
少し前までは、手術室では患者さまと一期一会が当たり前でした。特に直接介助に入ると、患者さまのお顔を一度も拝見せずに手術が終わってしまうことも少なくありませんでした。
しかしながら、近年は術前に鎮静したりベッドやストレッチャーによる入室は減り、歩行や車椅子にて入室される患者さまが増えました。手術室看護師も患者さまに寄り添い、ご本人確認などを含めた会話をしながらの麻酔導入が行われています。
さらに、手術室看護師も術前術後を通して患者さまと関わりを持ち、効率よく継続した看護を提供できる体制が整いつつあります。
今回は、術前外来や術前訪問の役割について考えていきましょう。

緊急手術など、事前にあまり情報がなく、名前も血液型もわからないまま手術が開始されることがあります。緊急度が非常に高く、救急外来を介さずにドクターヘリから直通で手術室に運ばれてくる方もいらっしゃいます。また、安静が必要な患者さまは、鎮静し挿管して入室されます。
こういった方々と術前にコンタクトをとることはできません。三次救急を担う病院の手術室では、常に緊急手術に備えて手術器具やスタッフ、ベッドを確保して体制を整えています。
スタッフはスタンダードプリコーションを念頭に、感染対策をとります。コロナ禍では、PCR検査が済んでいない患者さまは、抗原検査やレントゲン撮影を行ったり、必要があればスタッフはN95マスクやゴーグルを活用したりと対応しています。
手術室看護師にとって、術前の患者さまの情報があらかじめ手に入るというのは非常にありがたいことです。手術介助では術前準備がとても大切です。
例えば、事前にアレルギーがわかれば、安全のためにアレルギーを引き起こす薬品や物質を手術室から排除し、代用の薬品を準備することができます。手術では、体内に直接手術器具や手袋、ガーゼ、薬剤などが触れるため、皮膚を介すよりも重篤なアレルギー症状を引き起こしやすくなります。
普段症状が軽いアレルギーでも侮れません。時には、特別なインプラントが必要になったり、定時手術の順番や日程、担当するスタッフを入れ替えたりする必要があるかもしれません。
患者さまにとっても、術前外来や術前訪問で当日に手術介助を担当する看護師と顔合わせができることはメリットがあります。いきなり手術でお会いする患者さまからは、緊張と不安でガチガチなご様子が伝わってきます。
一方で、術前に顔を合わせて会話をしたことがある患者さまは、知っているスタッフの顔を見て少し表情が和らいだり、「すごく緊張してきちゃった」と本音で話されたり、「手を握っていてもいいかしら?」と頼ったり、明らかにスタッフとの距離感や関係性に変化が見られます。
コロナ禍以前は、術前外来や訪問時にはスタッフがマスクをしていないので、手術室に入室された際に改めてマスクを外してご挨拶すると、「ナース服じゃないしマスクと帽子をしていたから誰だか分からなかったわ」と笑ってくれる方もいらっしゃいました。
術前外来は、麻酔科外来と一緒になっていることがあります。手術が決まった患者さまは麻酔科外来へ行き、麻酔科医が問診をして麻酔の内容を決めています。
手術室看護師も同席すると、問診から麻酔や手術時のリスクや麻酔科医の考えを把握できるでしょう。また、何度も患者さまに同じ質問をしなくても済みます。手術室看護師も、手術体位が問題なくとれるのかなどを確認したり、会話から患者さまのキャラクターを把握していきます。

術前訪問では、手術直前の患者さまの様子を知ることができます。資料を用いて、患者さまに術前〜術後に意識下で行われる作業の流れや、ご家族さまの待合室をご案内させていただきます。手術室看護師が術前外来での様子を知っていれば、患者さまの変化を把握できますね。
質問があればお答えして、不安なお気持ちは傾聴して受け止めます。不安が強い場合は、当日に手術室内で音楽をかけて少しでもリラックスできるように配慮したり、お守りを持参してもらったりと工夫をしていきます。
術前外来や訪問を行った看護師が、当日の手術介助を担当できない場合があります。患者さまにも事前にご理解いただき、スタッフ間では記録や申し送りを通して情報を共有しています。もちろん、術前からの情報に対する手術室の対応、術直後の評価を病棟看護師へも引き継ぎます。
Writer…suke
Illust…Mana.Ishiguro
Twitter:@mana__iu
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