様々な分野で活用が進みつつあるAI(人工知能)。将来、必要なくなる職業があるのではないかと一時期話題になっていましたが、その中には「看護師」という職業も入っていました。
しかし、AIと言っても映画や小説の中に登場するAIのように「心(意識)」を持ち、人と対話のできる「汎用AI」ではなく、まずはデータを蓄積し、そこから学習できる「特化AI」を活用する研究が多くなされているようです。身近なところだとスマートフォンに搭載されている「Siri」や自動運転技術などがありますね。
今回は医療業界とAIの関係、看護師とAIの関係について解説します。
進化したAIは、医療業界と相性が良いといわれています。膨大なデータを解析して「答え」を出すことを得意としているからです。
このような特徴を活用するため、患者情報をデータベース化することが検討されています。また、AIを診療の現場で活用すべく研究が進められています。
医療分野で進められている研究の代表といえるのが、東京大学医科学研究所が行っているIBMの「ワトソン」を活用した研究です。
ワトソンは、2000万件もの医学論文のデータや1500万件以上の薬の特許情報など、他にも医療に関わる情報を学習しており、がん患者の遺伝子データを入力することで、ワトソンが治療標的となる遺伝子と最適な治療薬の提案を行います。
人が1年間かかることを30分で解析できると言われています。
実際に、抗がん剤などの効果が現れなかった急性骨髄性白血病患者が、特殊なタイプの白血病であることを見抜いた話は有名です。
専門の医師でも見抜けないことをAIが発見し、医師がこの患者の治療方針を変更して快方に向かったため、AIが患者の命を救った国内初の事例といわれています。ちなみにAIがこの特殊な白血病を発見したのはわずか10分だったそうです。
他にも41名の患者の役に立つ情報を提供したと言われています。
ひとりの医師が学ぶことのできるデータ、短時間で引き出すことのデータは人間であるからこそ、限度というものがあります。しかし、AIは膨大なデータから必要な情報を短時間にピックアップすることができることを実証しました。
もちろんデータを取得した後、経験ある医師の観察と診断が治療に不可欠であったことは言うまでもありません。
自治医科大学が開発を行っている医師の診療を?援するAIシステムは、過去の膨大なデータから病名の候補を絞り出すシステムです。
患者さんはタブレットで問診を入力し、電子カルテにデータを送ります。
それを医師がホワイトジャックに問合せて得た病名候補を参考に、さらに患者さんに問診。必要ならホワイトジャックへの問合せを繰り返して、医師の診断に役立てます。
ホワイトジャックは、「見逃してはいけない危険な情報」もしっかりとレコメンドしてくれるので、医師の診断を幅のある情報からサポートしてくれるというシステムです。
このAIには、過去の膨大な文献や教科書、学会の記録などに加え、実際に行った過去の膨大な診療情報も記憶されており、AIがそれらを分析して必要な情報をピックアップするため、人間では限界のある知識を補ってくれるというのです。
しかし、実際に診断を下すのは、人間である医師が行います。
このシステムにより、絶対に見逃してはいけない疾患の可能性を探ることができたり、特殊な病気の発見を早めることも可能になると期待されています。
出典:首相官邸ホームページ
上記のほか、様々な研究が行われています。現在のところ、2020年代にはいるとAIが本格的に医療業界に進出すると予想されています。AIを導入することで早期発見ができるだけでなく、専門領域以外の情報も含めた総合的な診断ができる可能性があがるのはとても良いことですね。
AI進出後の医療業界は、人とAIの役割分担が進むはずです。例えば、AIが診断に必要な情報を提供し、医師が確認・診断を行うなどです。
ここで気になるのが、看護師の仕事に与える影響です。看護師の仕事はAIにとってかわられるのでしょうか?
AIが進出することで医療のレベルは大きく向上すると考えられます。データの分析などにおいては人間よりはるかに優れているからです。一方で、AIより人間の方が優れている面もあります。患者さんの気持ちを受け止めるなど、コミュニケーション能力です。
患者さんの多くは、病気を治すだけでなく「話を聞いてほしい」、「尊重してほしい」、「不安を受け止めてほしい」など、人間として当たり前の感情を抱いています。
これらの感情を受け止めて、より良い治療に繋げていくことが、看護師の仕事のひとつです。AIがこの能力を獲得するには、まだまだ時間がかかると考えられていますし、限度があるかもしれません。
また、現時点でロボットが看護師の仕事のすべてを代替することも難しいと考えられます。これらのことから近い将来、看護師の仕事がAIやロボットにとってかわられる可能性は低いと言えます。
AIが膨大な情報から瞬時にピックアップしてくれる情報や提案を受け、看護師が判断した看護を行なう。あるいは、ロボットが介助など体力的に大変な部分を補ってくれて、看護師が看護ケアを行なうなど、役割を分担しながら仕事をしていけると今より働きやすくなるかもしれませんね。
2020年代には、AIが医療業界に本格的に進出すると予想されています。AIの導入により、より幅広い情報の中から最適な情報だけをすばやくピックアップし、医師の診断に生かすことができます。
また、上記でご紹介した以外にも、画像診断にAIを活用したり、AIがインフォームドコンセントの支援をするなど、さまざまな領域での研究も進められています。
AI進出後も看護師の仕事は残ると考えられています。機械的に病気を発見し、治療をすることだけが医療・看護ではないからです。
しかし、AIの持つ情報処理のスピードや能力は、人間の限界を越えるものがあります。
AIと人間との役割分担が進んで、AIを上手に活用することで看護師が活躍できる時代になるといいですね。
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