浅田次郎さんの人気小説「きんぴか・血まみれのマリア」。タイトルからしてミステリアスな雰囲気が漂いますが、本作で登場するのは救急救命センターの看護婦長を勤める凄腕の人物。
医療従事者が主役ではなく、元やくざ、元自衛官、元政治家秘書の3人が手を組んで、自分達を裏切った者を見返していくという悪漢小説です。
本作に登場する看護師は「阿部まりあ」という人物。3人の主人公のうちの一人である前科者の男性と入籍することになります。
人物紹介では、救急センターに20年勤務するかたわら、5,000人の患者さんを看取ってきたことから「前科・前歴 殺人5,000人」などと驚く表記をされていますが、内容では、寝る暇も惜しんで働く勤勉なナースとして描かれています。
激務に追われ、疲れ果てて帰宅してから軽い休息を取り、ポケベルの音とともに即・出勤。まさに仕事一筋といった雰囲気です。彼女の夫となる主人公は、仕事にかまけて自分を捨てきっている「危うさ」が気になり、彼女を意識しはじめます。
全体を通して各人物が動的に描かれており、3部作を通して読むのがオススメです。中でもこの「血まみれのマリア」は看護師のリアルな実情と、医療に携わる者ならではの懐の深さを表現した人気作となっています。
現代では男性看護師の活躍も著しいですが、古くから多くの人が看護師を「女性らしい仕事」「女性にしかできない仕事」と考えてきたように、本作でも、女性が看護師を勤めているという部分を強く感じさせます。
まりあの職業が「看護師」ではなく「看護婦」と表記されているところも密かなポイントのようです。
しかし、作中のまりあは男性と同等か、それ以上に働きづくめ。一般的な女性らしい雰囲気とは程遠く、どちらかというと「かっこいい女性」として描かれているようにも感じられます。
実際の看護の現場でもそうですが、女性でも女性らしさを振る舞っている余裕はないものですよね。
救急センターはもちろんですが、医療現場というのは暇な時のほうが少ないと言われています。
業務を一人で任されたり、重い責任が自分に降りかかってくることもあり、それが男性であろうが女性であろうが関係はありません。
小説やマンガなどのフィクション作品では、「看護師=男性にとっての癒し」というイメージで描かれることが多いと思いますが、本作は「婦長」という責任ある立場から、てきぱきと業務をこなしているシーンが多く、実際の医療現場の大変さや忙しさを痛感させられる作品となっています。
本作は人物像がしっかりと描かれており、ドタバタ劇や笑えるシーンなども各所に散りばめられ、3部作を通しで読むとかなりの読み応えがあります。
本職の看護師からも高い評価を得ている「血まみれのマリア」。ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
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