「病院での経験を活かしながら、在宅看護でご利用者やご家族の手助けができたとき、やりがいを感じます」施設看護師インタビュー・片岡 真理さん

2021.3.16

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介護の現場で活躍する施設看護師へのインタビューシリーズ。今回は、「特別養護老人ホーム オービーホーム」の施設長を務める片岡 真理(かたおか まり)さんを取材。消化器外科での勤務経験を活かして働かれている片岡さんに、施設看護のやりがいや大変さ、大切にしていることを伺いました。

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プロフィール
片岡 真理(かたおか まり)さん
「社会福祉法人 丸 特別養護老人ホーム オービーホーム」(兵庫県)に施設長として勤務する59歳。病院に勤めながら学校に通い、正看護師資格を取得。消化器外科に10年、リハビリ病院に3年勤務したあと、再び消化器外科へ。その後知人の誘いで現職に就き、今年で11年。趣味はミュージシャンのコンサートに行くこと。愛犬のチワワと休日の時間を楽しんでいる。

不安だらけのスタート。周りのスタッフに聞きながら学んでいった

ーー現在の職務内容について教えてください。

「オービーホーム」の施設長として全体を見ています。スタッフの面談や指導のほか、看護師としての助言をしたり、ご家族のご相談に乗ったりすることもありますね。利用者さまのケアは現場のスタッフに任せていますが、管理者会議やリーダー会議などに参加し、利用者さま全員の状況を確認するのも業務の一つです。また、法人が運営する施設の部門長も兼任しています。

ーー施設看護師になる前はどんなお仕事をされていたのですか?

私はもともと一般大学を卒業しており、地元の神戸に帰ってきた当初は営業の仕事をしていました。しかし、当時は阪神・淡路大震災の直後で埃が舞うなか、喘息を発症してしまい、続けるのが難しくなってしまったんです。そこで手に職をつけるため、病院に勤めながら看護学校に通い、正看護師の資格を取得しました。消化器外科の病院に10年勤め、急性期や慢性期の患者さまを担当し、外来やオペ室も経験しましたね。その後、「消化器以外の勉強もしたい」と思い、別のリハビリ病院で立ち上げから携わり3年勤務して、再び消化器外科の病院に戻りました。
当時、病院では訪問看護事業が開設されたばかりで人手が足りず、私は訪問看護と病棟を行ったり来たりする日々でした。そんななか、当施設に勤める介護職の知人に声をかけてもらい、特養の施設看護師として入職することを決めました。48歳のときなので、今年で11年になります。最初に誘ってもらったときは、「まだ病院でバリバリ働きたい」という気持ちが強くあったため断りましたが、日々忙しいなかで病院の仕事に疲れていたこともあり「一回やってみようかな」と思ったのがきっかけでした。

ーー施設で働き始めるにあたって不安はありましたか?

最初は何も分からず不安だらけでしたね。入職時にそれまでいた看護師が辞めてしまったため、教えてくれる人は誰もいない状況だったんです。私はケアマネの資格もなければ、介護保険などの知識もなかったので、この施設でどのように看護をしたら良いのか全く分かりませんでした。利用者さまやご家族と関わりながら、ケアマネージャーや当時の相談員に色々なことを聞いて学んでいきましたね。
また、私が入職した半年後、以前同じ職場に勤めていた看護師が病院を辞めたので「次の仕事が見つかるまで手伝ってほしい」と声を掛けたら来てくれたんです。それからは、2人で相談し合いながらどのように利用者さまを見れば良いか考えていきました。その看護師は今もこの施設で相談員として働いてくれていますよ。そのうち、一緒に働く仲間も増えていきました。

ーー現在オービーホームにはどんなスタッフがいますか?

みんな病院で働いていて、在宅は初めてのナースばかりです。小さな子どもがいる人もいれば、現在産休中の人もいます。年齢も20~50代までと、さまざまですよ。勤務形態は、常勤・時短勤務・パートなど、各スタッフが家庭の事情に合わせて働けるようにしています。当施設には0歳から3歳の子どもを預かる保育所があるので、出産後も戻ってこれる環境なんです。

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▲子育てしながら働いていた経験から、若い方も働きやすいように敷地内に保育所を設立。20代30代の看護師さんも多く活躍している

 
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地域のスタッフともスムーズに連携。病院での経験が今に活きている

ーー施設看護師として働くうえでやりがいを感じることは何ですか?

もちろん、利用者様の笑顔が見られたときが一番ですが、病院で働いた経験を活かせたときによかったと感じますね。たとえば、利用者さまがご飯を食べられなくなったときに、「胃ろうをつくるか」「病院に入院するか」「食べないまま自然な形で看取りをするか」という話合いを医師やご家族と行います。そのなかで、「胃ろうにするとご飯は食べられないけれど、今後も施設で過ごしながらいろいろな楽しみを経験できますよ」といったように、それぞれのメリットや可能性をご家族に説明させていただくんです。最終的に決めるのはご家族ですが、分かりやすいよう助言をして、選択の手助けができたときはうれしく感じますね。
また、病院での経験は施設外の方とのやり取りにも役立っています。病院に関する知識があることで地域の連携室の方ともスムーズに話ができ、利用者さまが入退院されるときに連携がとりやすいんです。過去の経験は無駄ではなく、施設看護において活かせることがたくさんあると感じます。すべて今に繋がっています。

ーー施設看護師として働くなかで、大変だったことはありますか?

最初は、分からないことばかりで不安だらけでした。入職して3~4年目に、相談員になったときも大変でしたね。相談員の仕事を引き受けたのは、当時の担当者が定年退職されたからです。後任を頼まれ、私自身もちょうど仕事にやりがいを感じ始めていたときだったので、やってみようと思いました。
大変だった理由は、前任者と自分のやり方が違ったためです。前任者は、ご家族のお考えをすべて聞き入れる方でしたが、自分は施設でできること・できないことをはっきりお伝えしていきました。たとえば、がん末期の痛みや呼吸苦を訴える利用者さまがいた際、一般的に使う薬の服用だけでは緩和できないことがあります。その場合は、ご家族に「施設が良い」と言われても、まずは利用者さまの苦痛を最小限にして差し上げるため「病院で痛みをとってあげた方が良いですよ」とお伝えしましたが、ご家族からは「前の相談員は要望を受け入れてくれたのにどうして?」「冷たい」と思われてしまうこともありました。初めのうちはご家族とうまく関係が築けず、とてもしんどいと感じましたね。
しかし、利用者さまやご家族の声はお聞きしながら、施設でできることできないことをしっかり伝えるといった自分のスタンスは変えませんでした。その後、ご家族とコミュニケーションをとるなかで、次第に理解を得られるようになっていきました。私のやり方が正しかったというわけではありません。ただ、看護師には医療的な観点で対処法を考えられる強みがあると思います。今後相談員をされたい方がいたら、その強みを活かして利用者さまとご家族にとってベストな方法を考えられると良いですね。

ーー施設看護師の仕事において大切だと思うことは何ですか?

介護スタッフや相談員と看護師が連携を取りながら仕事をすることが大切だと感じますね。たとえば、介護スタッフの処置の仕方が違うと思ったときに、「間違っている」と看護師が一方的に指摘するだけでは良い関係は生まれません。「なぜそうしたのか?」と介護スタッフに聞き、自分で考えてもらうんです。そのうえで最適なやり方や根拠を伝えると、介護スタッフの学びにつながります。指摘されるだけではスキルアップにはつながりません。自分の知識だけを相手に押し付けるのではなく、「一緒に成長していこう」という気持ちが大事なんです。スタッフには日々そのことを伝えていますね。
また、看護師と介護スタッフが一緒に利用者さまのもとを回ったときに、自分の仕事だけをして終わりにするのは良くないと伝えています。たとえば、看護師が褥瘡の処置を終えたときに介護スタッフがオムツの交換の途中であれば、知らんぷりするのではなく看護師も手助けするといったことです。本来、排泄介助は介護スタッフの仕事で看護師がメインでやる必要はありませんが、お互いにできることはサポートし合うことが大切だと思います。それが利用者さまにとって一番良い結果になるからです。

周りの人に支えられてここまで来た。今後は人材育成に力を入れたい

ーー今後、力を入れていきたいことはありますか?

人材の育成に力を入れたいですね。高齢化にともない、今後施設や在宅の看護人材の需要は高まっていきます。今は外国人のスタッフもいるので「現場で見て覚える」という昔ながらのやり方ではなく、きちんとした指導が大切だと感じますね。まずはリーダーを育てて、みんなで意見を出し合いながら指導方法を考えていきたいです。
あとは、看護師が日々仕事に追われていることが多いので、もう少し利用者さまやご家族とゆっくり関わる時間を持てるよう、業務を改善していきたいですね。施設では、「バイタルを測って数字をもとに利用者さまを見る」といった業務のやり方ではなく、いつもとの違いに気づくことが大切です。日々のコミュニケーションを大切にするために、現状をどう変えていくべきかが今の課題です。

ーー施設看護に興味があるけど迷っている、または施設看護の素晴らしさを知らないというナースへ一言

看護師としての経験が浅い方でも、興味がある方は一度やってみると良いと思います。先輩看護師やケアマネージャーなどに教わりながら日々学び、成長していけるはずです。私自身も周りの方に支えられてここまで来ました。「一人で判断しなければいけないのでは」という不安もあるかもしれませんが、相談できるスタッフが周りにいます。オンコール対応の際も、ラインのグループがあるので迷うことがあったらいつでも聞ける体制を整えています。
また、現在病院で働かれていて「疲れたな」と感じる方は、今までの経験を活かしながら、少しゆったり利用者様と関わってみてはいかがでしょうか?施設看護師に挑戦してみると、また一つ自身の気づきや引き出しが増えるのではないでしょうか。ここでの経験は、将来別の場所で働きたいと考えたときにも必ず活きてくると思いますよ。

ーーありがとうございました。

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