被災地で活躍する看護師の姿を見て、かっこいいと感じたことはないでしょうか。目にしたことをきっかけに、看護師を目指す人もいるかもしれません。しかし、どうすれば被災地で看護活動ができるか分からないという方もいるでしょう。
このコラムでは、災害看護の目的から、実際に現場で活躍できるようになる方法まで解説。災害看護専門看護師についてもまとめています。
災害看護とは、災害が発生した際に求められる看護で、人々の健康や命を災害から守る看護活動です。災害発生直後から知識や技術を駆使し、他分野の専門家たちと協力して業務を遂行していきます。そのため、通常の看護とは異なり、人手や物資が不足している中で、移り変わる災害状況に対応していく必要があります。
「災害支援ナース」とは、大規模な自然災害が発生した際、日本看護協会により組織・派遣されるものです。「災害支援ナース」のメンバーは、各都道府県の看護協会に登録されています。日本看護協会が現地の被害状況に関する情報を集め、各都道府県の看護協会が看護師の派遣調整を行うシステムです。
災害発生時にはすぐに被災地へ駆けつけて、救急対応できる体制を整えているのです。
【これまでに「災害支援ナース」が派遣されたおもな自然災害】
2000年*有珠山噴火災害(北海道):北海道看護協会から災害支援ナース派遣
2000年*三宅島地震・噴火(東京都):東京都看護協会から災害支援ナース派遣
2004年*新潟中越地震(新潟県):災害支援ナース派遣調整、こころのケアワークショップ開催支援など
2011年*東日本大震災(東北、関東地方):40都道府県看護協会から災害支援ナース派遣。岩手県、宮城県、福島県への避難所・医療施設へ938人、延べ3,770人派遣
2012年*九州北部豪雨(福岡県、大分県、熊本県):熊本県看護協会から災害支援ナース派遣
2014年*8月豪雨(広島県):広島県看護協会から災害支援ナース派遣
2015年*9月関東・東北豪雨(関東、東北地方):7都県看護協会から災害支援ナース派遣。茨城県内の避難所へ延べ488人派遣、および茨城県看護協会から避難所・医療機関等への派遣
2016年*熊本地震(熊本県):15都道府県看護協会から熊本県の避難所など計28ヵ所へ1,961人派遣
2017年*九州北部豪雨(福岡県、大分県):大分看護協会と福岡看護協会から災害支援ナース派遣(大分県13人、延べ39人。福岡県75人、延べ225人。)
2018年*西日本豪雨(岡山県、広島県、愛媛県):3都府県看護協会から岡山県内へ災害支援ナース派遣(延べ152人)、および岡山県看護協会が派遣(延べ262人)。3都道府県看護協会から広島県内へ災害支援ナース派遣(延べ184人)、および広島県看護協会が派遣(延べ519人)。愛媛県看護協会が災害支援ナース県内派遣(延べ310人)
2018年*北海道胆振東部地震(北海道):北海道看護協会から災害支援ナースを道内派遣(延べ248人)
災害看護専門看護師とは、災害看護分野において卓越した看護実績能力を有することが認められた者を指します。
災害看護の専門的な知識と技術を持つ看護師を育成するため、災害看護専門看護師が2017年度に設けられました。ここでは、この災害看護専門看護師について詳しく解説します。
1995年に起きた阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などを機に、災害時における看護対応の重要性が注目されるようになりました。これを受け、1998年に設立されたのが日本災害看護学会です。
世界中における震度6以上の地震は、約2割が日本で発生。また、台風災害や火山噴火、大雨による堤防決壊など、深刻な自然災害が毎年のように発生しています。このような状況をふまえ、災害看護の分野で経験を体系的に活かしていくための制度策定が進められ、2017年に災害看護専門看護師制度が発足しました。
参照元
一般財法人国土技術研究センター
「国土を知る / 意外と知らない日本の国土」
災害看護専門看護師が活躍する環境には、日本赤十字社による災害救護活動や日本看護協会による災害支援ナース、そして、災害派遣医療チーム(DMAT)などが挙げられるでしょう。災害が発生した場合は災害看護専門看護師が速やかに現場入りし、被災地での救護活動や急を要するケガ人への看護対応などを実施します。
災害看護専門看護師は災害時の看護だけでなく、災害を想定した減災の取り組みも行っています。
災害を想定した病院内での避難訓練や避難マニュアルの作成、災害時における地域での協力体制の確立、被災者の生活環境の整備や長期的なサポート活動を可能にする準備など。これらも、災害看護専門看護師の役割です。
災害発生時には、さまざまな分野の専門家と連携しながら被災者支援を行っていく必要があります。そのため、災害看護専門看護師には高い専門知識やリーダーシップだけでなく、機動的に組織を形成するための調整能力やコミュニケーション能力なども求められるのです。
災害専門看護師の役割は、「災害サイクル」というものによって変化します。ここでは、災害サイクルの期間ごとに、災害看護専門看護師の看護内容を見てみましょう。
※災害の規模や種類、状況によってサイクル期間は変動します。
初期体制づくりを実施し組織化の形成、指揮命令系統の確立を図り、不足している人手・物資の状況下で看護できるように支援します。
・自身、周りの人の安全確保
・ライフラインの確認
・救護活動、応急処置
・トリアージ、初期体制づくり
確立された指揮命令系統の下、二次災害への拡大を防止するための安全管理や感染症対策などを実施します。
・被災者の援助
・保健と防疫
・被災地の保全
・急性、慢性疾患看護
・巡回診療、感染症対策
・生活指導、心のケア
継続する看護活動、終了する看護活動を見極めて自立支援を行い、平常時に向けた看護活動を実施します。
・リハビリテーション看護
・被災者の福祉、生活指導
・自立支援
・長期的な心のケア
・被災地の復興
災害に備えて防災訓練や地域ネットワーク作りをし、食糧や備品、医療機器・材料、医薬品の点検と整備などを実施します。
・災害予防(防災予防、減災対策)
・救護組織、物品準備
・ネットワーク作り
ここでは、災害看護専門看護師なるための方法をご紹介します。災害看護専門看護師資格を取得するには、通算5年以上の実務経験(うち3年間以上は専門看護分野の実務経験)など、いくつかの条件が求められるので注意しましょう。
・日本国の看護師の免許を有すること
・看護系大学院修士課程修了者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程において26単位または38単位を履修した者
・通算5年以上の実務経験(うち3年間以上は専門看護分野の実務研修をしている)を持つ者
※ここでの専門看護は、災害看護とします
(1)専門看護分野における、個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践
(2)専門看護分野における、看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション
(3)専門看護分野における、必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション
(4)専門看護分野における、個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整
(5)専門看護分野における、ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能
(6)専門看護分野において、専門知識及び技術の向上及び開発をはかるための実践の場における研究活動
これらの実務研修を3年間以上経験しておく必要があります。また、実務研修におけるフィールドは以下のとおりです。
災害看護での実務研修におけるフィールドは、「市街急性期から中長期、備えの時期における個人、家族、集団に対する災害看護の実務研修」です。
一次試験は書類審査、二次試験は筆記試験(論述式)です。筆記試験(事例問題と総合問題)の制限時間は120分。認定審査は年に1回10月末から11月上旬に実施されます。願書の受付開始は7月中旬となり、試験に合格すれば専門看護師認定証交付・登録です。
災害看護専門看護師資格は、看護師のレベルを維持するため5年ごとに更新が必要です。過去5年間の看護実践の実績と研修実績、研究業績などの書類審査によって更新の審査を行います。
2017年度に設けられた「災害看護」という専門看護分野。ほかの専門看護分野と比べると、教育課程のカリキュラムが導入されている機関が3機関と少ないのが現状です。以下で紹介します。
2020年時点で、日本看護系大学協議会が認定している災害看護専門看護師の教育機関は以下の大学です。教育課程を履修して認定審査を受けることで資格が得られます。
・日本赤十字看護大学大学院(26or38単位)
・福井大学大学院(38単位)
・日本赤十字広島看護大学大学院(26or38単位)
なお、教育機関は年度によって変更される可能性があります。災害看護専門看護師を目指す方は、教育機関の場所や教育課程の実施状況をよく確認しておきましょう。
災害発生時の実践分野だけでなく、教育の分野でも災害看護専門看護師の活躍する場が広がっています。災害看護専門看護師制度を設けた目的は2つあり、1つは災害発生時の被災者ケアにリーダーシップを発揮できる、高い能力のある看護師があたれるようにすること。そして2つ目は、災害研究や教育の場で活躍できる看護師を養成することです。
専門看護師は災害発生時の実践対応だけでなく、そこで生じるさまざまな課題について研究してエビデンスを確立していくことと、それらを次世代へ引き継いで活かしていくという大きな役割を担う仕事です。
災害看護専門看護師に向いている人の特徴を紹介します。「災害看護専門看護師を目指そうか迷っている」という方は、適性の有無を確認してみましょう。
刻々と状況が変化する災害現場では、冷静な判断が必要です。特に災害発生直後はトリアージ(患者の重症度を判断し優先度を選別すること)を行うため、情に流されすぎない客観的な決断を下せる人が向いているといえるでしょう。
災害現場ではさまざまな所属や分野の人々が存在しているため、他の医療スタッフと連携をとって医療行為を円滑に進められる人が向いているといえるでしょう。
災害看護専門看護師には、ほかの医療スタッフの人員采配をする役割があります。その際、誰を・どこに・どのような役割分担で配置するかを考えて決めていきます。そのため、状況を俯瞰しながら指揮をとれる人が向いているといえるでしょう。
いつどこで災害が発生するかは誰にもわかりません。だからこそ、日頃から意識をもって行動できる人が向いているといえるでしょう。医療機器の整備はもちろんですが、災害を意識した看護師の教育も対策のひとつです。
災害看護専門看護師のメリットは、経験値を培うことができる点といえるでしょう。病棟勤務では得られない知識やノウハウ、人との横の繋がりが持てることがあるようです。それでは、以下をみていきましょう。
災害看護専門看護師の最大のメリットは、災害についての専門的な知識だけでなく、被災者への看護対応など被災時に役立つ看護知識や看護技術が身につくことです。自然災害はもちろん、テロなどの人的な災害にも応用できます。身近に災害が発生した際にも、自分や家族、近隣の人たちへの適切な対応が行えるので、とても役立つ資格です。
災害看護専門看護師は、災害時に機敏な看護対応が行えるだけでなく、自然災害を想定した訓練や準備についての知識も養うことができます。そのため、自治体などでセミナーや研修会を開いて講師を務めたり、減災に取り組む活動のリーダー役を務めたりするなど、看護活動以外でも活躍する場が広がるでしょう。
災害支援は災害救助に関わる専門家や地方自治体、NPO法人など、さまざまな分野の人たちと連携しながら行います。そのため、災害看護専門看護師になると、さまざまな分野のエキスパートと協働することで幅広い人脈が得られます。
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