
周術期は手術の侵襲により、尿量に変化が見られます。特に利尿期においては、体内の水分バランスが崩れやすくなるため、観察や対応には注意が必要です。利尿期を理解することは、術後の合併症やリスクを回避することにもつながります。
この記事では、利尿期の起こる仕組みや、看護における注意点、観察項目などを解説します。

術後に生じる利尿期の経過は、患者さんの健康状態を把握する評価項目の1つです。また、術後の合併症を回避するためにも欠かせない判断材料にもなります。
周術期に関わる看護師は、利尿期について理解することで、患者さんに適切なケアを実施できるでしょう。
この章では、術後に起こる利尿期について解説します。
利尿期とは、術後に尿量が増加する期間のことです。術直後は一時的に尿量が減少しますが、その後尿量が増加する利尿期が訪れます。
利尿期は術後1〜3日の間に起こるとされており、落ち着くタイミングは術後の状態などによって個人差があります。なかには、利尿期がはっきりと見られないケースも。術後になかなか尿量が落ち着かない場合には、正しく輸液管理ができていなかったり、急性腎不全などの合併症を引き起こしたりしている可能性も考えられます。
利尿期のタイミングや尿量に異常が見られた場合は、医師へ報告し指示を仰ぎましょう。

術後に利尿期が起こる理由の1つとして、手術による侵襲が考えられます。
人間の身体は侵襲を受けると、生命活動維持のために防御反応を起こします。防御反応により一時的に乏尿になったあと、体内の余分な水分を排出する反応が起こるのです。
利尿期は手術に対する正常な生体反応であり、患者さんの回復過程において重要な時期でもあります。
利尿期を観察する理由は、術後の患者さんが順調に回復しているか、術後合併症が生じていないかなどを確認するためです。利尿期における状態の異常に気付けなければ、術後の患者さんを適切に看護することはできません。
たとえば、利尿期が遅れている場合、輸液の量を調整しながら水分バランスを考慮した管理が必要となります。体内の水分が多くなることで、肺うっ血や浮腫の原因となるからです。
一方で利尿期が継続する場合には、脱水に注意が必要です。電解質バランスが崩れやすくなるため、高カリウム血症や低カリウム血症を発症していないか採血データや自覚症状(筋肉のけいれんやひきつけなど)の有無を確認しましょう。
利尿期は、体内の水分バランスを評価し、合併症を予防するため重要な観察項目です。患者さんが安全に回復できるよう、利尿期の観察を徹底する必要があります。
術後に血液中の水分量が変化するのには、体内の「サードスペース」と呼ばれる場所が関係しています。
人間の水分は、通常「ファーストスペース」「セカンドスペース」の2種類に分けられ保たれています。ファーストスペースは細胞の中を満たす水分であり、セカンドスペースは血液中の水分のことです。このどちらにも当てはまらない水分が貯留する場所を「サードスペース」と呼びます。
手術により体が侵襲を受けると、ファーストスペースやセカンドスペースの水分は、一時的にサードスペースへ移動するとされています。術後に尿量が減少するのは、血液中の水分がサードスペースに移動し、腎臓に流れる血液が減るためです。
侵襲による炎症が落ち着くと、サードスペースに溜まっていた水分は徐々に血液内に戻ります。この現象は「リフィリング」と呼ばれており、利尿期に尿量が増加する要因の1つです。
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術後の利尿期では、適切な輸液の管理や水分バランスの把握が必要です。そのためには、さまざまな観察項目から患者さんの状態をアセスメントしなければいけません。
利尿期の観察項目や注意すべきポイントを押さえ、適切にケアを行いましょう。
この章では、術後から利尿期までの観察項目や注意点を解説します。
利尿期のタイミングと尿量のチェックは、水分バランスの評価と術後合併症の予防に欠かせません。
利尿期の正しいタイミングと経過、尿量はおおむね以下のとおりです。
上記のタイミングと尿量は、あくまで目安です。患者さんや術後の状態によって経過は異なります。
目安として術後72時間以上経っても利尿期が来ない場合や、7日以上経っても多尿の状態が続いている場合は、術後の急性腎不全や尿崩症などが生じている可能性があります。こまめに尿量をチェックし、バイタルサインや採血データなどに異常がないか、ほかに見られる症状がないかを確認しましょう。
利尿期には、バイタルサイン(特に血圧)の変動にも注意が必要です。
術中や術直後は一時的に血圧の低下が見られますが、血液内に水分が戻るのに伴い血圧が上昇します。定期的に血圧を測定することで、ある程度利尿期を予測することも可能です。
利尿期に尿量が少ないと、循環血液量が増加し血圧が上昇します。心不全や肺水腫を生じる恐れがあるため、利尿剤を使用するなどの処置が必要です。
血圧以外にも、呼吸数や脈拍数などを測定し、多方面からアセスメントすることで、合併症の予防と異常の早期対応につながるでしょう。

輸液の量や飲水量などの体内に取り入れた水分量(IN)に対し、どれくらいの尿量(OUT)が出ているのかを確認することも大切です。これは「水分出納バランス」と呼ばれ、術後の状態を確認したり合併症を予防したりするのに役立ちます。
水分出納バランスが正常でない場合、脱水や血圧低下(マイナスバランスの場合)、肺水腫や心不全(プラスバランスの場合)などのリスクが高まります。INとOUTの水分バランスをモニタリングし、体内の水分量が適切か判断しましょう。
INとOUTのバランスが崩れている場合は、輸液量の調節や利尿剤の投与などの処置が必要です。明らかな異常が見られた場合は、すみやかに医師へ報告し、適切な処置を行いましょう。

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利尿期には、電解質バランスなど採血データから得られる情報も重要です。
利尿期に尿量が増加すると、血液中の水分が減少し、電解質濃度が上昇する場合があります。電解質濃度が上昇すると、高ナトリウム血症や低カリウム血症を発症し、けいれん発作や筋肉の引きつり、呼吸不全などを生じるかもしれません。
尿量の変化が著しい利尿期には、INOUTバランスの評価と調整を行い、電解質を適切なバランスに保ちましょう。
また、利尿期に尿量と血液データを観察することは、術後の合併症の1つである、急性腎不全の有無を見分けるのにも役立ちます。電解質と尿量の関係を理解し、術後の合併症予防に努めましょう。

腎不全や心不全などの既往歴がある患者さんに対しては、より慎重に利尿期を観察する必要があります。利尿期には水分量が大きく変化するため、腎臓や心臓への負担が大きくなるからです。
利尿期は水分量の変化に伴い、血圧や電解質などが常に変化します。既往歴に不整脈やうっ血性心不全がある方は、症状が悪化するかもしれません。患者さんの既往歴を頭に入れ、利尿期の体調変化へスムーズに対処しましょう。
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