看護師マガジン
2019.10.16
オペナースにとって、デビュー戦は忘れられないものです。
緊張と不安でいっぱいの独り立ち。
今回は、オペナースの私が初めて直接介助で独り立ちしたときの思い出を振り返ります。
私のデビュー戦は、ドクターヘリで来た外科開腹手術でした。
緊急を要する患者さまは、ヘリから直接手術室に運ぶことがあります。ヘリからの連絡を受けて手術室内がざわざわし始めたことを覚えています。
でも、当時私は新人ナース。
正直「関係ないや」なんて思いながら脇目で先輩たちが準備するのを見ていました。
すると、主任から「外科開腹術、3回は先輩と一緒に手洗い経験してるよね?独り立ちしましょう。直接介助に付いてください」と声を掛けられました。
直接介助を依頼された瞬間から、頭は真っ白。
「やっとやらせてもらえる!」という嬉しさが少しと、
「ここで失敗したらチャンスがない」「一人でなんてできるの?断ろうか…」など、さまざまな感情が渦巻きます。
とにかく私は、「わかりました」と返事をしてメモ帳を開いて準備をしようと試みますが、動揺して字が読めません。まさに心臓が口から飛び出そうなほど緊張していました。
見かねた先輩から「もう患者さまが到着されるから手を洗いなさい!」と言われ、ろくに準備もせずに手洗いへ。代わりに先輩たちが器械や衛生材料を準備してくれました。
しかし、カウント中に患者さまは到着。あっという間に手術準備が終わっていました。
私の方は、ガーゼも器械もカウントが間に合わず。
体内残存や患者さまの安全を守るため、ガーゼと器械の定数確認、器械の動作チェックを済ませなければ、直接介助看護師は手術室内に入室できない(手術で使用できない)ことになっています。
不安と緊張で手が震えて、何度数えてもガーゼや器械の数が合わない。
一方、外科の先生方はどんどんドレーピングをして、電気メス、鑷子、ガーゼを持って、なんと器械が入室する前にメスなしで執刀を始めたのです!
器械出しナースと手術器具を置いて先に執刀?!なんてことがあっていいのか!!
先輩方が陰で何人もフォローしてくれたからこそ安全に成り立つことですが、私は逃げ出したい気持ちで泣きそうでした。誰も助けてくれない!
しかし、不思議なことにこの辺りで、諦めのような気持ちが出てきて、
「全然ダメダメだ。でも今はやるしかない」という気持ちが少し湧いてきたことを覚えています。
なんとかカウントを終えて、入室。既に、患者さまの腹部はぱっくり開腹されてレトラクターをかける手前でした。先輩方にフォローされながら速やかに立ち位置に立ちました。
「すみません」と謝ると、「先に開けさせてもらいました」と執刀医の先生。その時私は、「いや、まだ私がやらせてもらえるのか!!本当にやるしかない!」と心が決まりました。
しかし、必死で付いていこうとするも、器械台の器械やガーゼはぐちゃぐちゃ。見かねた先輩が手を洗い、手助けしてくれました。でも、私はもう頭が真っ白になることはなく、必死で介助を続けたことを覚えています。
とにかく私にとっては壮絶な独り立ちでした。手術は無事終了しました。
「私はクビか」ななんて思いながら、片付けをしていると、執刀医の先生が「今日初めてやったやろ?僕らはあるもんでやるから大丈夫です」とまさかのコメント。
主任からは「メスなしで執刀させたんだって?」と声をかけてもらい、初めての1日が終わりました。
でも、今ではあの日に手術に入れてもらえて本当に感謝しています。もちろん、患者さまは実験台ではありません。しかし、誰でも初めての症例はあるわけです。先輩方や医師が手厚くフォローできる環境だったからこそできた経験です。
いざという時の気持ちの切り替え方、困難な相手への立ち向かい方、患者さまとその命との向き合い方など手術に携わる看護師としての心構えを全て教えてもらえたように思います。
また、先輩方にフォローされながらでも、ダメダメでも、投げ出さずにずっと立ち続けたということが少なからず自信になったと思います。
あの日があったからこそ、私は手術チームの一員として全力で患者さまと向き合っていけるんだと思います。
Writer…suke
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