前回の結婚編に引き続き、第4回は出産編。
看護師の「出産」をテーマにお話を伺います。
近ごろの看護師の出産事情をまじえながら、
出産にかかる費用や手当て、
準備しておくと良いことなどについて、
看護師の職場事情やライフプランをよく知る
岩井さんにインタビュー。
岩井さんのお話から、看護師が妊娠・出産する上で、自身の健康や職場環境、お金で困らないために大切なポイントが見えてきました。
編集部:まず一般的に出産はどのくらいの費用がかかりますか?
岩井さん:医療機関や地域によっても異なりますが、
40万~50万円代が出産(分娩・入院)費用の相場です。
このほかには、
妊娠中の健診費用(約13~15回、1回の健診約5000~1万円程度)や
ベビー用品、内祝いなどがまとまった出費ですね。注意が必要なのは、健診も分娩も病気ではないので
「健康保険が適用されない」という点です。
とはいえ、
健診は各自治体で妊娠健診の補助券が発行されますし、
出産時に健康保険組合から
「出産育児一時金」として一律42万円が支払われます。ほとんどの場合、
病院の会計で既に適用され差し引かれているので、
実質42万円から上回った分のみ出産費用として支払うことになります。つまり出産費用が50万円だとしたら、
そこから42万円を引いた8万円が退院時に支払う金額になります。〈妊娠・出産時の出費と補助金〉
※金額は状況によって異なります。
※2) 1回5000円~15000円とし、平均1万円?出産まで約14回で計算。
※3) 妊娠が確定して役所に妊娠届を申請すると、母子手帳と妊婦健診で使える補助券が配布されます。例えば東京都では補助券14回分を受け取ることができます。内容は各自治体で異なります。編集部:「出産育児一時金」は心強いですね。
では看護師の産休中の収入はどうなるのでしょうか?岩井さん:有給扱いになるようなまれな職場を除いて給与の支給はありませんが、
健康保険に加入していれば2ヶ月に一度育児手当が支給されます。
支給額は自身の収入の70%ほどで、支給期間は1年です。さらにその期間は社会保障費が免除になるので、
働いているときと比べてもそこまで大きな減収とはならないですね。
〈産休前・産休後の収入変化〉
例えば、額面給与が30万円の場合、
ポイント
①育児手当は産休前給与額面の約70%ですが、育休中は社会保障費が免除されるので、実質的な手取り は産休・育休前とほとんど変わらないこともあります。
②支給は月単位で計算はされますが、実際の支給(振込)は2ヶ月に1回。2ヶ月分まとめて支給されます。
※上記はあくまで一例です。給与、比率、社会保障費は個人によって異なります。
編集部:では産休中に貯蓄をすることも難しくはなさそうですね。
岩井さん:そうですね。
産休中も収入が大きく変わらないのと、
育児期間中は家にいることが多くなり出費の機会が減るため、
産休中も貯金は十分可能です。ご主人の給料だけで生計を立てて、育児手当は貯金するという人もいます。
やりくり上手な人だと、
月に20万円ずつ貯金に回し年間200万円以上貯める人もいますよ。
ただ、手当は産休に入ってすぐには支払われないということと、
手当の支払いは2ヶ月に1回なので注意してください。
編集部:妊娠を考えている看護師が事前にできることはありますか?
岩井さん:そうですね。
まずは、現在の職場が育児に理解があるかどうかの判断が大切です。看護師の職場環境は非常に特殊です。
時間外労働が多い、先輩ママ看護師が少ない、激務である、
そんな環境では妊娠中も産後も働きづらいですよね。会社勤めの女性と比べても働きやすさを細かく気にする看護師は多いです。
編集部:近い将来の妊娠を視野に入れて、働く病院を決める人もいらっしゃいますか?
岩井さん:結婚や妊娠を想定して病院を変える看護師は多いです。
産休育休の取得しやすさはもちろん、
職場復帰がしやすい病院を選ぶ傾向にあります。
結婚妊娠が今すぐというわけではない人でも、
「時短勤務ができる」
「外来勤務を選択できる」
「ママさん看護師が多い」
といった条件で転職する方は結構いますよ。編集部:事前にしっかり考えているのですね。
岩井さん:それほど看護師の仕事は大変だということです。
先輩ママのナースがほとんどいない病院であれば、
残業せずに帰ることに罪悪感を覚えてしまうと思います。
みなさん、ライフイベントの変化に応じて
働きやすい職場を自然と選んでいるようです。
編集部:看護師自身が出産するための「病院選び」に最近の傾向はありますか?
岩井さん:基本的には自宅、または実家近くの病院を選ぶ人が多いです。
通いやすさ、緊急時にすぐに受診できる距離を考慮して病院を選んでいますね。
あとは、
「無痛分娩に対応しているか」
「自身の望むバースプランが叶うかどうか」など
ご自身の基準を大切にする方もいます。
オプションとして、個室や出産後もそのまま家族がステイできる病院もありますね。
編集部:看護師だけに、大きな病院じゃないと不安と感じる人も多いのではないですか。
岩井さん:大きな病院を選ぶ理由には、
初産の平均年齢が上がっていることもありますね。
出産に伴うリスクを回避するために総合病院を選ぶ方の割合は多いかもしれません。
妊娠に向けて総合病院で不妊治療をしている場合もあるので、「その病院で出産も」となるようですね。
編集部:過酷な労働環境というイメージが強い看護師ですが、妊娠中はどうですか。
職場環境や仕事量、同僚の気遣いなど、変化はありますか?
岩井さん:実は普段とあまり変わらないです。
出勤時間をずらしても良いとか、
体調が優れなければ休んで良いとか、
勤務スタイルに融通が利くところは少ないです。
基本的にどの病院も人手が足りないので、
妊娠前と同じように働く看護師は珍しくありません。
配慮したいものの現状難しいというのが病院の実状です。
編集部:現在の勤務先で働き方を変えるのは難しいのでしょうか?
岩井さん:看護の現場は常に人手不足です。
基本的には出産2ヶ月前から産休に入れるのですが、ギリギリまで働かなければいけない状況が多いですね。
勤務先がどれだけ妊娠や育児に理解があるかにもよりますが、環境改善が難しい病院は少なくないですね。編集部:医療の現場は厳しいですね。
そうなると妊婦さんの体が心配ですね。
岩井さん:そうですね。
妊娠中の労働環境から切迫早産や流産といった悲しい話はよく耳にします。切迫早産で帝王切開になるケースもありますね。
また、母子の健康はもちろん心配ですが、
手術や長い入院となると自然分娩に比べて費用も心配になります。手術や妊娠中の入院に備えて妊娠中でも入ることのできる保険に加入していれば、帝王切開になった場合も安心です。
ただし、帝王切開といった異常分娩や高血圧症候群など妊娠出産時に生じたトラブルは、入院歴・既往歴として残ってしまいます。
その後の保険加入や保険の見直しの際に、加入できるプランに制限がかかってしまうこともありますので、マイナス面もしっかり考慮して後悔のないように今一度見直してほしいです。編集部:なるほど、保険を使うメリットとデメリットがあるのですね。
岩井さん:そうですね。
保険は出産トラブルが起きたときのサポートですが、
まずは起きないように、
妊娠中の勤務でも耐えられる職場かどうかきちんと見極めたいですね。
編集部:妊娠を考えている方やこれから出産準備に入る方にメッセージをお願いします。
岩井さん:まずは安全に出産を迎えられるように、
事前の準備とその後の育児について、人生設計をしっかり考えてほしいですね。また、よく皆さんにお話させていただくのですが、
人生には貯金できる時期が3回※あるんです。
その時期のひとつが出産後から子どもが小学校に上がるまでの期間です。
子どもができると生活スタイルや貯金の仕方・目的は変わります。
産後の育児に追われる前に、
お子さんの夢を描きつつ、お金の計画もパートナーとしっかり話し合ってくださいね。※1回目は独身時代。2回目は産後から子どもが小学校に上がるまで。3回目は子どもの学業終了から夫婦の定年まで。
プロフィール
岩井 裕太郎(いわい ゆうたろう)
看護師専門のトータル・ライフ・コンサルタントとして数々の看護師のマネープラン、ライフプランの相談に乗ってきた。全国の医療機関などで看護師向けのセミナーも多数開催。メンタルケア心理士(R)の資格も持ち、メンタルケアのプロとしてアドバイザーも務める。
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