看護師の方のなかには、保健師に興味がある方もいるのではないでしょうか。また、看護師と保健師、両方の資格取得を目指している人もいるでしょう。保健師になるには、看護師資格が必須です。このコラムでは、看護師資格を持っている場合といない場合に分けて保健師資格の取得方法を掲載。また、仕事内容や給料、保健師として働くメリットをご紹介します。
保健師は年齢や性別に関係なく、個人の心と身体の健康管理や保健指導を行うことが主な仕事です。国家資格のため、国家試験に合格した人だけが保健師として働くことができます。
看護師と保健師は異なる資格です。看護師のなかにはキャリアアップのために保健師資格の取得を目指す人もいます。看護師と保健師の違いを見てみましょう。
看護師は看護師国家試験、保健師は保健師国家試験を受験して合格する必要があります。保健師になるには看護師資格を保有していることが条件です。そのため、保健師は看護師の上位資格だといえます。
看護師は、けがをした人や病気にかかった人の治療の補助や療養上の世話などを行います。一方、保健師は地域の自治体や病院、企業などで健康診断や健康相談を行うことで、個人が病気になったりけがをしたりするのを防ぐのが仕事です。
つまり、看護師はけが人や病人を治すことが目的であるのに対し、保健師はけがや病気を予防することが目的であるという大きな違いがあります。
保健師には大きく分けて「行政保健師」「産業保健師」「病院保健師」「学校保健師」の4つがあります。それぞれの仕事内容を見ていきましょう。
都道府県や市区町村の保健所、保健センターで働いている保健師は、基本的に公務員である「行政保健師」です。都道府県や市区町村の保健所で働く保健師は約3万9,000人で、全体の約74%を占めています。
行政保健師の主な仕事は、年齢や性別、健康状態に関係なく地域住民の健康な生活をサポートすることです。地域住民の健康相談や保健指導、母子の健康管理を行います。また、感染症対策や難病の対応を行うことも。さらに、身体の健康管理だけでなく、うつ病や依存症といった精神面の相談や虐待対応、支援をしています。
産業保健師は民間の企業に籍を置き、社員の健康維持や増進を目的としたさまざまな活動を行っています。企業などを含めた事業所で働いている保健師は約3,300人で、全体の約6.3%です。
厚生労働省が発表した「平成30年労働安全衛生調査」によると、仕事や職業生活に対して強いストレスを感じていると答えた労働者の割合は58%。そのため、企業で働く社員の心の健康を守る対策がさまざまな業界で課題になっているようです。
産業保健師は、基本的に企業内に設けられた医務室に常駐しています。産業医と協力し、社員の健康管理や維持を目的とした、心身の不安や悩みに対する相談を受け付けることが仕事です。また、健康診断結果のデータ整理や分析、社員に対する保健指導を行います。職場の過重労働対策やメンタルヘルス対策、疾病による休職者との面談なども業務の一環です。
産業保健師には、社員の健康管理を適切に行うことで病気による休職者や退職者を減らし、結果的に企業の利益に結びつける役割が求められています。
病院保健師は、病院に籍を置いて活動しています。病院や診療所、訪問看護ステーションといった医療機関で働いている保健師は約5,600人で、全体の約10%です。健康診断や保健指導を行い、勤務先の患者やその家族、スタッフの健康を管理します。また、入院可否のトリアージや処遇決定、治療計画立案といった業務を担い、インフォームド・コンセントの記録を担当することも。入院患者が退院できるようになるまでの支援を行います。看護師の仕事とはまったく内容が異なるため、服装も区別しているのが一般的です。
病院保健師は、主に規模の大きい病院や精神科のある病院などで採用されています。
学校保健師の仕事は、学校の保健室に常駐し、生徒や教職員の健康管理や生活習慣の指導を行うことです。また、けがや病気の生徒がいれば応急処置にも対応します。インフルエンザの流行時期には、感染予防対策として手洗いやうがいの指導をはじめ、生徒や教職員に対する生活習慣の指導などを実施することも。
近年は学校内でのメンタルケアにも注目が集まっており、進路や友だち付き合いの悩み相談のほか、教職員に対しても生徒と同じような対応が行われています。
学校保健師は養護教諭と似ているようで、まったく異なる職種です。養護教諭は看護師免許や保健師免許ではなく、養護教諭一種免許または二種免許を取得した教師として働いています。養護教諭は教育を目的とした活動を行っており、学校保健師は健康維持や増進、予防対策などが専門分野です。
出典:厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
保健師になるには看護師と保健師、両方の国家試験に合格する必要があります。学校によっては、看護師と保健師のダブル受験ができるカリキュラムが組まれているところも。看護師資格を保有している場合としていない場合、それぞれの保健師になる方法をご紹介します。
看護師資格をすでに保有している場合には、保健師養成課程の専攻科を持つ短大か保健師養成学校に1年通い、保健師の国家試験を受験します。
看護師資格を保有していない場合には、4年制大学か専門学校の看護学部で保健師コースを選択するか、看護師と保健師の統合カリキュラムがあるところを卒業しましょう。看護師と保健師、両方の受験資格を得られるため、ダブル受験が可能になります。
なお、看護師試験が不合格だった場合は、保健師試験に合格しても免許を得ることはできません。翌年以降に看護師国家試験を受け直し、合格する必要があります。看護師資格を取得することで、保健師免許の申請が可能です。
令和2年の保健師国家試験の受験者数は8,233人でした。そのうちの合格者数は7,537人で、合格率は91.5%です。また、平成31年の試験では合格率は81.8%、平成30年は81.4%となっています。
平成30年から令和2年にかけての看護師国家試験の合格率は90%前後、助産師国家試験の合格率は99%前後です。そのため、保健師の難易度は比較的高いといえます。
出典:厚生労働省「第106回保健師国家試験の合格発表」
行政保健師は公務員です。そのため、保健師国家試験以外に公務員試験にも合格しなくてはなりません。公務員試験では主に筆記試験と面接試験、小論文、保健師専門分野の試験があります。公務員試験が行われるのは、自治体によって異なりますが大体8~9月頃です。看護師と保健師の試験は2月に行われるので、時期が被ることはありませんが過密スケジュールとなることが予想されます。そのため、早めに勉強を始めると良いでしょう。
総務省の発表によると、公務員である行政保健師の平均月給は約32.7万円です。過去の公務員のボーナス実績から賞与額を月給4.45ヶ月分として計算すると、平均年収は約537.5万円と予想されます。
出典:総務省「平成30年地方公務員給与実態調査結果の状況」
保健師として働くメリットは、治療にだけ携わる看護師と異なり、予防分野にも関われるため、業務の領域が広がる点です。また、保健師は保健所だけでなく、企業や学校など自分が関わっていきたい分野で活動ができます。たとえば、若い世代のメンタルヘルスケアを担当したいのであれば学校保健師に、働く人たちの健康維持に貢献したいのであれば産業保健師になることが可能です。さらに、公務員として働く行政保健師や教育関連の学校保健師、大手民間企業の産業保健師などは、働きやすい環境が整っているため、安定して仕事が続けられるでしょう。
近年、生活習慣病やアルコール依存症の増加、高齢化などにより医療現場の圧迫が懸念されているため、予防医療への関心が高まっています。さらに、2020年にはOVID-19の蔓延により感染予防対策が重要視され、公衆衛生活動といった保健師が活躍する機会が増加。また、仕事のストレスや学校でのいじめなどによる精神疾患に対する意識が高くなり、メンタルヘルスケアに注目が集まっています。そのため、今後さらに保健師の活躍の場は増えていくといえるでしょう。
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