
インスリン注射は臨床現場で実施する場面が多く、新人看護師の方でも習得しておきたい手技の1つです。正しい方法で実施しないと、患者さんの血糖コントロールがうまくいかない原因につながります。
この記事ではインスリン注射の基礎知識をはじめ、看護手順や実施するうえで注意すべき点を解説します。インスリン注射の手技に不安がある方は、ぜひ最後までお読みください。

インスリン注射を実施するには、注射の目的やインスリンの効果、種類などの知識が必要です。
この章では、インスリン注射をするにあたって理解しておくべき基礎知識を解説します。
インスリン注射は、糖尿病(1型・2型)の治療として実施されることが多いですが、術後の一時的な血糖コントロール不良時や重篤な感染症などでも適応となるケースがあります。
糖尿病はインスリンが正常に分泌されない、もしくはインスリンの感受性が低いことが原因で、血液中の糖が高くなってしまう病気です。インスリンには血糖値を下げる作用があるため、食事前や寝る前などに注射することで、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
インスリン注射は、経口血糖降下薬と比べて効果が分かりやすく、血糖をコントロールしやすいと言われています。
糖尿病患者に対する看護を詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてお読みください。
インスリン注射には複数の種類があり、作用発現時間、作用持続時間などが違います。
ここでは、インスリン注射で使用されることの多いインスリンをご紹介します。
| 分類 | インスリンの種類(一例) | 作用発現時間 | 最大作用時間 | 作用持続時間 |
| 超速効型 | ノボラピッド注、ヒューマログ注、アピドラ注 | 10~20分 | 30分~3時間 | 3~5時間 |
| 速効型 | ノボリンR注、ヒューマログR注 | 30分~1時間 | 1~3時間 | 5~8時間 |
| 中間型 | ノボリンN注、ヒューマリンN注 | 1~3時間 | 4~12時間 | 18~24時間 |
| 混合型 | ノボラピッド30ミックス注、ヒューマログミックス25注、ノボリン30R注 | 10分~1時間 | 30分~12時間 | 18~24時間 |
| 配合溶解 | ライゾデグ配合注 | 10~20分 | 1~3時間 | 42時間超 |
| 持続型溶解 | トレシーバ注、レベミル注、ランタス注、インスリン グラルギンBS注 | 1~2時間 | 明らかなピークはなし | 約24時間 |
分類が同じでも、作用時間や持続時間には差があるため、添付文書や取扱説明書を確認しておきましょう。
分類によって、インスリン注射を実施するタイミングは異なります。たとえば、超速効型や速効型のインスリン製剤であれば、食事のタイミングや摂取量などに合わせなければなりません。対して持続型や中間型のインスリン製剤は、食事のタイミングにかかわらず医師の指定した時間での投与となります。
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インスリン注射に適した部位はいくつかあり、場所によって製剤の吸収スピードに違いが見られます。
一般的には、皮下脂肪がある腹部や上腕などが選択されることが多いです。腹部が最も製剤の吸収が早く、次いで上腕→でん部→大腿の順番に遅くなります。
同じ場所に何度も注射すると皮膚が硬くなるおそれがあるため、注射部位は毎回少しずつ(2〜3センチほど)ずらすことがポイントです。

インスリンについての基礎知識が確認できたところで、次はインスリン注射をする際の手順を解説します。
なお本記事では、血糖測定後のインスリン注射の場面を記載しています。臨床現場では、血糖測定をして血糖値を確認してからインスリン注射を実施することが一般的です。
まずは、インスリン注射に必要な物品の確認・準備を済ませましょう。
インスリン注射に必要な物品は、以下のとおりです。
インスリン製剤や投与量を確認する際は、看護師2名で患者名や製剤、投与時間、量、投与方法をダブルチェックする必要があります。
上記の物品が準備できたら、患者さんのもとへ移動します。
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必要物品を持って患者さんのベッドサイドへ移動したら、インスリン注射の必要性とこれから実施する旨を伝えます。患者確認では、ネームバンド、氏名、生年月日をチェックしましょう。
食事の前にインスリン注射を実施する場合(特に「超速効型」や「速効型」を使用する場合)には、すでに食事が用意されているか確認することが大切です。早くインスリンを打ちすぎると、低血糖になるおそれがあります。また、食前にインスリン注射を実施する旨を患者さんにお伝えし、注射前に食事を始めてしまうことのないよう注意喚起をすることも重要です。

必要物品の準備と患者確認が済んだら、インスリン注射を実施します。
本記事では、注射器を使用するパターンと、ペン型インスリンを使用するパターンを解説します。
まずは、専用の注射器(ロードーズ)を使用するパターンの手順です。
注射器を用いたインスリン注射は、基本的に皮下注射と看護手順は同様です。
次は、ペン型インスリンを使用するパターンの手順です。ペン型インスリンは、製剤がすでにセットされており、注射の都度、専用の注射針を装着して打ちます。

ペン型インスリンの場合は、注入し切るのに少し時間がかかるため、10秒ほど注入ボタンを押し続けることがポイントです。
また、注射器はそのまま医療ゴミに破棄できますが、ペン型インスリン製剤の場合針のみ取り外す必要があります。リキャップすると針刺し事故につながるおそれがあるため、使用後の針は取り扱いに十分注意しましょう。
この章では、インスリン注射を実施する際に注意すべき点を解説します。
安全にインスリン注射を実施するために、十分理解しておきましょう。
インスリンの単位数や量は、医師の指示のもと看護師2名で必ずダブルチェックをしましょう。
臨床現場では、血糖値に応じて必要なインスリン量が変わることもあるため、インスリン投与の直前に血糖値を測定して、測定値とともに指示を確認することが大切です。
インスリン注射後に最も注意が必要なのが、低血糖症状の出現です。たとえ医師の指示のもと実施したとしても、患者さんや投与のタイミングによっては低血糖を引き起こす可能性があります。
低血糖は血糖値が70mg/dL以下となった状態を指し、出現する症状は人によって異なります。患者さんのなかには、低血糖を引き起こしていても症状を自覚しないケースも珍しくありません。
低血糖症状は以下のとおりです。
インスリン注射実施後の食事が遅れたり、食事摂取量が少なかったりすると起こりやすいため注意が必要です。低血糖症状が見られたら直ちに血糖値を測定し医師へ報告しましょう。ブドウ糖の摂取、もしくは点滴で糖液の投与が検討されます。

インスリン注射で使用した針や注射器は、原則1回きりの使用となります。使いまわしはせず、毎回正しい方法で破棄しましょう。
注射器の場合はそのまま針専用のゴミ箱へ破棄しますが、ペン型の場合は注射針のみを外して破棄します。針を直接手で外すのではなく、針ケースを真っすぐ被せてから外すか、針専用のゴミ箱を使って取り外しましょう。
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