仕事看護師マガジン
2018.9.18
看護師が日常的に行うADL援助動作には、前傾姿勢や腰をひねる動作が数多くあり、看護師にとって腰痛は切っても切れない存在です。ボディメカニクスの知識はそんな看護師の身体的負担の軽減に役立ちます。
看護学校の座学で学んだけど実践で活かしきれていない方は、原理について再確認し腰痛を予防していきましょう!
ボディメカニクス(body mechanics)は「body=身体」「mechanics=機械学」を意味し、日本語では「身体力学」と訳されています。解剖学や生理学さらには物理学の分野における力学の基礎知識を活用しています。
ボディメカニクスの原理では人間が持っている運動機能を構成する関節、筋肉、骨、神経といった各器官の相互関係が考慮されています。原理を上手に活用することで日常の動作も無理なく効率的な動きが可能となります。
全職業的にも腰痛は職業性疾病の6割を占める労働災害です。腰痛発生頻度が高い職場に向け、厚生労働省では「職場における腰痛予防対策指針」を定めています。
その指針が2013年に改訂され、社会福祉施設や医療保健業などの保健衛生業も適用対象となりました。保健衛生業で発生する業務上疾病全体の約8割は腰痛で、看護職の5~7割が腰痛を抱えているとの調査結果もあります。
事業所に向けた指針の中にも腰痛リスクアセスメントの一つとして、作業姿勢、動作を見直す予防ボディメカニクスの教育や研修も取り入れるよう定められています。その結果、職場のみならず、看護学校でも看護師が自身の身体を守るため、ボディメカニクスの教育が進みました。
ボディメカニクスの原理について介護者向けですが、簡潔明瞭に紹介されている動画をご紹介します。学校で学んだボディメカニクスの記憶がよみがえるのではないでしょうか。
支持基底面積とは床に接地している両足を円を描くように結んだ面積を指します。両足を広く開き、その面積を広くすることで体が安定します。
重心を低くすることで姿勢を安定させることができ、大腿筋を使うことで倒れにくくなります。
作用点となる対象者と力点となる看護者の重心が近いと、より少ないエネルギーで動かすことができます。
小さな筋肉はすぐに疲労してしまうため、背筋や大腿筋など複数の大きな筋肉を使うことで筋肉にかかる負担を軽減します。
持ち上げる行為は重力に逆らいエネルギーを多く使います。水平移動は重力に逆らわない動きなので使うエネルギーが減り、体への負担も軽減することができます。
身体をひねると体が不安定になり、無理なエネルギーが筋肉や腰などに負担をかけます。上半身を固定し、看護者の重心移動で対象者を移動します。
対象者の腕を組んだり膝を立てて踵を臀部に近づけるなど身体を小さくまとめることで、対象者の接地面積を小さくすることができます。その結果、摩擦を減らして看護者の負担も軽減することができます。
対象者を仰臥位から座位に体位変換する際にテコの原理を利用することで力のエネルギーを減らすことができます。
医療の現場では看護師が自然とボディメカニクスを使っている場面は数多くあります。重症者(ほぼ寝たきり)の体位変換やオムツ交換、ベッドから車椅子への移乗やその逆も然り。他にも食事や排泄・入浴の介助といった動作にもボディメカニクスは使われています。
業務で日常的に行っている動作や姿勢を振り返ると、一つ一つがボディメカニクスと関りがあることに気付いたのではないでしょうか。これを機に、自身の日頃の動きが体に負担をかけていないか、見直してみましょう。
今後は介護ロボットや福祉用具など、看護・介護に直接関わる人たちの身体的負担を軽減するための抜本的な対策進んでいくでしょう。しかし当面は、自分たちの身体は自分で守る必要があります。そのためにもボディメカニクスの原理を理解することが大切です。そして繰り返し実践しながら身体で習得し、様々な場面で応用できるようにしていきましょう。
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