
ミス・ユニバースなどの世界三大ミスコンテストに次ぐ大会として脚光を浴びる『ミス・グランド・インターナショナル2017』。2017年7月21日、日本のファイナリスト11名が発表され、現役モデルや客室乗務員などのコンテスタント達と並び、3名のある職業の女性たちが報道陣の前で華麗にポーズを決めていました。そう、彼女たちは全員、現役の看護師なのです。
そこで『ナースときどき女子』では、彼女たちの素顔に迫るインタビュー企画を実施。第1回目は、訪問看護師の勝本有莉実(かつもと・ありさ)さん。普段は患者さん宅を巡り、療養生活を支える彼女が美の祭典に出場した背景には、ジャイ子と呼ばれた過去と、スポーツマンらしい発想がありました。
身長170cm、すらりとしたボディにエレガントな純白のワンピースをまとい、取材現場に現れた勝本有莉実さん。陶器のような肌と切れ長の瞳、艶のある黒髪でオリエンタルな美しさを漂わせる彼女も、子供の頃はかなりやんちゃな女の子だったとか。
「よく木登りや釣りをして遊んでいました。いつも男の子に負けたくないと思っていて、か弱い女の子のイメージとはかけ離れていましたね(笑)」
そんな負けん気の強さは、小学生で始めたバスケットボールでも発揮され、高校時代は福井県にある全国ベスト8の強豪校でレギュラーとして活躍。しかし高校2年で前十字靭帯断裂の大怪我を負い、手術を受けることに。
「入院した病院が実家から遠くて、親もなかなかお見舞いに来られなかったので、最初はとても心細かったです。でも担当の看護師さんがすごく優しい方で、術後に足のむくみが気になって呼んでも、嫌な顔1つしないで対応してくれたり、『何か心配なことはない?』と笑顔でよく声をかけてくれて、ずいぶん安心できました。
当時の私にはその看護師さんが天使みたいに見えて(笑)、私もあんなふうに人の役に立ちたいと思って、看護師を目指しました」

勝本さんは高校卒業後、医療系の専門学校に進学。卒業後は総合病院の外科病棟で、看護師として働き始めます。
「整形外科と脳外科以外、すべて看ていました。緩和ケアも行っていて、術前術後のケアから看取りまで、仕事内容は幅広かったですね」
外科の新人看護師として、忙しくも充実した日々を送っていた勝本さんでしたが、次第にある想いが頭をもたげるようになります。
「患者さん1人ひとりに割ける時間が少なくて、申し訳ない気持ちでした。困っているはずの患者さんから『看護師さんは忙しいからね』と言われたり、寂しい表情の患者さんも多くて、患者さんにしっかり向き合えていないと感じていました」
さらに看護師として避けては通れない壁が、立ちはだかります。
「死と向き合うのが怖くなりました。初めはご臨終やご家族の様子を見てひどく落ち込みましたが、何度も看取りを経験するうちに気持ちが沈まなくなり、悲しいとさえ感じなくなっていきました。そういう自分の変化がすごく怖かったですね。そのうち両親が死んでも平気でいられるようになってしまう気がして、3年勤めた病院を辞めました」

その後、休養を経て、知人に紹介された都内の訪問看護ステーションで、看護師として再び働き出した勝本さん。現在は患者さん宅を自転車で回り、医療処置や日常生活の看護にあたっています。
「病院を辞めた後、もう一度患者さんの笑顔が見たくなりました。今でも看取りは行いますが、患者さんが望むご自宅で最期を迎えられるお手伝いができることを、誇りに思います。あとは患者さん1人ひとりに寄り添ったケアと、生活のサポートができることもうれしいですね。入浴介助や排便コントロール、服薬管理などのケアのほかに、ご家族から介護保険について聞かれ、ケアマネージャーに相談することもあります。
時には患者さんに嫌な顔をされたり、怒鳴られたりすることもありますが、孫のように可愛がってくださる方や、『あなた以上の看護師はいない』と褒めてくださる方もいます。少しでも自分が患者さんの楽しみや生きがいになっていると感じられた時は、訪問看護をやっていて本当に良かったなと思います」
「高校のバスケ部を引退した途端、20kg以上太ったんですよ。すると友達から『太った、太った』と言われて、男の子たちからもジャイ子とかデブとか呼ばれて、すごくショックでした。
それまでスポーツばかりしてきたので、メイクもお洒落もほとんどしたことがなくて、きれいになる方法も知りませんでした。もうコンプレックスの塊でしたね。それから雑誌を読んでメイクやお洒落の勉強をしたり、ダイエットで体重を10kgぐらいは戻したんですけど、ずっと自分に自信が持てませんでした。
しかも今の訪問看護の仕事ではお化粧もしないし、汗水をたらして自転車を漕いで、手やユニフォームが汚れるお仕事も当たり前で。もちろん患者さんに喜んでもらえるのはすごくうれしいんですけど、考えたら女性らしいことを何もしてないんですよね。『このままで良いのかな?』と感じていました」
さらにスポーツに真剣に打ち込んできた彼女ならではの発想が、大会出場へと背中を押します。
「振り返ると、日本一を目指して一生懸命バスケットボールを追いかけていた頃の自分が、一番輝いていました。何かに挑戦している自分が一番格好いいし、そういう自分が好きなんですよね。
それでもう一度何かに挑戦して頂点を目指してみたいと思っていたら、友達から『身長もあるし、ミスコンにでも出てみたら?』と勧められました。最初、私は目も細いしためらったんですけど、友達が〝日本人ぽくていいよ〟と言ってくれて、出場を決めました」

それから書類審査、地方大会、セミファイナルと駒を進めていった勝本さん。途中、何度も逃げ出したい場面があったそう。
「小さい頃から体が大きくて活発だったので、強い人間だと思われがちなんですけど、実は私、臆病だしあがり症だし、弱い人間なんです。地方大会を勝ち抜いたと分かった時には腰が抜けそうだったし、セミファイナル直前にはすごい不安に襲われて頭が真っ白になり、体が動かなくなりました。
でも、しばらくすると気付いたんですよね。挑戦するときに不安なのは、みんな同じはずだと。『ここで逃げたら今までの私と変わらない。ただ何となく生きている、冴えない私でいいの?』と何度も自分に問いかけて、自分を奮い立たせました」
セミファイナルでは自己PRやウォーキングを披露し、見事ファイナリストに選ばれた勝本さん。大会に出て、外見だけでなく内面にも変化が生まれたそう。
「講師の方から目が大きく見えるメイクやミス・グランドらしい品格のあるファッション、立ち居振る舞いなどを習い、取り入れるようになりました。事務局の吉井代表からは、いついかなる角度から撮られても美しく見えるように指導されています。
また、大会で自分を見つめ直す機会が増えたので、1人の人間、看護師として、原点に戻った感じがします。私はもともと人の役に立ちたくて看護師になりましたが、日々の業務に追われてそのことを忘れがちでした。でもそれじゃダメですよね。
大会に出たことで、患者さん1人ひとりのサービス内容を見直して、どうしたら今以上に良いサービスを提供できるか考えるようになりました」

現在は約1ヶ月後に迫った日本大会(日本決勝)に向け、レッスンやトレーニング、食事制限に取り組んでいるという勝本さん。なかでも看護師として、健康的に痩せることを大切に考えていると話します。
「講師の方から糖を吸収しづらい食材だとか、体に良い調味料について色々教えてもらったりして、それをもとにきちんと食事をとるようにしています。私、本当によく食べるんですよ。甘いものも大好きなので楽じゃないですが、体重が減っていたら週に1度だけお菓子を食べられることにして、自分にご褒美をあげています。
あとは最近、仕事帰りの1駅分を30分かけて歩いています。ウォーキングは有酸素運動だし、リュックを背負えばそれがダンベル代わりになります。お風呂にもできるだけ浸かるようにしていて、20分浸かっては休憩を入れ、それを2時間、2リットルの水を飲みながら繰り返しています」
入浴中には、ディズニーアニメのシンデレラを観ていることが多いそう。
「バスケに訪問看護に、これまでわりと泥臭く生きてきたので(笑)、最後は王子様と幸せになれるロマンチックな結末に憧れるのかも知れません」
さらにこれまで嫌いだった自分の顔と体を、少しずつ好きになってきたと勝本さんは語ります。
「講師の方たちが『こうすればもっと素敵に見えるよ』と言って、自分の良さを引き出す指導をしてくださるので、自分でもちょっとずつ自分の顔と体を受け入れて、愛せるようになりました。それにやっぱり自分を好きじゃなかったら輝けないし、人に魅力的だと思ってもらえないですよね。だからできるだけ自分のことを好きになって、自信を持つようにしています」

勝本さんは日本大会に向けて、次のように意気込みを述べました。
「他のファイナリストは美しいだけでなく、思いやりもある魅力的な人ばかりで、同じ世界を目指す仲間として尊敬しています。でもやるからにはバスケで培った忍耐力と勝負強さを活かして、何が何でも日本一の座を勝ち取り、世界大会に行きたいと思います。
そしてこれからも自分らしく色々なことに挑戦して、1人の女性として看護師として発信していくことで、誰かの役に立ちたいと考えています。例えば恵まれた日本の医療制度が今後も維持されるための、またその素晴らしさを世界に知ってもらうための活動を、ミス・グランドとして進めていきたいですね」
最後に勝本さんは読者の皆さんに、こう語りかけました。
「私はごく普通の看護師ですが、ミス・グランド・ジャパンに出場したことで自分と真剣に向き合うようになりました。そして視野が大きく広がり、少しは発信力も身について、以前より多くの人の役に立てるようになったと感じています。
みなさんに言いたいのは、興味を持ったことなら何でもいい、とにかく挑戦してほしいということです。自信がないとか、仕事が忙しいという理由で新しいことを始めるのをためらって、輝けていない人がいるんじゃないでしょうか。本当にもったいないですよね。
例えば、認定看護師を目指すのも立派な挑戦だと思います。挑戦は自分のためにもなるし、挑戦するあなたの姿が、誰かの勇気につながります。だから一歩、踏み出してみてください」
※記事内容は、2017年8月8日取材時点の情報を基にしています。
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