看護師は人の死に直面し、積極的な関わりを持つ特殊な側面のある仕事です。人の死というものは、大きな出来事。しかし、看護師はそれを受け入れ、仕事をしなければなりません。
今回は、そんなステルベンにあった看護師のみなさんに、ご家族への言葉にまつわる実体験のお話をしていただきました。
ステルベンがあった時、一番難しいと感じるのはご家族への対応という看護師もいらっしゃるかと思います。
その患者さんの容態、入院期間や疾患・治療の進行度合い、背景、関係性などさまざまな要素によって、ご家族が患者さんの死に対して心の準備が少しでもできていたのか、まったくできていなかったのかなどの違いもありますし、それぞれ考え方や性格も違います。
悲しい誰かの死の場面にあって、仕事を行わければならない看護師。だからこそ気をつけていることや迷いや悩みなどがあるようです。
「緊急入院で急変し亡くなってしまった患者さんのご家族の場合は、言葉に注意が必要だと言われています。医療事故だと感違いされてしまわないように、意味のない謝罪の言葉は発してはいけないのです。
こうしたケースでは、ご家族とは会ったばかり。信頼関係がまだ築けていない状態なので、基本は事務的な話になってしまいますが、そんな中でも相手をいたわる言葉遣いや表情は大切だと考えています」
「患者さまの死に対して、家族が『自分が気づいてあげられなかった』、『自分が悪かったんだ』とご自身を責めないように配慮しながら状況の説明を行っています。基本はドクターが伝えてくれますが、ご家族から看護師へ詳しく聞かれるケースがあるので」
「私の同僚で、よほど患者さんに思い入れがあったのか、ステルベンの際、号泣している看護師がいました。ご家族は『こんなに思って下さってありがとう』とお礼を言っていましたが、正直、彼女が大泣きしたせいで、ご家族は泣くタイミングを逃したのではないか、と私は気になりました。
もちろん患者さんに寄り添い、相手を大事に思う気持ちは大切ですが、やはりご家族の方が一番おつらいと思いますので、そこは看護師は仕事として一歩引くべきだったのでは…と私は感じています」
「とくに毎日来ていらしたご家族の方には、ねぎらう言葉をかけるようにしています。自分の生活もありながら、毎日看病にいらっしゃるのは、心も身体も大変だと思うんですよね。
ある高齢のおばあさまを看取られた娘さんには、『Mさん(おばあさま)もあなたがずっと付き添ってくださって、とても嬉しかったでしょうね』と声をかけ、手で背中に触れました。すると娘さんはしばらく泣いていました。
偶然にも数年後に、病院の外でその娘さんとばったりお会いしたのですが、その時、娘さんから『あの時、看護師さんから声をかけてもらって、ものすごくホッとしたことを覚えています。ありがとうございました』と言っていただけました。やはり看病の日々は、不安で大変だったのでしょうね」
「ビデオカメラが世の中に出始めた頃のことです。ある患者さんのご家族が、患者さんの死の前後をビデオカメラで撮影され、とても驚いたことがありました。ドクターの説明やナースステーションの中まで『撮影させてください』とおしゃっり、当時はもう少しオープンな世の中でしたので、ナースステーションも撮影されていましたね。
今でも思うのですが、あれは記録や記念のようなものだったのでしょうか…。それとも何かあったら医療裁判になる可能性を考え、撮影されたのでしょうか…。今でもわかりません。
最近では、スマートフォンでお棺を撮影される方が増えたと思います。どんな思いでお棺に入ったご家族を撮影されているのかわからないので、そんなご家族にどう声をかければいいのか迷っています」
「ご家族が患者さんの死に対して、どういうスタンスでいるのかを見極めてから、声かけをするようにしています。例えば『どうして死んだんだよ!』と嘆かれているご家族には、『本当に残念でした』というニュアンスの言葉を使いますし、逆に『長生きだったよな』とか『楽になってよかったな』と言っているご家族には、『本当に頑張られましたね』などの言葉を使うなど、ご家族の気持ちに沿った言葉を選ぶようにしています」
「パニックになっているご家族の場合、こちらはより落ち着いた様子でしっかり対応しなければならいなと感じます。『このあとどうすればいいですか?』、『葬儀屋さんはどこに連絡すればよいのでしょう?』などの質問を受けることもあり、若かった頃は、そんなことまで聞かれるのかと対応が難しかった記憶があります。
葬儀や銀行の手続き、他にもさまざまな事務手続きに死亡診断書が必要になるので、その説明をご家族にさせて頂くのですが、その際に『そんな事務的なことばかり…』と言われてしまうこともあります。ですが、悲しみに余裕のなくなっているご家族が、その後に直面せざろう得ないことなので、お気持ちを配慮しつつもしっかり伝えていかなければならないと感じています」
「延命治療をご希望されたご家族が、その後、患者さんの様子を見て後悔されることがあり、その際かける言葉に戸惑うことがあります。患者さんの姿に『選択が間違っていたかも』と悩まれるのです。
そんな時、看護師としてできることは、患者さんのためというより、ご家族のために『ご本人は実はそれほど苦しんでいらっしゃらないと思いますよ』と声かけし、安心させることだと私は個人的に考えています。その後、患者さんが亡くなられた後も、ご家族が負担を感じないように、後悔のないように声をかけたいと思うからです。
患者さんも残していくご家族のことは心配されていると思います。看護師が患者さんのために最後にできることは、エンゼルケアだけでなく、ご家族の気持ちを少しでも支えることなのではないかと私は思っています」
ステルベンにあった看護師が、患者さんのご家族にかける言葉には、さまざまな意味があり、必要性があるのですね。
患者さんが亡くなったあと看護師にできることのひとつに、ご家族への言葉がある、というのは特に心に響きました。
看護師は患者さんと寄り添い向き合ってきますが、そのご家族にも寄り添い、言葉をかけることができる看護師という仕事は、難しいですが重要な役割なのではないかと思います。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載