在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は、株式会社ミレニア ホームケア練馬に勤務する小森 智巳(こもり さとみ)さんを取材。訪問看護のやりがいや?変さ、思いについて伺いました。
プロフィール
小森 智巳(こもり さとみ)さん
株式会社ミレニア ホームケア練馬(東京都)勤務。看護学校卒業後、デイサービスで1年、病院の一般内科病棟で2年勤務し、2020年1月から現職。同年7月からは管理職も兼務している。プライベートは姉と過ごすことが多く、料理やカラオケ、旅行を楽しんでいる。最近はYouTubeの動画を参考に宅トレに挑戦中なのだそう。
ーー現在の職務内容について教えてください。
現在は管理者として主にステーションのスタッフ管理をしています。スタッフは非常勤も含め10名弱で、現在は20~50代のメンバーが活躍中です。訪問看護スタッフは、練馬区や豊島区の利用者さま宅を中心に1日平均5件程度を訪問しています。利用者さまの多くは高齢の方ですが、0~100歳まで幅広い年齢の方がおり、入浴介助や吸引、栄養剤の注入、リハビリなどケアの内容は症状に応じてさまざまです。管理者になってからも訪問看護は数件担当しています。
ーー訪問看護師になるまでの経歴を教えて下さい。
看護学校卒業後は、アルバイトをしていたデイサービスに就職し、送迎や入浴介助、調理、レクリエーション、服薬管理など幅広いケアを担当しました。利用者さまと過ごす時間が好きだったので、楽しく働けていたと思います。
デイサービスに約1年勤めたあとは、一度医療や福祉の業界から離れ飲食店で働きました。看護師とは別の分野ですが、どうしても挑戦してみたい仕事が飲食業でした。ただ勤務先は長時間の肉体労働が多く、身体を壊してしまい1年ほどで退職しました。そこで改めて自分自身と向き合い、やはり看護師の資格を活かして働くべきだと感じ、それから地域密着型病院の急性期一般内科病棟に転職し、2年勤めました。
▲ホームケア練馬のスタッフの皆さんと一緒に。普段から相談しやすい雰囲気で業務をしています。
ーー病棟で勤務されたあと、なぜ訪問看護師になろうと思われたのですか?
患者さまが治療を経て退院されたあとの元気な姿が見たかったからです。病棟では、看護師としての知識や技術がついて良かった反面、私は患者さまと関わることが好きだったので、退院する方に「元気な時にまた会おうね」と言えないことが常に気がかりでした。患者さまが病院にいらっしゃるときは、何か治療が必要な場合がほとんどです。本来であれば病院に来ることなく、元気に過ごしてもらえることが一番なので、看護師がまた会いたいとは言えません。そこで、患者さまの退院後の生活を支えるべく、地域に根差して働こうと思いました。
転職では訪問看護以外に施設なども視野に入れていました。ただ訪問看護はできるようになれば強みになり、キャリアの幅を広げられると考えたので、チャレンジの気持ちで訪問看護師になることを決めました。
ーー訪問看護師になるにあたり不安はありましたか?
実は訪問看護師になるまでは、ありませんでした。勤めていた病院が地域密着型で、訪問診療や訪問看護に携わったことが数回あったからです。転職間際まで現場で働いていたのでブランクも感じていませんでした。ただ入職したあと、利用者さま宅には医療機器が揃っておらず、医師もそばにいないなかで、容体の急変に対応したり異常を早期発見したりできるか不安になりました。さまざまなケースを想定したイメージトレーニングをして、不安を解消するようにしていましたね。現在でも予期しない事態への不安はゼロではありませんが、イメージトレーニングをしたおかげで冷静に対応できるようになったと思います。
ーー訪問看護師の面白いところはどこですか?
0~100歳の方まで、さまざまな年齢層の利用者さまの人生の一部になれるところです。利用者さまにとって病院は非日常ですが、訪問看護では利用者さまの日常の一部として接しなくてはなりません。他の職種では、なかなか経験できないことだと思いますね。
先日、ターミナルの看護を担当していた利用者さまが亡くなられました。その方のお宅に伺ったところ、ご家族さまから「訪問看護師さんが毎日来てくれて本当に助かったし、いつも楽しみに待っていたんですよ」とおっしゃっていただいたんです。訪問看護の責任を感じるとともにやりがいを感じる経験でしたね。
また、利用者さまに「ではまた来週!」「元気でいてくださいね!」と声をかけたり、「小森さん来てくれたの!」と言われたりするやり取りに、温かみを感じます。人と関わることは大変ですが、成長できるし訪問看護師になってよかったと思える瞬間です。
ーー訪問看護師の大変なところはどこですか?
利用者さまやご家族さまの抱いている感情を受け止めて、ご本人たちが少しでも心地よく過ごせるように考える必要がある点ですね。利用者さまやご家族さまとじっくり関わることができるのは訪問看護の魅力ですが、時には不安やジレンマなどマイナスな感情をぶつけられることもあります。それでも利用者さまにとってプラスになる言葉を考えて、返さなければならないので、精神的に疲れることもあります。そんなときはスタッフと意見を共有してモヤモヤを持ち帰らないようにしたり、香りが強めのお風呂に浸かってリフレッシュしたりしています。
また、利用者さまは訪問看護師を医療のプロフェッショナルとして見ますが、医師や看護師が周りにいる病院と違い、訪問では自分1人なので責任の大きさを感じます。医療のプロとして看護の仕事と、サービス業の接遇の両方を1人で担当しなければなりません。ただ、それは成長できる点でもありますし、人に誇れる仕事だと思います。
ーー訪問看護師になって病棟での勤務時代と比べてどんな違いを感じましたか?
一番は夜勤がないことが大きな違いだと感じました。夜勤がなくなって生活リズムが整えられるようになったので良かったです。また、スタッフ同士の仲が良くて朗らかな環境になったと思います。病院はほかのスタッフが同じ空間にずっといますが、訪問看護はスタッフが別々で回っているので顔を合わせることが少ないんです。関わる時間が少ない分、会ったときは尊重し、協力し合える関係性ができている気がします。
それから、病院だと他の看護師もいるので、私のことを認識してくれる患者さまはあまり多くありませんでした。しかし訪問看護師になってからは、利用者さまに名前や顔を覚えてもらえることが増え、スタッフ一人ひとりが見られていると実感しました。
▲ステーション内にて。スタッフみんなで意見を出し合い利用者さまへのケアに活かしています。
ーー訪問看護師として大切にしていることは何ですか?
分からないことはすぐ調べて学ぶことです。新しいことや知らないことがあるのは当たり前なので、都度学びを増やしプロフェッショナルとしての期待に応えたいと考えています。
また、お宅に上がらせてもらう以上、「うちに来て欲しい」と思ってもらえるように努力しています。特に意識しているのは「自分のうしろをきれいにすること」です。手を洗った後、ケアをしたあと、最終的にそのお宅を出る前など、自分のあとを確認して綺麗にしていくことを意識していますね。片付けができていないとクレームにつながったり、「気が利かない人だ」と思われたりしてしまう可能性もあり、片付けができるかどうかが人間性や品格を表すと思っています。
ーーこれからどんなことに力を入れていきたいですか?
利用者さまはもちろん、周りの訪問看護師のケアもできる看護師になりたいです。訪問看護は利用者さまの不安や不満といった感情を受け止めなければならないので、そんなときも精神的に負担を感じないような環境づくりをしていきたいです。
管理者としては、スタッフそれぞれの自己肯定感が高いステーションにしていきたいと考えています。自己肯定感が高ければ、自信を持てるので前向きな気持ちで仕事ができます。自分や相手を肯定して褒めあえる、雰囲気の良いステーションにしていきたいです。
ーー訪問看護に興味があるけど迷っている看護師へ??お願いします。
未体験の領域は、やってみないとわからないことばかりなので、まずは“トライ&エラー”の気持ちで踏み込んでほしいです。私自身、訪問看護師になってはじめて訪問看護の大変なところや、やりがいに気づかされました。分からないことがあっても勉強できる環境なので、興味のある方は挑戦してほしいですね。
ーーありがとうございました。
▲旅行中の2ショット。今はなかなか行けないですが、友達やお姉さんとの旅行もリフレッシュできる趣味の1つだそう。
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