『医療・看護現場で働く方に、いつもとは違った視点でその分野を研究している人を知ってもらいたい』という想いで始まったこちらの大学の研究室紹介。
第2回目は宇都宮大学大学院 地域創生科学研究科 工農総合科学専攻 計測・ロボット工学研究室(尾崎研究室) 修士課程2年 佐藤光磨さんにお伺いしました。
主に『看護支援システム』を研究されています。
非接触で看護対象者の睡眠を計測する研究をしています。
看護現場では看護対象者がベッドから転倒転落する事故が多発しています。事故防止のために看護師は夜間施設内を巡視する見守りを行っています。しかし、看護対象者がいつ目覚めるかわからないため、頻繁な見守りはケアスタッフに大きな負担を与えています。そのため、看護対象者の離床行動を検知するシステムが必要になります。
本研究室では自治医科大学看護学部の川上勝准教授と共同で、ひずみゲージを用いた体動検知パネル[特許第5006018号、特許第6468510号]を開発しています。この体動検知パネルをベッドのマットレスの下に設置することで、看護対象者のベッド上の姿勢を3段階で高精度に判定できます。
本システムではカメラ等での監視の必要が無く、夜間の看護対象者のプライバシーを守った上で転倒事故を防ぐことができます。また、体動検知パネルは厚さ2cmほどで薄く、敷布団やマットレスの下に設置するため、睡眠中において背部に違和感などを覚えることはありません。さらに、設置が簡単で、壊れにくい特徴があるので看護現場へ導入しやすいと考えます。
体動検知パネルは看護対象者の肩と腰にあたる部分にそれぞれ設置します。2枚のパネルにかかる圧力データにより姿勢について、ベッド上で横になっている「臥床」、ベッド上で起上っている「起上り」、ベッド上に人がいない「離床」の3段階で判定できます。さらに、AIの一つである深層学習を用いることで99%の精度で看護対象者の姿勢を判定できます。
判定した姿勢は看護師が持つタブレットやナースステーションに設置されたPCで閲覧可能です。体動検知パネルでは「離床」前の「起上り」を検知でき、従来の離床センサに比べて誤報も少ないため、看護現場への需要は高いことが予想できます。
これまで約10年間にわたり宇都宮市内の介護老人保健施設の協力のもと職員へのヒアリングや実証実験をしてきました。実証実験によりパネルによる看護対象者の睡眠に影響がないこと、高精度で姿勢判定が可能なこと、十分な耐久性が持つことを示しました。
そのため、現在は川上勝准教授が社長を務める自治医科大学発のベンチャー企業「株式会社ナーステックラボ」で体動検知パネルの製品化を進めています。株式会社ナーステックラボでは看護現場の知見とものづくりの技術により様々な製品の開発を進めた実績があるため、体動検知パネルの製品化も近いと考えます。
看護師は夜間に見守り以外に様々な業務を行っており、通知を受けてから訪室するまでに時間がかかる場合があります。そのため、現在の体動検知パネルによる通知では、看護対象者の離床に間に合わないことが想定されます。
本研究室では施設内を自律移動するロボットの開発を進めています。そのため、ロボット技術の進化によりケアロボットが施設内で見守りを行うことが考えられます。これらのロボットと本システムを連動することで、看護対象者が「起上り」と判定されたときにロボットが訪室することができます。そして、看護師が駆けつけるまで音声や身振りでコミュニケーションをとったり、音声ガイドにより看護対象者を案内したりすることができます。これにより、看護対象者の安全を確保すること以外にも、看護師の精神的な負担を減らすことができます。
そして、ナーステックラボにより体動検知パネルや研究成果を看護現場に実装することで、ものづくりを通じて看護現場の要望に応えることができる製品を作っていきたいです。
佐藤さん、お話ありがとうございました!
最後に、宇都宮大学大学院 計測・ロボット工学研究室(尾崎研究室)の基本情報を記載します。
宇都宮大学
https://www.utsunomiya-u.ac.jp/
工学研究科 計測・ロボット工学研究室(尾崎研究室)
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