
看護師をしていると、少なからず介護職の方と関わりを持つことがありますよね。なかにはそういった関わりを「苦手だな」と感じている看護師もいるかもしれません。実際、介護職の方とお話しする際にも、看護師や医師との関係性について話題に上がることがあります。
今回は、看護師と介護職者との関係性について考えてみたいと思います。
もっともありがちなことは、看護師が介護職者の資格内容を理解していないということです。
介護職者の資格としては、以下のようなものがあります。
・介護職員初任者研修
・介護福祉士実務者研修
・介護福祉士
・ホームヘルパー
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・ソーシャルワーカー
・ケースワーカー
これらは介護職者の資格のほんの一部です。それぞれ国家資格なのか、または総称なのか、そもそもどんな仕事を得意として何を勉強されているのかご存知でしょうか。実際に連携されている方は相手の顔が浮かんでくるかもしれませんが、あまり接点がないと難しいかと思います。
診療科のように、介護職者にもそれぞれ得意な分野や専門的な視点があります。それがわからないまま、カンファレンスで話をしたり患者さまの情報共有をしたりすることは、無理があるのではないでしょうか。
まずは、お互いに相手の畑を知らなくては連携は成り立ちません。

本来、看護師は患者さまを一人の人間として全人的に捉えられるように勉強してきていると思います。学生の時に、患者さまを中心とした関連図を書いて訓練されてきた方も多いでしょう。
現場の看護師ももちろん、性格や個別性に着目していますが、基本的には医療的な視点を重視しがちになります。一方、介護職者は、利用者さまを地域で暮らす「生活者」として捉えています。
病院の看護師が医療的視点を重視するのは、看護過程により患者さまの疾患に関連する問題やリスクを解決しようとする過程にあります。一方で、介護職者は利用者さまを生活者として捉え、利用者さまの生活や生き様、歴史的背景、交流関係などからどういった方であり、ご本人やご家族が望む暮らしとは何かというところに視点があります。
看護師として導き出す患者さまのニーズは、患者さまの疾患やその症状に起因するリスクや問題であり、生命を脅かすものの優先順位が高くなります。介護職者として導き出すニーズは、利用者さまの希望ややりたいことが高くなります(もちろん健康状態に関する問題があれば、そちらが優先になります)。
本来、統一された「その人を見る」という視点ではありますが、専門的な分野によって見る角度や判断材料、取り上げる内容は異なることがあるのです。
医療の現場でも、急性期と慢性期のテンポは違いますよね。介護職者の方が口々におっしゃるのは、看護師の特徴は「早い」「忙しい」ということです。そのテンポのズレ、独特の緊張感に抵抗が生まれてしまうことがあります。
慢性期病棟の看護師が突然、超急性期の救急外来や手術室に出向いて用事を済ませなくてはならないようなものです。見学ですらしづらいのに、話しかけるだけで勇気が必要ですし、「忙しい!後にして!」と突っぱね返されたら心が折れてしまうでしょう。
看護師として緊急を要する一幕には、「見たらわかるでしょ!」とついつい強気の態度になってしまうかもしれませんが、それは現場のスタッフにしかわからないことです。実習生の時は、そんな場面が怖くありませんでしたか?
介護の現場では生命に関わることは別として、まずは本人とご家族の意見を伺ってケアを立案し、承諾を得てから実行、評価していくためケアが比較的ゆっくりです。評価も1か月単位から1年単位など長い期間を設けています。
短期目標といえど、今日明日のことではなく、ましてや「今すぐ」ではありません。病院のように口頭指示で治療やケアが目まぐるしく変わるわけではないのです。
また、ケアプランに関してはそれを提示して説明し、本人とご家族の同意を得る必要があることがポイントです。看護過程のように、プロの視点で単刀直入に表現できない部分があることにも注意してください。
例えば、オムツを使用していて臀部にスキントラブルを抱えた患者さまに対して、看護師としては「観察して清潔にすべき!適切な処置を!」と思うところです。しかし、介護職の方からすれば、本人の拒否があれば手が出せません。説得するしかないのです。
拒否の背景には、宗教があったり羞恥心があったりします。強制的にはできませんし、下手したら長年の援助的信頼関係を破綻させてしまう引き金になってしまうかもしれないことです。
その結果、「見れていないんです。お風呂に入れていません。薬が塗れません」といった報告がくるわけです。報告だけを受けて、「なぜやらないの?」と思うかもしれません。
私たちは看護師として病院や施設にいれば、「少しお尻を見せてくださいね」と言えば簡単に観察できます。患者さまも治療に来ているわけです。しかし、デイサービスや訪問介護の利用は治療ではありません。趣味だったり、楽しみだったり、お手伝いだったりと生活の一部です。
そこで突然、「お尻を見せてね」と言われたらどうでしょう。そんな場所、もう行きたくなくなりますよね。私たちは看護師だから、病院だから簡単にできることなのかもしれません。
この場合は、皮膚トラブルの現状など医療者の持つ情報と、トラブルの原因や本人の意思、家族の協力など介護職者の持つ情報を擦り合わせて、改善に向かうように計画を立て直し、本人の同意を得る必要があります。報告だけでなくその背景を知ることが大切なのです。

すでにおわかりだと思いますが、介護職者からの相談は端的に済ませられるものばかりではありません。多いのは「〇〇な現状があります。どうしたらいいでしょう」というものです。
医療者は、話を長く聞く余裕がないと「〇〇なのになんで放っておいたんだ!」と怒ったり、「あら、そう(緊急度が高くなかった)」などと反応したり、介護職者が望む答えを返せないことがあります。一方で、介護職者に理由を聞くと話が長くなり、結局何が言いたいのか伝わりづらく、「要点は?」「で、どうなの?」と思うこともあるでしょう。
しかし、こういった現状の背景には、本人の性格や考え方など複雑に関連した理由があり、端的に説明するのは難しいことがあります。要するに、「織田信長は明智光秀に殺されました。どうしましょう」「なぜだ?」という会話です。
もちろん理由や背景を話せば長くなります。うまく話すのは難しいですよね。知っているからこそあれこれ説明したくなりますし、一言で済ませると誤解を招くこともあるかもしれません。
お互いをよく知らないがために、医療ではない部分は介護職者へ丸投げ、医療は看護師に丸投げという時代はすでに終わっています。医療と介護は連携し、お互いの方向性を明確にして、患者さまや利用者さまにとって適切な選択とケアをすることが求められる時代になったのです。看護師としても腕の見せ所ですね。
Writer…suke
Illust…Mana.Ishiguro
Twitter:@mana__iu
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