が活発になります。このタイミングで清拭をしてしまうと、皮膚刺激により末梢血管が拡張し、血流が分散した結果、消化不良や気分不快を起こしやすくなってしまいます。

また、食後は悪心・嘔吐や誤嚥のリスクも高まるので注意します。食前30分以上、食後1時間以上で清拭を行うのが理想的です。

ルート類の整理

ルート類の整理を行います。点滴ライン、ドレーン、カテーテル、酸素チューブなどが絡まらないよう配置を整え、事故抜去を防ぎます。

環境整備

室温を調整し(22〜26度)、カーテンやスクリーンで覆うなどして患者さんのプライバシーに配慮します。

物品準備

物品準備も入念に行いましょう。お湯は50〜60℃程度で準備します。これは、準備の過程で温度が低下することを考慮し、患者さんの皮膚に当たる時に約40℃前後の適温になるよう調整するためです。

必要物品

基本的な物品は以下のとおりです。

  • 洗面器
  • ピッチャー
  • 温度計
  • お湯を入れたバケツ(50〜60度のお湯を準備)
  • 使用済みのお湯を入れるバケツ
  • ウォッシュクロス(2〜3枚以上)
  • タオル、バスタオル
  • ゴム手袋
  • 新聞紙
  • 寝衣
  • オムツ

ウォッシュクロスの代わりに、現場では、保温効果や拭き取りのしやすさから使い捨てのホットタオルを使用することも多いです。

また、陰部洗浄を同時に行う場合も多く、陰洗ボトル、防水シートも準備しておくとスムーズです。清拭を行う際、看護師はエプロンや手袋などのPPEを装着します。

清拭の必要物品のイラスト

清拭のポイント

清拭で最も重要なのは体温保持です。温かいタオルで拭いた後、気化熱により体温が奪われないよう露出部位を最小限にし、拭いた部分はすぐに乾拭きしてバスタオルで覆いましょう。

また、清拭は単なる清潔ケアではなく、皮膚観察の機会でもあります。体位変換を行いながら、発赤、圧迫痕、褥瘡、皮下出血、乾燥、浮腫などを確認しましょう。異常があればチーム内で共有し、看護計画に反映させるようにします。高齢者や栄養状態不良患者の皮膚は脆弱なため、強くこすらず優しく拭くことが基本です。

清拭の手順(お湯+ウォッシュクロスでの清拭)

患者さんに清拭の目的と流れを説明し、同意を得ます。その後、排泄を済ませてもらい、体位を仰臥位に整えます。ベッドの高さも、看護師の腰の位置まで上げておくと作業がしやすくなります。ウォッシュクロスはお湯に浸して絞り、端が皮膚に直接当たらないよう折り込んで使用しましょう。

清拭は顔→首→上肢→胸腹部→背部→臀部→下肢→陰部の順で、上から下へ、末梢から中枢へ拭くのが基本です。これは血流やリンパの流れを考慮した方法です。

また、可能な部分は患者さん自身に拭いてもらいます。

清拭の順番とウォッシュクロスの持ち方のイラスト

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全身清拭の手順について教えてください

お湯の準備

  1. 床にお湯を入れたバケツと使用済みのお湯を入れるバケツを置きます。下に新聞紙を敷いておくと、床が水で濡れるのを防げます。
  2. ピッチャーから洗面器にお湯を入れます。
  3. ゴム手袋を装着し、ウォッシュクロスを浸してよく絞ります。手に巻くように三つ折りにし端を畳みます。自分の前腕内側でウォッシュクロスの温度を確認しておきます。ウォッシュクロスは40〜42℃が目安で、触って「少し温かい」と感じる程度が理想的です。

顔の清拭

  1. 目を拭きます。拭く順番は目頭から目尻です。眼脂がある場合はタオルの面を変えて清潔に拭くようにします。
  2. 口周囲、額、頬、耳の順に拭きます。
  3. 終了後はすぐにタオルで優しく顔面を覆います。
  4. 顔面を拭いたお湯は比較的清潔なので、お湯を捨てず上半身の清拭に進むことが多いです。お湯が汚染されている場合は、このタイミングでもお湯を交換します。

上肢の清拭

  1. 患者さんの寝衣の両袖を脱がせます。
  2. 片腕ずつ露出させ、もう片方の腕はバスタオルで覆って保温しておきます。
  3. 洗面器にウォッシュクロスを浸して絞り、手に巻き付けます。
  4. 熱いウォッシュクロスで腕全体を包み蒸らします。このようにすることで、血行促進とリラックス効果が得られます。
  5. 関節を支えながら前腕→肘→上腕の順で拭きます。
  6. 手は汚れが溜まりやすいため、指間まで丁寧に拭きます。手指の間や爪周囲も拭き残しがないように注意します。
  7. 拭き終わったらバスタオルで軽く押さえ、水分を拭き取ります。
  8. 反対側も同様に行います。
  9. お湯が濁っていたり冷たくなったりしていれば、お湯を交換します。洗面器内のお湯を汚水バケツに捨てます。お湯が入ったバケツからピッチャーで新しいお湯を汲み、洗面器の中に入れます。先ほどと同様に、お湯の温度を確認します。

胸腹部の清拭

  1. 清拭部分のみを露出し、その他はバスタオルで覆います。
  2. 頸部を拭きます。首のしわを伸ばすように縦に拭いていきます。
  3. 胸部を縦に拭きます。乳房は外側から内側へ円を描くように拭き、乳房下も忘れず清潔にします。
  4. 腹部は腸の走行に沿って「の」の字を描くように拭きます。腸の蠕動運動が活発になり、マッサージ効果が期待できます。

背部・臀部の清拭

  1. 患者さんを側臥位にします。看護師が二名確保できると、実践しやすいです。看護師一名は反対側に回って患者さんの前側を支え、もう一名が患者さんの後ろ側から清拭していきます。
  2. ウォッシュクロスをお湯に浸して絞ります。
  3. 温かいウォッシュクロスを広げて、背部全体を覆うように当てます。患者さんの心地良さに繋がります。
  4. 背部を拭きます。下から上へと拭き、動作を大きくすることを意識します。圧迫を受けやすい肩甲部や仙骨部の皮膚状態を入念に観察するようにします。
  5. 臀部を拭きます。臀部の突き出ているところを中心に円を描くように拭きます。
  6. 上半身の寝衣を交換し、患者さんを仰臥位に戻します。
  7. お湯が濁っていたり冷たくなったりしていれば、お湯を交換します。洗面器内のお湯を汚水バケツに捨てます。お湯が入ったバケツからピッチャーで新しいお湯を汲み、洗面器の中に入れます。先ほどと同様に、お湯の温度を確認します。
背部・臀部の清拭のイラスト

下肢の清拭

  1. バスタオルで患者さんの下半身を覆います。
  2. 患者さんの膝を立てバスタオルの下でズボンを脱がせます。
  3. 片足ずつ露出させ、もう片方の足はバスタオルで覆って保温しておきます。
  4. 洗面器にウォッシュクロスを浸して絞り、手に巻き付けます。
  5. 熱いウォッシュクロスで足全体を包み蒸らします。
  6. 足首→ふくらはぎ→膝→大腿の順で拭きます。
  7. 足趾間は白癬(みずむし)予防の観点からも丁寧に洗います。
  8. 拭き終わったらバスタオルで軽く押さえ、水分を拭き取ります。
  9. 反対側も同様に行います。
  10. 陰部の清拭前は、必ずお湯を交換します。洗面器内のお湯を汚水バケツに捨てます。お湯が入ったバケツからピッチャーで新しいお湯を汲み、洗面器の中に入れます。先ほどと同様に、お湯の温度を確認します。
下肢の清拭のイラスト

陰部の清拭

陰部に関しては陰部洗浄を行うことが多いため、本記事では陰部洗浄の手順を簡単に解説します。現場では、汚れの付着が少なかった場合にタオルやウェットティッシュで陰部清拭を行う場合があります。

必要物品(清拭の必要物品で挙げたもの以外)

  • お湯(38〜40℃)を入れた陰部洗浄ボトル
  • 防水シーツ
  • 陰部洗浄用のガーゼ
  • 石鹸
  • オムツ類

陰部洗浄の手順

  1. 患者さんの腰下に防水シーツを敷きます。
  2. 陰部にお湯がかかることを説明し、オムツを開きます。患者さんの鼠径部でお湯の温度を確認します。
  3. お湯を前方から後方に流し、陰部を濡らします。
    女性:大陰唇を軽く開き、しわの間に沿って流します。尿道口や膣口にお湯を強く当てないようにします
    男性:陰茎根本から亀頭方向へ流します。
  4. 石鹸で陰部を洗浄します。陰部はデリケートな部位のため、こすらず優しく洗うことがポイントです。
    女性:大陰唇→小陰唇→尿道口→膣口→肛門の順に洗います。小陰唇のしわの間の汚れを除去します。
    :陰茎→亀頭→陰嚢→肛門の順に洗います。包皮の裏に汚れが溜まりやすいため意識して洗います。
  5. 清潔なタオルで水分を十分に拭き取ります。
  6. 必要時保湿剤や皮膚保護剤を塗布し、オムツを装着します。

片付け

  1. 患者さんに労いの言葉をかけ、体調の変化を確認します。
  2. 寝衣や寝具を整えます。ベッドの高さを元の高さ(患者さんが端座位になった際に踵が床につく高さ)に調整し、ベッドの柵を上げます。ナースコールを手元に置いておきます。
  3. 使用物品を片付けます。
  4. 看護師も必ず手指衛生を行います。

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