助産師は、産婦人科や産科などにおいて出産のサポートを行います。看護師資格と助産師資格の双方に合格しなければならず、どちらかが欠けても助産師にはなれません。また、保健師助産師看護師法第3条では、以下のように定義されています。
『「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。』
▼引用:保健師助産師看護師法 第三条
このことからも分かるように、日本においては助産行為ができるのは女性に限られており、男性は助産師にはなれないのが現状です。
<助産師になるには>
助産師になる方法は、大きく分けて2つあります。1つは4年制の看護大学において看護師と助産師の教育課程を満たし、どちらの国家試験にも合格する方法です。もう1つは大学や短大、専門学校などで先に看護師資格を取得。卒業後に助産師教育課程をもつ専門学校や大学院などで学び、助産師資格を取得する方法となります。
助産に関する授業では、基礎助産学や助産診断・技術学、地域母子保健、助産管理、学内実習などを学びます。専門性の高い科目を1~2年をかけて学び、助産に関する知識や技術を習得して助産師国家試験合格を目指すのです。
<仕事内容>
助産師の仕事は、お産の介助だけではありません。産前・産中・産後にかけて、さまざまな仕事を担います。
産前には妊婦の健康管理、食事、運動、生活面の指導が挙げられるでしょう。体の変化に伴う不安や悩みを聞くこともありますし、出産前の母親父親教室で安産体操や出産の流れ、呼吸法、新生児のお世話などのレクチャーをすることもあります。産中には、医師と連携しながら出産をサポート。お母さんが酸欠にならないよう呼吸をリードしたり、いきむタイミングを教えたりします。分娩中の母子の異常がないかを確認しながら、安全な出産を促していくのです。
そして、産後はお母さんの身体や心のケアをしながら、育児のスタートをサポートします。赤ちゃんの呼吸や対応調整なども見極め、問題の早期発見ができるようしっかり観察することも助産師の仕事です。
なお、出産は命が誕生する喜びばかりとは限りません。助産師も産科医も、言葉にならない残念な状況を経験することがあります。死産や形態異常、障害といった状況を母親に伝え、支える仕事もまた助産師にはあることを把握しておきましょう。
<勤務先>
助産師の就業場所を多い順に並べると、以下のようになります。
・病院:62.9%
・診療所:22.1%
・助産所:5.7%
・看護師等学校:4.2%
・市区町村:3.4%
病院勤務が大半ですが、なかには看護師学校の教員になる人や公務員として勤務する人もいます。助産師になる目的が、「出産」に携わる仕事に魅力を感じたという人は非常に多いでしょう。しかし、さまざまな角度から出生に関わる道もあるのです。
▼参考:厚生労働省「平成 30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
日本の保助看法の歴史を見ていくと、男性が助産師になれるのかどうかの議論は、かなり以前からあることが分かります。1985年(昭和60年)、男女差別撤廃条約が審議され、保助看法は男性に差別的であるということから、国会でもさまざまな議論が飛び交った時期がありました。また、1999年(平成11年)には、男性助産師実現についての動きもあったようです。
しかし日本助産婦会からは、助産師の男性導入が断固反対されるという経緯があります。なぜ、日本助産婦会は強く反対したのでしょうか。
当時は男性助産士として導入が検討されていたものの、日本助産師会は信頼関係や妊婦の羞恥心、倫理的な問題をかかげていました。助産を行う側ではなく、助産を受ける側の考えを十分に配慮すべきということもあったのでしょう。
すでに男性保健師は誕生していましたが、助産師は認められないまま2001年に保健師助産師看護師法が改正。「婦」から「師」へ名称変更し、男性でも就業しやすい職業として看護師が話題になりました。今後も注目される議題であるため、男性で助産師を目指している人にとっては目が離せません。
▼参考
・日本看護協会「保助看法60年を振り返る」
・新潟県立看護短期大学「看護学生の男性助産士導入に関する意識調査」
実際に助産師を目指す看護学生や妊娠出産経験者からは、色んな意見があるようです。反対意見の中には、出産は女性だけに限られているという観点から、男女平等にしがたいという声も見られます。
例えば産科医が男性であっても、妊婦への身体のケアは助産師の方が断然多いのが現状です。産後に母乳が出ずに悩んでいるとき、母乳マッサージをしてくれる助産師さんは多いでしょう。しかし、さすがに医師や助産師であっても、男性では女性として抵抗があるはずです。
出産には夫の立ち会いもNGという女性がいるなか、知らない男性に陰部を見られるのも耐えがたいはず。出産の痛みが共有できないため、分娩中の声掛けを不快に思う人もいるかもしれません。また、同性だからこそ相談しやすい悩みもあります。性的なプライバシーの侵害が起こる可能性もゼロではないでしょう。
このように、実際に医師より近い場所で妊婦と接する助産師は、やはり女性の方が安心かつ信頼できるという意見が多いようです。どうしても男性で命の誕生にかかわる仕事に就きたいと考えるのであれば、産科医を目指すという選択が現状では無難かもしれません。
▼参考:新潟県立看護短期大学「看護学生の男性助産士導入に関する意識調査」
現在の法律では、男性が助産師になることはできません。どうしても諦められない場合には、他の医療や介護といった命にかかわる職業にチャレンジしてもいいでしょう。
<産科医>
医師の中でも、産科医は母子の命を預かる大切なポジションです。産科医は若い世代で男性医師が非常に少なく、女性医師が産休や育休時にも対応できるよう、男性医師とのバランスを取っておきたい分野でもあります。
いつ始まるか予期できない分娩に対応するため、オンコールや当直も少なくありません。しかし、強く助産師を志望している男性なら、役割を全うできるでしょう。日々赤ちゃんの誕生に立ち会えるため、命を守ることにも専念できるのが魅力です。
<小児科医>
出産を終えて1ヶ月健診が過ぎれば、赤ちゃんは小児科にも顔を出し始めます。赤ちゃんでなくても、幼い子どもたちの健康を親御さんと一緒に見守り、治療できる職業です。少子化という点からも、子どもの健康を守り治療することは大きな役割を担っています。医師として子どもを守るという方向性も、助産師になりたい男性であれば目標に変えられるのではないでしょうか。
この他にも獣医師や保育士、介護関係といった資格があります。助産師になりたい男性は、「どうして助産師になりたいのか」という点を掘り下げることが大切です。
現在は男性助産師を目指せず、夢を諦めざるを得ない状況があります。しかし、今後どういった法改正があるか分かりません。法改正に向けて看護師免許を取得し、臨床経験を増やしつつ認定看護師の不妊症看護や新生児集中ケア、専門看護師を目指すのも良いでしょう。これらの仕事でも、子供の看護や母性看護といった分野にチャレンジできます。
また、日本では男性が助産師になることはできませんが、海外では男性が助産師として活躍している国もあります。場合により、海外で助産師として働くことも1つの方法です。
今の日本では、助産師として男性が就業することができません。しかしながら、ジェンダーの垣根が見直されている現代において、産科での男性の関わり方についても改めて考えるべき時期は来ているのかもしれません。未来のために考えるべき課題はたくさんあります。男女均等、差別といった観点からではない見方にも着目して、命を守るためにできることに軸を置いて考えていきたいものです。
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