在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は「社会福祉法人ひだまり 訪問看護ステーションひだまり」に勤務する陵木 紗希(おかぎ さき)さんを取材。訪問看護のやりがいや大変さ、思いについて伺いました。
プロフィール
陵木 紗希(おかぎ さき)さん
「社会福祉法人ひだまり 訪問看護ステーションひだまり」(滋賀県)勤務の32歳。看護学校卒業後、総合病院の呼吸器内科、手術室勤務を経て、結婚を機に退職。その後、子供が生まれ2年間専業主婦に。2020年4月、「社会福祉法人ひだまり」にて法人内保育を活用して、小規模多機能型居宅介護に就職。同年7月に同法人の「訪問看護ステーションひだまり」勤務となり、現在は同ステーションの副管理者をしている。プライベートでは、食事やお酒が好きで、コロナ禍以前は家族でよくキャンプに行っていた。
——現在の職務内容について教えてください。
「社会福祉法人ひだまり」ではデイサービスや障がい児者支援、小規模多機能型居宅介護などさまざまな事業を展開しており、現在私が担当しているのは「訪問看護ステーションひだまり」での訪問看護です。病気を患って自己管理されている方のサポートや、ご家族が近くに住んでいらっしゃらない方の様子の確認などを行っています。ご自宅で最期を迎えられる方の支援をさせてもらうこともあります。訪問件数は1日、5~6件程度です。朝にミーティングに参加してから、午前中2~3件、午後3件ほど回っています。訪問時間は1件につき30分~1時間程度で、訪問の頻度は利用者さまごとに週1~2回程度です。月2回訪問の利用者さまもいらっしゃいますね。2021年3月からは副管理者になったので訪問だけでなくスタッフの教育や指導もするようになりました。
また、オンコール当番をすることもあります。オンコール担当中、電話はよく掛かってくるのですが「利用者さまの具合が急に悪くなる」といった緊急時くらいしか訪問はありません。日中の訪問で利用者さまの疑問を解消しておき、夜間の対応を減らすように心がけているからです。私には子供がいるので夜間に緊急訪問があると大変ですが、主人が子育てを積極的にサポートしてくれるので助かっていますね。
——訪問看護師になるまでの経歴を教えてください。
看護学校卒業後は総合病院に就職し、呼吸器内科で3年、手術室で3年働きました。そして結婚を機に退職し、子供が生まれて2年間は専業主婦をしていましたね。その後、看護師免許を活かして再び働こうと思い、訪問看護師を目指しました。総合病院では1日に多くの患者さまを看るので一人ひとりに関わる時間が確保できなかったのですが、訪問看護なら利用者さまとゆったり関われると思い興味があったんです。また、私の子供がまだ小さいこともあり、総合病院のように病棟で夜勤をするのは難しいと考え、日勤だけの仕事を探していたのも理由の一つですね。
「社会福祉法人ひだまり」では、法人内の保育室が利用でき、子どもを預けながら勤務できるので、安心して働けています。就職した当初は、訪問看護を希望していましたが、小規模多機能型居宅介護で人手が足りず「ちょっと手伝ってほしい」とのことだったので、そちらで3カ月ほど働きました。その後、7月に「訪問看護ステーションひだまり」に異動しましたね。
——訪問看護師になるのに不安はありましたか?
ありました。「訪問看護師はベテランの看護師がやる仕事」というイメージがあり、自分がなるには経験不足だと感じていたんです。実際働いてみても、一人で訪問するのを不安に思うことはありました。ただ、現場で判断できないことがあればほかのスタッフに電話や写真の共有をして連絡でき、ステーションに戻ってからケアの方法を確認することもできます。また、当ステーションと同じフロアには当社の介護施設も併設しているので、そこの介護スタッフやケアマネジャー、理学療法士や作業療法士に相談することも可能です。そういったほかのスタッフと話し合える環境が常にあるので、不安は軽減されたと思います。
——訪問看護師になる前となったあとでギャップはありましたか?
大きなギャップはありませんでしたね。ただ、病院で働いていたころは患者さまのご自宅の様子も分かっているつもりになっていたのですが、訪問看護師になってそれが充分にできていなかったことに気付かされました。たとえば病院なら、患者さまの身体を起こすのもベッドがギャッチアップできるので比較的簡単なんです。それが家でできないと知って「家でもできれば便利なのに、なぜないのだろう」と疑問に思っていました。ところが、訪問看護師として利用者さまのご自宅を訪問したところ、利用者さまが介護しやすい様式ではなく、ご自身の生活様式に従って生活していることを知ったんです。それは、看護師としてみれば充分に整った環境とは言えませんでした。しかし、訪問看護の視点から見れば、利用者さまやご家族の方の意思を尊重することも重要です。話し合って、より生活しやすい方法をアドバイスするのですが、実践してもらえないこともありますね。
——訪問看護師のやりがいや面白いところはどこですか?
時間を掛けて利用者さまとの信頼関係をじっくり築いていけるところですね。総合病院の患者さまは数週間で退院することが多かったのですが、その中でもよく病院にいらっしゃる方とは顔見知りになって信頼関係を築くことができていました。私はそれが面白いと感じていたので、訪問看護師になって利用者さまと関われるのはやりがいを感じますね。訪問看護の利用者さまには、はじめのうちは「訪問はもういい」と言って嫌がる方もいらっしゃいます。そんな方でも、ご本人が困っておられることなどをお聞きして、それに対するアドバイスなどをさせていただいて、少しずつ良い方向へ向かっているのをご本人も実感していただけると次第に受け入れてくださるようになるんです。そこでもとてもやりがいを感じています。
訪問看護では利用者さまに簡単な健康についてのアドバイスだけでなく、信頼関係がないと受け入れてもらえないような重要な話をすることもあります。そのため、利用者さまと長く関わって信頼関係を築けるのは訪問看護の強みだと思いますね。
——訪問看護師の大変なところはどこですか?
利用者さまの家のしきたりや、どのように生活しているかを汲み取らなければならないところです。それが汲み取れないとトラブルにもなりかねません。そのため、利用者さまの情報をスタッフ間で共有するのが重要なんです。当ステーションには6人のスタッフがおり、交代で訪問しています。利用者さま1人を複数のスタッフで看るのが基本なんです。誰が訪問しても同じケアができるように、綿密な情報共有が欠かせませんね。
——どのように情報共有しているのですか?
初めて訪問するお宅には、必ず行ったことがあるスタッフに同行してもらいます。また、当ステーションの訪問看護師はiPadを持ち歩いており、訪問看護の電子カルテで情報共有できるようにしていますね。ほかにも、朝と夕方にはステーションでミーティングがあり、積極的に情報共有が行われています。
——現在は副管理者をされているそうですね。
はい。入職当初は週4日の非常勤で、2021年1月から常勤になり、3月からは副管理者になりました。副管理者になるペースが早かったのですが、実は当ステーションのスタッフは管理者と私以外は20代の若いスタッフばかりなんです。若いスタッフには病院経験が少ない看護師もいます。職場が相談しやすい環境なので若いスタッフが働きやすいのだと思います。今年の春からは新卒の看護師を採用するので、私も指導に当たる予定です。指導は滋賀県の看護協会のバックアップを受け、連携しながら進めていきます。
——訪問看護師としてこれからどんなことに?を?れていきたいですか?
報告、連絡、相談のしやすい風通しの良い職場にしていきたいですね。普段からスタッフには「何でも気軽に相談して」と言っています。経験のあるスタッフに任せれば大抵のことをこなしてくれますが、私はむしろ若いスタッフに、相談しながら積極的に仕事をしてもらいたいと考えているんです。そうして若いスタッフに成長してもらいたいですね。
また、私には呼吸器と手術室の経験しかないので、それ以外の専門知識はほかのスタッフに教えてもらうようにしています。また、パソコンが得意なスタッフがいるので、パソコン業務のサポートをしてもらうこともありますね。スタッフがそれぞれ強みを活かして働ける環境です。私はスタッフみんなで助け合って、チームとして良い看護が提供できるようになればいいなと考えています。
——訪問看護に興味がある看護師へ一言お願いします。
訪問看護は人と関わるのが好きな人にはおすすめの仕事です。なかには「病院での経験が必要だ」と考えて、なかなか踏み出せないでいる方もいると思います。しかし、経験以上に大切なことは、コミュニケーション能力や主体的に行動できるかどうかです。経験や知識面で不安があるところは、スタッフで同士でカバーし合えば良いと考えています。私は、訪問看護が若い看護師にももっと入りやすい分野になれば良いと思いますね。
——ありがとうございました。
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