先輩や上司、患者さんとのやり取り、過酷な労働環境など、様々な要因からストレスを抱えている看護師さんは多いはず。今回は看護師専門のトータル・ライフ・コンサルタントとして500人以上もの看護師さんの相談に乗りながら、メンタルケア心理士(R)としても活躍する岩井裕太郎さんに、看護師さんがストレスを減らすためのコミュニケーションのコツをレクチャーしていただきました!
プロフィール

岩井 裕太郎(いわい ゆうたろう)
数々の看護師のマネープラン、ライフプランの相談に乗ってきた看護師専門のトータル・ライフ・コンサルタント。全国の医療機関などで看護師向けのセミナーも開催している。メンタルケア心理士(R) ※ の資格も持ち、メンタルケアのプロとしても相談に応じている。
※メンタルケア心理士(R)…心理カウンセラーとしてのスキルの他に医学、薬学などの知識も併せ持ち、多角的な観点で相談者のメンタルケアを行う。相談者と病院との橋渡しや、医師がケアしきれない範囲のメンタルケアなども行うことから、医療福祉分野での活躍が多くみられる。
仕事をする上で、なかなか避けられないのがストレス。岩井さんは、看護師さんの職場に潜む様々なストレス要因について次のように語りました。
「まずは看護のお仕事が人の生命に関わる職業だということが挙げられます。ともすると自分のミスが患者さんの死につながりかねない緊張感の中、長時間働くのは結構なストレスでしょう。
医療現場では基本的にミスは許されないため、”減点法”で評価する傾向があります。そのため褒める文化(=加点法)がなかなか育たず、ちょっとしたミスでも自分を責めて、後悔して…これを繰り返し、自信を無くしていく看護師さんによく出会います。
さらに、人手不足で休みが取りにくいこともストレスになります。体調が悪くても、同じように無理をして働いている同僚のことを思うと休めない。そして身体と心に疲れが溜まってゆく…。看護師さんには基本的に真面目で頑張り屋さん、負けず嫌いな傾向があるので、そうやって疲弊してしまう方も多いです。
あとは何と言っても人間関係、コミュニケーションですね」(岩井さん)
岩井さんは看護師さんの職場でのコミュニケーションの悩みを、「退職理由にもなり得る大きなストレス要因のひとつ」と述べています。
「ほとんどの看護師さんが職場での人間関係に悩んでいます。その悩みを同僚や上司に相談したら、職場で噂になってしまうかもしれない。他の職場で働く看護師さんに相談しようとしても、知り合う機会がない。悩みを打ち明けて、ストレスを発散できるような相手になかなか出会えないのが現状のようです。
また、看護師さんは医学部や看護学校など、高校卒業後すぐ医療の世界に入ることが多いので、交友関係も限られています。その上、職場での研修は医療の知識や技術に関するものがほとんどで、コミュニケーションについての研修を取り入れている病院は、ほとんど見られません。
他の業界にいる人の価値観を取り入れたり、学ぶ機会がないので、コミュニケーションを改善できず、また同じ対人関係のミスを繰り返してしまう。これは看護師さんが転職を繰り返す原因のひとつでもあると思います」(岩井さん)
では、看護師さんがコミュニケーションをとる上で、ストレスを減らすには何を心がければいいのでしょうか。
「少しの心がけでストレスは減らせます。その方法をいくつかご紹介します。
①自分の取扱説明書を作る
看護師さんはなかなか自分と向き合う時間が取れないことも多い職業だと思いますが、『自分を知る』ということがとても大切になってきます。
そのためには自分の取扱説明書を作ることが有効です。自分の好きなものは何か?自分が苦手なものは何か?ストレスを感じるものは何か? 例えば『こういう状況だと緊張してしまう、泣いてしまう』など、コミュニケーションをとる際の自分の傾向を書き出しましょう。
それを踏まえたうえで、『こういう話し方をしてみよう』『こういう人には気をつけよう』と予防線を張っておくと、本番でのストレスも和らぎます。
②信頼できる相談相手を作る
同期の看護師友達など、職場以外にも、信頼できる相談相手を作ることも効果的です。なんでも話せて悩みも共有できる存在が一人でもいることは、安心感を得られるので精神衛生上とても良いんです。愚痴は決してネガティブなことではなく、メンタルケアの観点からもストレスを吐き出す方法の一つですよ。
そういった友達ができると、連鎖的にまた別の看護師さんとも仲良くなれるかもしれない。心を許せる仲間を少しずつ増やしていくことが、最終的には職場全体の雰囲気を良くすることにつながります。
③自分の職業観を再確認する
良好な人間関係を築き、円滑にコミュニケーションを図るうえで、相手の信頼を得ることは不可欠です。これまで数々のご相談を受けてきた経験から、看護師さん同士は互いの信頼度を測る材料の一つとして、特に職業観を重視する傾向があるとも言われます。
『一体何のために看護師をしているのか?』『何のためにこの病院で働いているのか?』自分自身の職業観をしっかりと見つめ直し、仕事に向き合ってください。そうすることであなたの職業観は会話や行動などを通じて自然と上司や同僚に伝わり、周囲から信頼や尊敬を得ることにつながります。
④相手が望むことをしてあげる
心理学では、人々は自分の欲求を満たすために行動を選択すると言われています。自分を知ることもとても大切ですが、今目の前にいる人、自分の関わる人が、何を求めているのか? という相手の欲求、望むことを自分から進んでやってみることも大事です。
そうすることで、例えばまだ関係性ができ上がっていない上司や先輩にも、『私はあなたと仲良くなりたい』『コミュニケーションをとりたい』という意思表示をすることになり、相手が心を開いてくれるきっかけになります。
いずれはそれが自分にも返ってきて、先輩や上司が悩みを聞いてくれたり助けてくれたら心強いですよね」(岩井さん)
最後に岩井さんは「コミュニケーションを学ぶことで心が楽になる」と言葉をかけてくれました。
「仕事をしていれば、コミュニケーションに悩むのは当たり前です。自分だけが悩んでいる、と思い詰めないでくださいね。
上司や先輩とうまくいかなくても、それは深い溝があるわけでも、難しい理由があるわけでもなく、ちょっとしたすれ違いによるところが大きいと思います。少し苦手な相手でも、コミュニケーションの取り方を勉強すれば、すごく心が楽になりますよ。
それでも、やっぱりうまくいかない!!ということであれば、環境を変えることも考えましょう。これは逃げではありません。
他人と過去は変えられません。自分の人生を自分自身の手で良くしていこうという姿勢を持ってください。心から応援しています!」(岩井さん)
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