看護職の採用試験では小論文を就職試験で出題されることがあります。小論文に苦手意識のある方や、実際に書けない方も少なくないでしょう。そこで、このコラムでは基本的な文章の書き方から小論文試験のルールなど、看護職の小論文試験についてご紹介。看護への関心と基礎知識、コミュニケーション力があれば、出題の狙いや対策もわかってきます。よく出るテーマもまとめていますので、ぜひご一読ください。
事業所が小論文を試験に取り入れる理由の一つは、求職者の人柄や看護観を把握したいから。対策の一環として、看護の小論文試験で何を見られるかを理解しましょう。
小論文を行う目的に、事業所が求職者の看護観や知識の深さを知りたいというものがあります。看護職は人間関係が大切になる仕事です。適切な看護観を持たなかったり、やる気のなかったりする人物を小論文で振り分けます。また、小論文には明記されない評価基準があり、それらを把握できているかも含め、出題者は求職者の能力を見るのです。
小論文では、課題を読み取る能力や言葉遣いからコミュニケーション能力を測ります。患者や職場の同僚とスムーズな意思疎通ができるかを見るのです。コミュニケーション能力は患者の要望に応える力や看護師同士の伝達ミスを防ぐ力となります。必要な言葉で論理立てて意見を言えるかを見て、その能力を確認するのです。
小論文では主に「テーマが理解できているか」「自分の意見をはっきり述べているか」「説明に根拠があるか」「文章の書き方のルールに従っているか」を評価されます。
テーマや問題文の中から求められる回答の方向性を把握できるかを見ます。重要な部分を理解し、どんな理論を展開するかで、話を読み取る力や看護観を見るのです。例えば、「2020年時点の医療問題に関して自分の意見を論じなさい」とテーマが出た場合。医療関連や看護観に関するテーマは、知識や意識の深さを問われていると考えましょう。そのうえで、テーマに対する自分の意見を表明します。
看護の小論文では、この事業所を希望するあなたが、看護師としてどのような意見を持っているかを評価されます。テーマに対して具体的な自身の経験や学びを自分の意見に反映させ、説得力を持たせましょう。ただし、法令違反を推奨するなどの反社会的な意見や道徳に欠けた意見は、応募者へのマイナスなイメージに繋がります。読み手からの印象も悪くなるため、記載は避けましょう。
自身の経験や知識、問題文中の資料やデータを使い、説得力のある説明ができるかを見ます。説明の前後が主観的になっていないか、客観視されたデータを扱えるかが重要になる評価項目です。また、医療や看護に関する基礎知識や問題意識も必要です。看護のニュースをインターネットやテレビで見かけたら、積極的に調べましょう。問題中に資料やデータがある場合は優先して使います。
小論文の中に誤字脱字や単語の誤用がないかを見ます。小論文は基本的に手書きのため、普段パソコンやスマートフォンに慣れていると誤字脱字で失点することも。試験を受ける前に、辞書がない状態で過去に習った漢字が書けるか確認しましょう。読み間違い、送り仮名にも注意が必要です。どうしても漢字がわからない場合はひらがなで書くか、別の簡単な表現に変えます。
ここでは小論文のための文章の書き方についておさらいします。カギカッコの使い方や語尾の統一など、当たり前だと思っていてもつい忘れがちな点をおさらいしておきましょう。
小論文では、書き言葉を優先して使います。略語や俗語も避けましょう。ここでは小論文を書くときの言葉の使い方について説明します。
小論文は書き言葉で回答します。主な理由は、文法のまとまりがよく主張が分かりやすい書き言葉のほうが読み手に与える印象が良いため。「ら抜き言葉」や「い抜き言葉」を代表とする話し言葉を使わない意識が必要です。ビジネス文章や目上の方へのメールなど、話し言葉を使わない場面をイメージして書きましょう。
場合により「だから」や「1番」といった単語も話し言葉に扱われるので、「そのため」や「最も」と書き言葉に直します。事前に話し言葉を書き言葉に直した例を調べるのも良いでしょう。
擬音や略語をはじめとしたカタカナ語や、アルファベット略語は避けましょう。できるだけ漢字表現や正式名称に変換します。例えば小論文で「ケアマネージャー」と書きたい場合、正式名称の「介護支援専門員」と書きましょう。同様に「コンビニ」は「コンビニエンスストア」と正式名で書きます。アルファベット略語の一例では「ALS」を「筋萎縮性側索硬化症」のように書きましょう。略称が一般的でも正式名称で表記します。
例外として、問題中にカタカナやアルファベットの名称・略称が表記されている場合はその表記を使っても問題ありません。また、ナースコールやスマートフォンなど、ほかの名称に変換できないものはカタカナのまま書きましょう。
俗語も使用を避けます。俗語とは、特定のコミュニティや世代間でのみ通じる言葉や、公的な場ではふさわしくない言い回しです。例として、怒りを表す「キレる」「むかつく」、インターネットスラングで笑いを意味する「草」など。不当に仕事をしない様子を指す「サボる」も俗語に入ります。日常生活に浸透しているため、書いた言葉が俗語だったということもあるので注意しましょう。
問題文での指定がない限り、一人称を「私」、語尾を「だ」「である」調にするのが原則です。原稿用紙で回答する場合はそれに準じた書き方を守る必要があるため、同時におさえておきましょう。
小論文での一人称は「私」で統一します。この一人称は文化庁発表の「これからの敬語」で定められた、男女共通の公的な場での一人称です。「自分」や「僕」などの一人称は個人間でのコミュニケーションの印象が強くなるため、試験という公的な場で書く小論文では「私」で統一します。
語尾も「~だ」「~である」調に統一しましょう。小論文では自分の意見を客観視して伝える必要があります。「~です」「~ます」調を使う小論文は出題者への敬意を示すことになり、客観視から遠くなるでしょう。そのため、自分の感情を語尾で表現しない簡潔な表現として「~だ」「~である」を採用するのです。
原稿用紙を書く際のルールとして、段落の最初のマスは必ず空けるというものがあります。自分の意志で次の行に移るときは、必ず行の先頭1マスを空け2マス目から書き始めましょう。
文章を書く際の慣例として、縦書き原稿は漢数字、横書き原稿は算用数字を使います。「千代田区」「千葉」などの地名や「一石二鳥」などの慣用句に含まれる漢数字はそのまま使いましょう。両方とも覚えておき、縦書きと横書きのどちらでも対応できるようにします。
文学作品で使われる倒置法などの表現は、自分の意見を述べる小論文では使いません。小論文では文学的な表現力より論理能力と説得力がメインです。文章全体の読みやすさを考えた言葉遣いを選びましょう。
「必ず必要」「まず初めに」などの、隣り合う単語の意味が重なる状態=重複表現は避けましょう。重複表現は話し言葉に近く、文章では読み手に違和感を持たせる可能性があります。重複表現はどちらかの単語を採用すれば文章が成立するケースが多く、字数の節約にも繋がります。こまめに重複表現の確認と修正はしておきましょう。
小論文で使える記号は限られています。使い方にもルールがありますので、改めて確認しましょう。
小論文で使われる主な記号は以下の4つです。
・カッコ開き(「)
・カッコ閉じ(」)
・句点(。)
・読点(、)
小論文ではこの4つ以外の記号の使用を避けましょう。小論文は意見を述べる文章であり、記号の多用は自分の主張を分かりにくくさせる可能性があります。
基本的にそれぞれの記号はほかの文字のマスの余白内には書かず、1マス使って書きます。ただし、カッコ閉じ・句点・読点が次の行頭に来てしまう場合、直前の行の欄外に書くか、その行最後の文字のマスにまとめて書きます。また、カッコ閉じと句点は1マスの中にまとめて書きます。
評価される小論文を書くポイントは、3つの工程への時間配分と小論文全体の字数です。
採点者は小論文を見て採点を行います。理論につながりがなかったり、原稿用紙をほとんど埋めていなかったりする小論文は評価されにくいでしょう。内容のある小論文を書くために、テーマの意図を把握し、構成を作ってから本文に着手します。以下で具体的なポイントを解説するので参考にしてみてください。
制限時間を60分と仮定すると、時間配分の目安はテーマ把握10分、構成10分、本文30分、確認と修正で10分です。制限時間が60分以外だった時は、本文が制限時間の半分、それ以外は制限時間の6分の1を使うと考えます。あくまで目安のため、テーマや原稿に書き込む速度で構成、確認の時間配分を調整しましょう。
テーマや問題文から出題者がどんな方向性の回答を求めているのかを理解します。実際の構成や本文に大きく影響する部分です。テーマが短い時もすぐ構成に入らず、知識や経験から出題者の意図を考えます。資料や文面が出された場合も時間を決め、そこからわかる事実を読み込みましょう。
本文の下書きである構成を作ります。小論文の構成は、3段構成を覚えておくと役立つでしょう。
3段構成とは、序論→本論→結論の順番で書く文章の作り方。序論で意見や主張を提示し、小論文内で自分がどんな意見を持っているかを表明します。次の本論で主張に対し経験や資料を使って証拠の提示と説明を行い、結論で全体のまとめをします。
構成を作るときは、提示した説明が主張と合致するかに気を付けます。ある程度まとまったら本文を書き始めましょう。
構成を元に、序論→本論→結論の順で本文を書きます。序論は短くして主張をわかりやすくまとめ、本論と結論で主張の説明や根拠を書きます。誤字脱字や提示した証拠が主張とつながってしいるかに注意しましょう。この段階では文章作成の速度で目安時間が大きく前後します。事前に練習としてよく出るテーマで小論文を書き、自分の速度を把握しましょう。
誤字脱字を含め、単語の誤用や言葉づかいの正しさなど細かい点での修正点を確認します。執筆中に文章として違和感のある部分を見つけたら、この段階で修正可能か考えましょう。
字数制限がある場合、その8割は必ず埋めるようにしましょう。事業所によっては字数の多さを評価している可能性があります。実際の字数が制限の半分以下だと、評価は大きく下がると考えましょう。字数制限はいくつかパターンがあります。「〇〇字以内」の場合は字数を超えると減点。「〇〇〇字程度」の場合は字数プラスマイナス10%が許容範囲です。制限内で話を要約する力も見られる場合があるため、主張と関係ない話で字数を増やすことも避けます。制限字数の8割で完成するよう、構成の段階で字数の目安をつけましょう。
小論文試験でよく出てくるテーマをリスト化しましたので、確認してみましょう。テーマに対して自分のしっかりとした意見を持ち、知識に基づいて小論文を書けるようにします。医療系のニュースなどにもアンテナを張っておきましょう。
・最近気になった医療問題
・医療ミスを無くすためにすべきこと
・看護師の倫理的問題について
・看護とマナーについて
・この病院であなたができること
・新型コロナウイルスに対してどう考えるか
受験者の看護に関する知識や価値観を問うテーマです。看護実務に関連した知識や、事業所にマッチした看護観を持っているかが問われます。
・あなたの看護観
・看護師を目指す理由
・いじめ問題についてどう思うか
・実習で何を学んだか
・将来どのようなキャリアを積みたいか
・あなたが今までで一番努力してきたこと
解答の方向性として、受験者自身の人生観やキャリアプランなどを見られるものです。こちらのテーマではより受験者の人間性を確かめられます。
以下で実際の小論文の書き方例をご紹介します。実際に小論文に挑戦するときや、小論文を練習するときの参考にしてみてください。
新型コロナウイルスによる誹謗中傷や職場の変化を理由に、看護師をはじめとした医療従事者の離職が増加している。私は同じ看護師たちの心に寄り添い、新型コロナウイルスに恐怖を抱く心情を理解し、行動している。
日本看護学会が2020年12月に公表したアンケートの結果では、新型コロナウイルスへの対応による環境変化・感染リスクを理由とした離職があった事業所は約2,800件のうち15.4%だという。また同アンケートでは約38,000人の看護職員を対象とした調査も行っており、コロナによる差別・偏見を「あった」と答えたのは約8000名。そのうち19.5%が自身に対して、27.6%が家族や親族が、周囲から心無い言葉を言われたと答えている。勤務先の同僚から心無い言葉を言われたという回答もあった。
報道を調べると、新型コロナウイルスをとりまく看護師の現状がわかる。ある病院に勤務していた看護師は、対策を行っても患者からコロナ感染を疑われ中傷を受けた。感染病によって家族や自分の命を奪われることを危惧した結果、病院を辞めている。地方自治体や日本看護学会では「コロナ・ハラスメント」という言葉で、感染懸念から生まれる迷惑行為に警告している。こうした運動や報道、調査結果から新型コロナウイルスにより、看護師が心身ともに削られていることがわかる。
感染症に不安を持つこと自体は正常な反応である。新型コロナウイルスはインフルエンザと同等の感染力を持ち、潜伏期間が1日から12日と不規則だ。症状も個人差があり、非常に感染がわかりづらい。イギリスでの変異種の発生も不安要素の1つだろう。
私は職務に関係なく、日常的に消毒や手洗いうがいなどの対策を行っている。新型コロナウイルスに不明瞭な点が多いことを理解し、必要ならフェイスガード以外に筆談も使って飛沫を抑える。相手に感染の心配がないと行動で伝え、患者同僚問わず不安を取り除き、支えたい。感染に怯えず安心して働ける環境を作り、コロナ感染に関係なく相手の心に沿った看護を行う。
参照元 日本看護協会 「看護職員の新型コロナウイルス感染症対応に関する実態調査」結果概要
私はいじめを完全にゼロにすることは不可能だと考えている。もし身近に子供や大人に関係なく、そういった虐待を受けている人間がいるのであれば、寄り添って言葉をかけ、いじめの現場から離れる解決策を考えたい。
いじめは法律上で明確な定義があり、簡単にまとめると「生徒同士の行いで、被害者が身体的・精神的に苦痛を感じる行為」が基準だ。担任や教諭はこの不快感に敏感に気づき、対応しなければならない。この配慮は大人同士の付き合いですら難しく、本来人間関係の構築のなかで学ぶべきものだ。最初から不快感に気づくことを学校に通う生徒に求めるのは厳しい。あるお笑い芸人ははいじめとお笑いは同じ延長線上にあるとテレビ番組やインタビューなどで答えている。そのうえで、人間にはそういった「いじめを楽しい」と感じる部分が少なからずあり、その感覚を認識する事が大切と話す。
いじめについて研究を行っている社会学者へのインタビュー記事には、「閉鎖空間」「特殊なルール」「強制的な人間関係」「ノリに支配されている」「人の流動性が低い」という条件に人間を閉じ込めると、いじめが発生するという理論が展開されている。学校はこれらの条件が揃っており、そもそもの構造としていじめが発生しやすい。ある魚類学者は、自身の「小さな部活動」内で起きたいじめの目撃談と魚の生態を重ねた。狭い水槽に魚を一緒に入れると大勢が1匹を攻撃し、その1匹を別の水槽に移しても大勢のうちの1匹が同じようにいじめられる。学校から離れた環境で被害者に寄り添うことで相手は安心できたと話している。このコラムは新聞に掲載され、たちまち反響を得た。
学校に限らず、コミュニティ内で適当な言いがかりを見つけていじめを行う人物は必ずいると考えること。そして自分が加害者にならないこと、被害者を見つけたら味方になりえる人物を探し、寄り添うことこそがいじめをゼロに近づける一番の方法だ。
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