病院・施設インタビュー
2021.2.24
介護の現場で活躍する施設看護師へのインタビューシリーズ。今回は「株式会社やさしい手甲府 やさしい手 甲州事業所」に勤務する若尾 梨沙さんを取材。施設看護師の仕事内容ややりがいについて伺いました。
プロフィール
若尾 梨沙(わかお りさ)さん
「株式会社やさしい手甲府 やさしい手 甲州事業所」(山梨県)勤務。高校卒業後、准看護師資格を取得。医療療養型病棟(神奈川県)や老人内科病棟(東京都)での勤務を経て現職。施設看護師歴8年。休日は山梨県内の祖父祖母のもとへ行くことが多い。
ーー施設の特徴や職務内容について教えてください。
「やさしい手 甲州事業所」は認知症対応型の通所介護施設で、利用者さまは認知症の診断を受けた方に限られます。定員は12名で、1日にいらっしゃる利用者さまは10人前後です。看護師スタッフは私のほかに正看護師が1人います。日中は看護師が必ず1人施設にいるように交代で勤務していますね。
施設の1日の流れとしては、利用者さまが朝いらっしゃって、入浴、食事、体操、レクリエーションをして、おやつを食べて夕方お帰りになるというものです。そのなかで施設看護師はバイタルサインや体温、脈、血圧の測定などをしています。症状によっては訪問看護師や主治医から対応を依頼されることもあり、軟膏を塗ったり湿布を貼ったりすることもありますね。ほかにも、薬を持ってきている利用者さまが多いので、食前・食後の管理もしています。午後の体操では、私も一緒に参加し、利用者さまの状態を確認します。
また、一番の業務は排便コントロールですね。認知症を患っている利用者さまのご家族は、「排便の処理が一番大変」とおっしゃる方が多いんです。施設では薬を使ったりマッサージをしたりして排便コントロールをします。お手洗いに行けない方や、薬の副作用で便秘になっている方などさまざまな利用者さまがいらっしゃるので、一人ひとりの排便の周期も考えつつ対応をしています。
ーー施設看護師になるまでの経歴を教えて下さい。
地元は山梨県で、高校卒業後は神奈川県の准看護師学校に通い免許を取得しました。その後、神奈川県内の医療療養型病棟や、同系統の東京都内の老人内科病棟で勤務しました。ただ、家族のいる地元で働きたいという気持ちもあったので、山梨県に戻って「やさしい手 甲州事業所」に務めることにしたんです。
ーー地元に戻られてから、施設看護師になった動機はなんですか?
病院で働くなかで、患者さまと話す時間がもっと必要だと感じたからです。
病院は老人内科だったので、点滴を24時間している方や寝たきりの方が多く、夜勤もあるうえに業務も多く忙しい職場でした。体力的にも精神的にも疲れが溜まっていたので、地元に戻って転職先を探すにあたり病院は候補に入れていませんでしたね。代わりに、「患者さまともっと話したい」「在宅の支援をしたい」という二つの思いがあったので、施設を中心に探しました。いろいろな職場を見て回ったのですが、なかでも当施設は雰囲気がよく、挨拶したときからアットホームな雰囲気があって好印象だったんです。また「高齢者の方が住みなれた地域で安心して生活を送れるように、介護サービスを提供する」という会社の理念にも魅力を感じました。
ーー施設看護師になるのに不安はありましたか?
ありました。病院には同僚の看護師や医師が身近にいるのですぐに相談ができますが、施設では自分で判断しなければならない場面が多いので責任を感じました。状態を正しく把握して、医師に言うか言わないか、病院の受診を勧めるかどうかという点を考えなければなりません。現在、判断に迷うことがあれば、施設にいるもう1人の看護師に申し送りで相談するようにしています。そのスタッフは60歳くらいの経験豊富なベテラン正看護師で、訪問看護の経験もあってとても信頼できるんです。申し送りノートも活用して、利用者さまの些細な変化でも情報共有して相談しています。入職当初はまた別の正看護師がいたのですが、普段から申し送りを通して相談できる体制があったので、不安も軽減し徐々に自信がついていきましたね。
ーー施設看護のやりがいは何ですか?
利用者さまから感謝の言葉をもらえることです。利用者さまのなかには認知症で話すことができない方もいらっしゃいますが、そのぶん表情が豊かで、私はさまざまな感情を受け取ります。そのなかで感謝の思いを受け取ったときは、救われた気持ちになります。
利用者さまに、体操にも参加したくない、レクリエーションにも意欲を感じない、横になっている方が楽だとおっしゃっていて、鬱傾向にある方がいらっしゃいました。そこで、どのように関わったら楽しんでもらえるか考えつつ、言葉を工夫したり、しっかり時間を取って話したりしたんです。「無理をさせない」「その方のペースに合わせていく」という方法を続けていると、次第に体操に出てくれるようになり、心を開いてくれました。それこそ最初の1~2年はなかなか話してもらえませんでしたが、今では「あなたと話せてすっきりした」「顔を見るとすごく嬉しくなる」と言っていただくようになり、嬉しいですね。病院勤務の頃から、業務のなかで患者さまと関わる時間を作るようにしていましたが、話をして信頼が得られたと感じる経験でしたね。
ーー施設看護の大変なところはどこですか?
ケアや対応の仕方が一人ひとり違うところですね。たとえば排便コントロールなら、トイレでできる方やベッドで介助する方、浣腸が必要な方、下剤が必要な方などさまざまです。同じやり方では対処しきれないことが多いので、身体の反応によって対応方法を変える必要があります。
また、入職して間もない頃は、1日の業務スケジュールを組み立てるのが大変でした。「入浴」「昼食」「午後」などと決まった時間のなかで、利用者さまにどんなケアができるか優先順位をつけて考えなければなりません。ほかにも利用者さまの様子をパソコンに入力する作業もあるので、その時間を予定に組み込む必要があります。当施設は少人数のデイサービスなので業務量は病院ほど多くはなく、技術を覚えることはそこまで大変ではありませんでした。そのぶん、利用者さまへの対応方法を考えたりスケジュールを管理したりするのが難しかったです。
ーー施設看護師として大切にしてることを教えて下さい。
利用者さまのペースに合わせることです。利用者さまは戦争を経験されているほどご高齢の方ばかりなので、敬意をもって接するのは当たり前だと思っています。重要なのは利用者さまの思いに寄り添うことです。
また、デイサービスのスタッフは利用者さまのご自宅での様子を把握するのも重要です。ご自宅での食事や睡眠、お通じの様子を確認したうえで1日の過ごし方を考えるように努めています。
ーーこれから施設看護師としてどんなことに?を?れていきたいですか?
今の仕事が自分に合っていると感じているので、これからも利用者さまの思いを大切にして、施設で過ごす1日を楽しんでもらうために努力したいです。認知症の利用者さまは、怒ったり、元気になったり、落ち込んだり、1日の中でも感情に変化があります。だからこそ利用者さまの個性を尊重して、瞬間瞬間を大切にしていきたいですね。
ーー施設看護に興味がある看護師へ??お願いします。
介護施設を目指している方は、高齢者の方と関わるのが好きならやっていけると思います。技術に自信がなくても、仕事のなかで学ぶことができます。「どんなケアをしているんだろう」と高齢者やその介護のやり方に興味を持つことが重要ですね。
ーーありがとうございました。
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