現在、高齢者の交通事故や認知症などの病気による自動車事故を防ぐため、運転免許センターに医療の専門知識を持つ看護師を配置する動きが広がってきています。
2015年には、熊本県で初めて運転免許センターに看護師が配置されました。看護師は運転免許センターに配置され、認知症やてんかんなどを患うドライバーの健康に関する悩み相談に乗り、認知症と診断されたドライバーに対しては医療機関の受診と免許の返納を促します。
高齢化社会とともに高齢ドライバーの人口が増え、全国では高齢者による高速道路の逆走事故や接触事故などが増加傾向にあります。ニュースなどでも、高齢者による事故がたびたび報道されており、高速道路の逆走やブレーキの踏み間違いなどが深刻化しています。
すでに警察でも高齢者に対して免許の返納を求める動きが出てきていますが、自家用車は重要な交通の足として、また移動の負担を軽減する方法として用いられており、代替となる交通手段の確保も十分ではありません。
「自分はまだまだ運転できる」「安全運転すればいいのだから大丈夫」と考えている高齢者も少なくないなかで、知らない間に認知症や認知能力の低下を引き起こし、事故を招く方が後をたちません。
そこで、高齢者への認知能力に関する情報提供や医療機関への受診を啓発する役割をもつ看護師が注目されているのです。
看護師は、認知機能の低下や認知症、てんかんなどを患うドライバーに対し、各種検査や意識的なチェックを啓蒙します。「私は病気じゃない」とうったえるドライバーに対して、医療の専門知識をもってアドバイスや説得にあたるほか、認知症の早期発見や事故の予防などについても期待されています。
看護師は医療機関だけにとどまらず、医療の知識を必要とする現場で広く活動が期待されています。高齢者が多く集まる運転免許センターにも、認知症などの症状に詳しい看護師が常駐することで、高齢者の自主的な検査やチェックを促す目的が期待されています。
熊本県に続いて宮崎県でも県内の3ヶ所のセンターに計4人の看護師が配置されることが決定し、今後はさらに日本全国の運転免許センターに看護師の需要が広がっていくと予想されています。
すでに熊本県や宮崎県では、看護師の配置によって高齢者の免許返納率がアップし、看護師が病気の判断に困っているドライバーへの相談にのるなどして、一定の成果をあげています。
「事故を起こしてからでは遅い」というのは社会全体に共通する認識ですが、事故を起こすまでに、それを防ぐ手立てがなかったというのもまた事実です。
「自分はもしかして、認知機能に問題があるのでは・・・」と思いながらも、医師や看護師に相談する機会を持てないまま、車を運転し続けている人が多いのですね。そうした方へのアドバイスや、病院を受診するきっかけを作るのが看護師の役割でもあるのです。
認知症を患っている方の場合、「自分は認知症ではない」となかなか症状を認めないことで事故を起こしてしまうケースが多くみられます。
しかし、看護師のように一定の医療知識を持つ人からアドバイスを受けることで、「もしかして認知症かも」「とりあえず調べてほしい」と前向きな気持ちになり、病院を受診する機会が持てるようになります。
今まで認知症やてんかんに関する症状を誰にも相談できず、「自分は健康だ」と言い聞かせてきた方は、看護師の登場によって相談相手ができ、病院を受診する良い機会となっています。
また、今回の試みは「医療現場以外で活動したい」と考える看護師にとっても魅力的。広く社会に関わりたい、看護ケアをもって社会に貢献したいという看護師にとって、将来の選択肢や可能性をさらに広げるチャンスとも考えられます。
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