◆はじめに
医療の現場では、専門用語を使用することが多く、患者様にとって分かりやすい説明をすることは日本語でも難しいと感じる場面も多々ありますよね。
手術における介助では、全身麻酔では入室から麻酔導入まで、局所麻酔では手術中まで、それぞれ麻酔覚醒後において患者様の協力が必要不可欠となります。そのために、これからの処置や起こりうること、体の状態について患者様と会話をしながら介助を進めていきます。
しかし、もしも緊急手術が必要になった患者様が外国の方だった場合、私たちは患者様に安心で安全な手術を提供することができるのでしょうか。
また、患者様が英語圏外からの患者様への対応はどのようにすればよいのでしょうか。
今回は、患者様が日本語のわからない海外の方だった場合の実際の経験についてご紹介します。
基本的な英語はマスターするべきです。基本的な英語というのは、自己紹介や相手の情報収集のための質問(氏名・年齢・既往歴・アレルギーなどの確認など)や、注意事項(アクセサリーやコンタクトレンズの使用はないか等)についてです。
手術においても、サインインやタイムアウト前に患者様に確認すべき情報や、説明すべき内容についての英語は最低限必要となります。
このとき、英語はなんとか通じているけれど、相手の返答が聞き取れないという場合もあります。一言に英語といっても、国や地域によって発音にクセがある場合もあり、全く聞き取れないこともあるのです。そんなときのために、イエス・ノーで答えられる内容で質問を用意しておくと分かりやすいと思います。
基本的な英語をマスターするといっても、苦手な看護師も少なくないと思います。そんな時は、英語のマニュアルを用意することで、私たちの英語力を補うことができます。
必要最低限の患者様に対する質問や説明は、マニュアル化しておくといざというときに役に立ちます。
慣れない英語を使わなくてはいけないというプレッシャーから、重要な質問や説明を省いてしまったり、患者様にとって理解しづらい表現や説明になってしまうことも少なくありません。マニュアルを手に取りながら、ゆっくり確実なコミュニケーションを図ると安心です。
英語は理解できる(読める)けれど、話すことは苦手という人も多いのではないでしょうか。発音によっては、上手くコミュニケーションが図れないこともしばしば。
このような時、筆談が役立ちます。こちらも筆談を活用しますが、相手のアンサーもアルファベットを書いてもらえば、聞きなれない単語でもすぐに辞書で調べることが可能になります。
また、時には簡単な絵を用いて表現することもできます。日本のトイレなどでも分かりやすい使用方法を○×で示している標識がありますよね。アレを真似して案外簡潔に説明することができますよ。
患者様によっては、思っていた以上に言葉が通じなかった場合など、その後に必要な説明に関する補助的な資料を他のスタッフに頼んで書いておいてもらうと安心です。
手術室では、細かく的確な説明が必要になる場合もあり、場合によっては通訳の方やご家族の同室を認めて手術を行う場合もあります。
フィリピンからの患者様で、英語が全く通じないという章例を経験したので紹介します。
緊急帝王切開術が必要な症例でしたが、患者様はとても動揺しておりパニックを起こしそうな印象がありました。事前情報通り、英語は全く通じず、私たちも「これで安全な手術が可能なのだろうか」と正直少し不安な気持ちになりました。
今回の帝王切開術は、術前に硬膜外麻酔と脊椎麻酔を行い意識がある状態で迅速に赤ちゃんを取り出す計画であり、患者様の協力が必要不可欠となるためです。
そこで、麻酔科医・産婦人科医と相談して、夫の同室をお願いすることにしました。夫は、少し英語が理解できるということで快く同意をしてくれました。すると入室前に、動揺されていた患者様本人も夫が同室できると聞いて大分落ち着いて手術に向かうことができたようでした。言葉が殆ど通じない状況であっても、夫が傍にいるだけで患者様自身が落ち着くことができ、私たちの説明(英語とジェスチャーが殆ど)を聞いて少しずつ理解してもらえるなんてと驚いたことを覚えています。
また、こちらも患者様の気持ちや不安を夫が代弁してくれたため適切なアドバイスやケアができたのではないかと思います。
その他、同様に麻酔導入前までご家族の方に付き添ってもらうことまあります。
いずれの症例においても、どのように対応すべきかは、患者様の身体状態や意思疎通がどの程度可能であるかなどその時々の状況に応じて手術室全体で判断していきます。
◆おわりに
医療の現場では、さまざまな国や地域の患者様との関りがあります。看護師は、患者様と会話をする機会が多いため戸惑ってしまうことも多いと思います。
手術室では、看護師だけでなく、麻酔科医や担当科の医師と協力しながら手術が安全に進行できるように、患者様の対応を行います。
一番重要なことは、日本語を話すことができない外国の患者様が、異国の地で手術を受けなくてはならない状態になってしまったことに対して少なからず不安や恐怖といった感情を持っているかもしれないということに配慮することです。
言葉や文化の違いはありますが、そのことで患者様の不安が増強しないように相手の反応や表情にも注意して丁寧に対応することが大切です。
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