西オーストラリア・パース在住13年、パース市内の公立病院一般内科勤務歴12年目の現役ナースKayが日本の看護事情と比較しながら、自らの体験も踏まえたオーストラリアの看護事情をお届けしています。
病院で治療を受けている患者さん達には元気になって退院していく患者さんもいれば、そうでない方もたくさんいらっしゃいますね。
オーストラリアの病院では入院中に患者さんの状態、基礎疾患、既往歴、年齢や疾患の進行程度、治療の効果、病気の予後などを診て医師が「これ以上積極的な治療は効果ない」と診断した場合に患者本人(理解できる状態であれば)や家族と話し合い「緩和ケア」「終末期ケア」に切り替えられます。
オーストラリアの病院で働き始めた時に初めて「緩和ケア・終末期ケア」の患者さんを受け持った時、日本の看護と全く違っていたのでびっくりしました。
今回は終末期ケアで驚いたことについてご紹介します。
ビックリしたことは終末期のケアに切り替えられると、それ以降バイタル測定は中止になる事です。
日本みたいに心電図モニターやベッドサイドモニターが心臓が止まる瞬間まで付いていることもありません。
低い血圧を無理やり測ることもしません。
血糖値の測定も尿量の測定も全て中止になります。
すべて、患者さんの苦痛につながるからです。
観察することは、痛みの有無、吐き気の有無、せん妄状態や混乱状態の有無、痰がらみなどの有無、便秘の有無、皮膚や褥瘡の観察、その他の苦痛症状がないかの観察を行います。
今まで継続していた内服薬、抗生物質や水分補給の点滴もすべて中止になります。
留置針も抜かれます。
その代わり、観察した患者さんの苦痛症状を緩和する頓服薬はモルヒネなどの痛み止め安定剤、吐き気止め、去痰剤、緩下剤、鎮静剤など症状に応じて処方されます。
疼痛がひどい場合はモルヒネなどの持続皮下注射ポンプの処方がされ、それに加えて追加の痛み止めも使用し、患者さんの苦痛を最小限にするように努めます。
経鼻チューブからの酸素投与も持続可能ですが(あくまでも緩和目的の為の定量の酸素量です)、患者さんが嫌がれば酸素投与も止めます。
終末期ケアは苦痛緩和と同時にQOLの向上に努めることも大切ですね。
日本と同じだと思いますが、患者さんは食べられる状態であれば好きな物を食べることができます。
ビックリしたのは患者さんの希望があれば少量のアルコールの摂取も許可されることです。
その場合、医師が処方箋に「ビール1缶/1日」「ウィスキー20ml/1日3回まで」などと書き、アルコール類はナースステーションのカギのかかるロッカーで管理されます。
患者さんや家族が最期は家で看取りたいなどの希望があれば、訪問看護に切り替え退院ももちろん可能です。
その場合、ソーシャルワーカーが自宅で必要なサービスが受けられるように手続きをしてくれます。
筆者が今でも心に残っているのは「病棟で結婚式を挙げた患者さん」です。
花婿になる男性が癌の末期でしたかわいらしい花嫁さんはその日、病棟でウェディングドレスに身を包み、病棟スタッフの力を借りてスーツに着替えた花婿さんとベッドの上で親しい友達に囲まれて結婚式が行われました。
筆者は午後勤務だったので式は見ることはできませんでしたが、花嫁さんがナースステーションまで来て「ウェディングケーキを切ったからもらいに来てくださいね。」と言ってくれて、病室までケーキをいただきに伺いました。
疲れのせいもあってベッドの上で幸せそうに眠っている患者さんとそれをそばで見守る花嫁さん。
二人に残された時間はあまりにも短くて、胸が詰まる思いだったのを今でも覚えています。
このようなことも、めったにある事ではありませんがオーストラリアらしさなのかなとも思います。
驚くかもしれませんが、終末期ケアに切り替えられて全ての治療をストップしたら数日後に全身状態が回復したという患者さんもいらっしゃいます。
医師が診察し「治療の余地あり」と診断した場合は終末期ケアを中止し、また内服治療が始まり、バイタル測定も再開します。
いかがでしたでしょうか?
終末期ケアに切り替えられると全ての治療がストップし、苦痛緩和、QOLの向上に向けてケアが切り替えられる看護を見て、潔いなと感じました。
老衰などの場合、患者さんは食べられなくなったり、飲めなくなればそのまま衰弱して、草木が枯れるようにお亡くなりになります。
それが本来の人が亡くなるという姿なのかもしれませんね。
中には最後までなんとしてでも生きてほしいと切望家族もいらっしゃるのも事実です。
医師の診断と家族の希望の板挟みになる事も少なくはありません。
医療従事者も家族も患者さんの事を思っているからこそ、患者さんの最期をどうサポートしていくことがよいのか常に考えて看護をしていく事が大切なのかもしれませんね。
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