「眠れる看護師資格」を活かして地域で活躍する働き方を提案。”PINK CROSS PROJECT 2017”

2017.12.13

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看護師資格を持ちながら、結婚や育児などを理由に離職している「潜在看護師」は、日本に約70万人。高齢化が進む日本では、潜在看護師の仕事復帰が望まれていることをご存知でしょうか?

そんな潜在看護師が地域で活躍する仕組みを創造する団体「PINK CROSS PROJECT

(ピンククロスプロジェクト)」が2017年11月1日イベントを開催。「看護師の“働き方改革”」をテーマにトークショーと、看護師によるファッションショーを行いました。

イベントには、吉田沙保里選手など数々の名選手を育ててきた女子レスリングの栄 和人(さかえ かずひと)監督が、特別応援団長として参加。会場を沸かせました。

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第一部:トークショー 「災害大国日本と防災ナースの役割」

防災ナースとは、災害時はもちろん普段から地域での健康管理、安全管理に貢献する看護師のこと。PINK CROSS PROJECTは、自然災害の多い日本では特に防災ナースの需要が高いと考え、その普及を推めています。

第一部では、数々の被災地で活動してきた医師や被災経験のある看護師が登場。

前橋赤十字病院でドクターヘリチームを率いる町田 浩志医師は防災ナースに求める役割として、「被災地では外部の災害医療チームのサポートが無くなると、地域の健康管理が保健師に集中し、大きな負担となって伸し掛かるケースが多い。少しでも早く被災地を回復させるためにも、地域の防災ナースが保健師と一緒になって活躍していってほしい」などと語りました。

また、東日本大震災、熊本地震と被災者の医療支援に携わってきたJCHO東京城東病院の高橋 淳副看護師長は、「東日本大震災で循環診療のため保健師と被災地を回っていた時、保健師も把握していない場所に避難した多くの人々と出会った。地域の防災ナースの皆さんがDMAT(※)やNPO団体などの医療支援チームと協力して、そうした方々の助けになってくれたら」と防災ナースの活躍に期待を寄せました。

※DMAT…災害派遣医療チームのこと。「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義され、医師、看護師、業務調整員で構成される

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左から被災地で医療支援にあたってきた町田医師、高橋副看護師長、福島で被災した看護師の石松さん、神戸で被災した看護師の朴さん

東日本大震災の被災者である福島県の看護師石松 幸さんは、福島では県民の被ばく線量を調べる健康調査が定期的に実施されているほか、まだなお余震があることを説明。「緊張感はつねにある」などと、地域の現状を伝えました。

さらに、阪神淡路大震災を体験した大学講師で訪問看護師の朴(ぼく)明子さんは被災時を振り返り、潜在護師が日常的に地域の健康を把握しておくことで、被災時の安否確認や被害拡大、被災後の体調悪化を防ぐことにつながると説明。

「必ずこれをしなければいけないとか、自分にはとてもできない、と考えるのではなく、少しずつでも一人ずつでもできるところから始めていければいいのかなと思う」と、潜在看護師が防災ナースとしてまずは一歩踏み出すことの大切さを訴えました。

 
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第二部:トークショー「看護師の新たな可能性と働き方」

第二部では、ビジネスに看護師のスキルを必要とする、保育所、訪問看護施設、訪日外国人向け通訳サービスを手がける経営者が登壇。それぞれの業界で抱える課題を述べた後、それらに対する潜在看護師の新たな働き方について提案しました。

保育所やベビーシッターサービスを運営する(有)マザーグース取締役社長の柴崎方恵さんは保育所の課題として、園児が発熱などで病変した時、保育士では十分な判断と対応ができないことを挙げ、ナースのバックアップがあるだけで保育士、園児の親ともに安心感を得られることを説明。

看護師が病変した園児の対応を保育士に助言する新たなサービスを、今年(2017年)12月から試運転することを発表し、同サービスを将来的に看護師が在宅で対応できる形で運用する可能性についても触れました。

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左から通訳会社(株)ブリックス代表の吉川さん、訪問看護を手がけるBarack(株)代表の中川さん、保育所を運営する(有)マザーグース代表の柴崎さん

訪問看護施設を経営するBarack(株)代表の中川 有紀子さんは、マンションに住む看護師が近所の患者の見回りをするだけでもニーズがあると明かしました。

「訪問看護はやりがいがある一方、『オンコールがあるから』と嫌がられる。でも100人の患者が利用していても、年間で2~3回くらいしか呼ばれない。今後、看護師が空いた時間に近所の訪問看護をするような仕組みを作りたいと思っている」 などと、新たな看護師の働き方と訪問看護のかたちを提言しました。

また、通訳サービスを提供する(株)ブリックス代表の吉川 健一さんは、東京オリンピックに向け2,400万人の外国人観光客が訪れているが、通訳者は5万人と全く足りていないことを説明。

そんな中、医療や事故、災害で通訳者が必要となっても、手が回らないことに課題を感じているとし、「通訳者ほどの語学力は必要ない。看護師として簡単な英語を使って医療現場でコミュニケーションがとれるだけで、新たなバリューとなる」と、看護師が国際化の進む日本で活躍することに期待を示していました。

第三部:看護師による白衣のファッションショー

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第三部が始まると会場には音楽が流れ、雰囲気が一変。「脱!作業着」をテーマにPINK CROSS PROJECT登録ナースによる白衣のファッションショーが開催されました。

白衣は、「美を科学する」をコンセプトとしたブランド「VENE(ヴィーネ)」によるもの。女性らしい曲線が表れるデザインが特徴で、単なる作業服ではなくおしゃれな制服で仕事をしたいナースの願いを叶える仕上がりとなっていました。

モデルのみなさんは慣れないショーに時おり緊張した様子を見せながらも、ランウェイでは堂々としたウォーキングを披露しました。

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タイトながらもスリットやプリーツで機能性も考慮されたデザインの白衣。製法特許のプリーツで動きに応じて美しいラインが出るように計算されている

ファッションショーの最後には、特別応援団長の栄監督と準ミス・グランド・ジャパンで現役訪問看護師の勝本 有莉実(かつもと ありさ)さんが登場。異色のツーショットがショーの最後を華やかに彩りました。

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いつものジャージ姿から一転、白衣姿でポーズを決める栄監督と、抜群のスタイルでセンス良く白衣を着こなし、観客の目を奪った勝本さん

栄監督よりメッセージ「貴重な人材である潜在看護師に活躍してほしい」

イベント後には、栄監督を直撃。栄監督はイベント参加の理由について、「家庭に入っている潜在看護師が多いと知り、その方々に看護師を必要としている場があると知ってもらいたかった。2020年の東京オリンピックでは、大会関係者や観客が体調不良や事故、怪我などに見舞われることもあり得る。そこで看護知識のある方がサポートしてくれると、とても心強い」と語りました。

さらに女子選手を長年支えてきた監督らしく、女性の出産、育児の大変さに触れたうえで、「子育てが落ち着いて、看護師資格を活かして何かできないかと考えているなら、ぜひこの活動に参加してほしい!」と、潜在看護師に向けて力強いメッセージを残しました。

看護師のこれからの働き方が変わるかもしれない

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イベントでは、PINK CROSS PROJECTの活動を熱心に行ったメンバーを表賞。記念にナースキャップが贈られた

今回のイベントで看護師の知識や資格は、地域の防災、保育、訪問看護、インバウンド対策と、医療機関だけでなく様々な場所・業界で必要とされていることが分かりました。

ブランクにより医療現場への復帰に不安がある潜在看護師にとって、今回のイベントで提案された働き方は、看護スキルや感覚を取り戻す有効な場となるかもしれません。また、将来結婚などで家庭に入る可能性がありそうな現役ナースのみなさんは、「こんな働き方もある」とキャリアプランの選択肢の一つとして、考えてみてはいかがでしょうか?

 
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