在宅医療の最前線で活躍する訪問看護師へのインタビューシリーズ。今回は、株式会社マイナビナースケア 新宿ステーションに勤務する根岸(ねぎし)さんと大場(おおば)さんのお二人を取材。精神科での勤務経験があり、同年代で入職も同時期のお二人に訪問看護のやりがいや?変さ、思いについて伺いました。
プロフィール
写真右:根岸(ねぎし)さん
株式会社マイナビナースケア 新宿ステーション勤務の26歳。看護学校卒業後、東京都内の精神科病院の急性期病棟勤務を経て、2020年の中旬に現職。趣味は映画を見ることで、特に洋画が好き。
写真左:大場(おおば)さん
株式会社マイナビナースケア 新宿ステーション勤務の26歳。出身地・島根県の大学院で助産学を学ぶ中でメンタルケアに惹かれ、精神科分野へ方向転換。鹿児島県内にある精神科病院に勤め、2020年中旬に上京して現職。仕事終わりや休日に友人と過ごす時間を大切にしている。
ーーお二人とも今年ステーションに入職されて訪問看護師になられたのですね。
現在の職務内容について教えてください。
根岸さん:精神疾患をもつ利用者さま宅を訪問してケアをしています。移動は自転車です。利用者さまの体調や内服の管理、生活の援助などさまざまなケアをしています。
大場さん:あと、あいさつ回りもしています。訪問看護の傍らで、病院や行政、退院後に訪問看護の利用をお考えの方などに電話したり、直接足を運んだりして宣伝しています。
ーーお二人とも精神科病院での勤務経験があるようですが、精神科に興味を持ったきっかけは何ですか?
根岸さん:看護学生時代に参加した実習がきっかけです。実習で、一番やりがいを感じたのが精神科分野でした。精神科の実習は、患者さまと関わる時間が長く、じっくり看護にあたることができたんです。また、看護師の関わり方次第で患者さまの容体が変化する点に、責任とやりがいを感じました。
看護学校卒業後は、都内の精神科病院に勤めました。急性期の男性が入院する閉鎖病棟で、患者さまは統合失調症やうつ病を患っている方が多かったです。
大場さん:私は大学院で助産学を学んでいたのですが、実習を通してメンタルケアに興味が湧きました。実習中、優しくて安心感のある助産師の方がいて、その方が携わった分娩は不思議とスムーズに進むんです。安心感があるだけで、妊婦さまのお産の経過を変えられると知り、自分も「患者さまが安心して生活できる環境で、看護師としてサポートしたい」と思いました。
卒業後は、大学院の先生の勧めで精神科の慢性期病棟に勤めました。男女混合の閉鎖病棟と身体合併病棟です。患者さまは、経管栄養や点滴が必要な方や、意識がない方もいらっしゃいましたね。入院年数も5年から数十年の方までさまざまでした。
ーー精神病棟で勤務されたあと、なぜ訪問看護師になろうと思ったのですか?
根岸さん:患者さまの退院後の生活をサポートしたいと思うようになったからです。急性期病棟には、入退院を繰り返す方が多くいらっしゃいましたが、ほとんどの原因は、退院後の怠薬による症状の悪化でした。しかし、退院後は患者さまをSWやPSWに引き継ぐので、看護師は関わることができません。そのため、病棟でのケアに限界を感じました。
また、急性期病棟は患者さまの入れ替わりが激しかったので、ゆっくりケアをしたいという思いもありましたね。
病院はルールや制約が強いほか、一日の中で多くの患者さまの対応をしなければなりません。その点訪問看護であれば、一人ひとりに時間をかけて看ることができると思いました。
大場さん:私が訪問看護師を目指した理由は、患者さまが精神的な疾患を抱えていても、自宅に戻って地域社会の中で生活できるように支援したいと思ったからです。私は慢性期病棟だったので、症状を理由に入院が長期化し、数十年間自宅に戻れない患者さまを数多く見てきました。また、入院していると、自由に外出できず食事や飲み物も制限されるうえ、お金もかかるため、在宅での生活をサポートする必要性を感じていたんです。
鹿児島県の病院から上京して訪問看護師になったのは、経験を積むためです。地方部だと移動距離が長いので車を使っても1日4件程しか回れません。一方、都心だと自転車でも1日6~7件回ることも可能なので、場数を踏めると思ったんです。
ーー訪問看護師になることに不安はありましたか?
根岸さん:いろいろありましたが、知識がなかったことが一番不安でした。保険や制度に関することなど、今までなかった知識を身につける必要がありましたが、勉強方法も分からない状態でした。面接で不安なことを相談したところ、ステーションの所長が勉強用の本を渡してくれたので、それから本を読んで学んでいきましたね。
また、一人で訪問するのも自信がありませんでした。ただ、目標管理シートなど充実した教育制度がありましたし、現地で困ったことがあれば先輩に連絡できるので、実際に働くうえで不安なことはなかったですね。
あと、方向音痴なので道を覚えられるか心配でした(笑)初めはナビに頼ってばかりだったのですが、何回か訪問するうちに慣れましたね。
大場さん:私は訪問看護師になる直前まで病院で働いていたので、思い返すと不安を感じる暇もないほど忙しかったように思います。所長がとても優しそうな方だったので「何か困ったことがあれば所長に相談しよう」くらいに思っていました。
実は看護学生時代に訪問看護に同行する機会があって、その時の訪問看護師がみんな優しい方だったんです。だから一緒に働く訪問看護師も、穏やかな方たちを想像していましたね。
根岸さん:私も実習で関わった訪問看護師は優しい方ばかりだったように思います。利用者さまと一対一で接するので、むしろ、そうでないとできない仕事なのかな、と感じました。
ーー訪問看護の面白いところはどこですか?
大場さん:人と人との関わりを楽しめることですね。利用者さまとは、病気や薬の話よりも、世間話をする時間の方が多いと思います。「精神疾患を持つ利用者さま」というよりも「同じ地域で生活している方」として接するようにしていますね。
根岸さん:私も利用者さまとはよく話すようにしています。相手に合わせて適切な話し方を考えることも、訪問看護のやりがいの一つですね。最初から病気について話すのは苦手な方もいらっしゃるので、まずは話をして信頼関係を築くことが重要なんです。ただ、どうしてもお話をしたがらない利用者さまには、その方に合わせた対応をすることが重要ですね。
大場さん:私も一人ひとりに合わせて、話し方や接し方は工夫していますね。話すのが好きな利用者さまなら、相手の言葉をメモしながら話を膨らませるようにしていますし、話すのが苦手な方とは無理に喋らずに、iPadで動画を見て過ごすこともあります。
ーー話すことで信頼関係が築けたと感じるエピソードはありますか?
根岸さん:私が担当になる前年に旦那さまを亡くされたうつ病の利用者さまがいて、引きこもりがちで部屋は掃除されておらず、誰とも関わりたくないとおっしゃっている状態でした。そんな中、利用者さまの様子に気を使いながら話すことを続けていたら、状態が良くなったんです。部屋は見違えるほどきれいになり、自分のしたいことを話してくれたり、訪問看護が来るのを楽しみに待ってくれたりするようになりました。
大場さん:私は自分が担当して間もない若い利用者さまで、最初はあまり心を開いてくれなかった方が、話しているうちに、好きなゲームの話などをしてくれるようになったことがあります。そういう時に、話すことで信頼関係が築けたのかなと思いますね。
ーー訪問看護の大変なところは何ですか。
根岸さん:利用者さまのお部屋が清潔でないと苦労することが多いですね。衛生面に十分配慮してケアをしなければなりませんし、お部屋の状態が乱れていると、利用者さまの精神状態の悪化にも繋がります。なるべく利用者さまと掃除するようにしていますが、中には「部屋が片付いていない」という自覚がない方もいらっしゃるので、その場合は許可をとって掃除したりヘルパーの方と協力して片付けたりしています。
大場さん:利用者さまに隠し事をされて困ることがあります。たとえば利用者さまが薬を飲みすぎてしまったりすると、身体に悪影響だという自覚があるので隠そうとするんです。そういう隠し事をされないようにするために悪いことがあっても、はじめは何でも受け入れるようにしています。話してくれるだけでもありがたいと思うようにしていますね。
ーー訪問看護師として大切にしていることは何ですか?
根岸さん:何を相談されても良いように、普段からさまざまな方面の知識をつけることを心がけています。ちょっとした変化でも相談さえしてもらえれば、早めに対応できるからです。「なんでも相談できる看護師」になりたいですね。
大場さん:ずばり平常心です。利用者さまの中には、こちらが話してかけても反応しない方や、気に障って怒る方もいらっしゃいます。そこで落ち込んだりせずに気分を切り替えて次の職場に向かうことが重要だと思います。
ーー訪問看護師として目標はありますか?
根岸さん:尊敬する所長のようになりたいと思っています。先日、ステーションができて最初に入られた利用者さまと話す機会があったんです。その方は、スタッフの顔は分かるけれど名前は覚えていないという状態だったのですが、所長のことだけは「あの人はすごい。利用者のことを大事にしているし、スタッフのこともしっかり見ている」と名指しで褒めていらっしゃいました。私も、所長のように利用者さまに信頼される訪問看護師になりたいと思いましたね。
大場さん:利用者さまだけでなく、スタッフからも「この人に言えば安心」と思われるような、頼りがいのある訪問看護師になりたいです。今の所長も、前職の病棟の師長も、ネガティブな感情を表に出さず、スタッフや利用者さまの言葉をなんでも受け止める力がありました。私も見習って、安心感を与えられるような存在になりたいです。
ーー訪問看護に興味があるけど迷っている、または訪問看護の魅力を知らないという看護師へ一言お願いします。
根岸さん:私は病院で働いていたときよりも、今の方がやりがいを感じています。訪問看護は、利用者さまが地域の中で暮らしていけるよう、症状だけではなく生活全体を看てサポートできるからです。情報共有を地域全体で行うのも訪問看護ならですね。訪問看護師として利用者さまや地域の方たちと関わる中で、自分の視野を広げていけると思いますよ。
大場さん:今は一人ひとりの利用者さまと向き合えるので、病院にいたときと比べて遥かに楽しく仕事ができています。一人で対応しなければならない場面が多いので、自分の判断は重要ですが、ときにはステーションのスタッフと相談して、利用者さまの症状や生活面を総合的に見ながら対応しています。周りのスタッフに頼りながらも、自分の判断力や対応力を磨いていけると思いますよ。
ーーありがとうございました
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