介護の現場で活躍する施設看護師へのインタビューシリーズ。今回は「株式会社ハンドベル・ケア 複合型サービス ケアピリカ横浜港南」に勤務する浅田 彩希帆(あさだ あきほ)さんを取材。施設看護のやりがいや思いについて伺いました。
プロフィール
浅田 彩希帆(あさだ あきほ)さん
「株式会社ハンドベル・ケア 複合型サービスケアピリカ横浜港南」勤務の29歳。看護学校卒業後、神奈川県内にある急性期病院の循環器内科病棟や心臓血管外科病棟に6年勤務し、2018年8月より現職。趣味は映画鑑賞。
ーー現在の職務内容について教えてください。
主な仕事は、吸引や胃ろう、経管栄養、点滴などの医療処置です。当施設では「通い」「泊まり」「訪問看護」といった「看護小規模多機能型居宅介護サービス」を提供しています。そのため、施設内の勤務だけでなく訪問看護を担当することもありますね。また、医師の往診があるときはサポートもしますし、看取りも行っています。利用者さまは介護認定されている方のみで、70~90代の高齢の方がほとんどです。若い方だと、訪問看護だけを利用している50代の利用者さまもいらっしゃいます。家だと人との交流がないので刺激を求めて通われている方や寝たきりの方、看取りをする方などさまざまです。
??施設看護師になるまでの経歴を教えて下さい。
看護学校を卒業したあと、神奈川県にある急性期病院に入職しました。分野は循環器内科や心臓血管外科で、6年ほど働きましたね。中堅看護師ともいえる立場になったころ、指導される側から新人を指導する側に変わったんです。そこで「指導されないと看護技術が伸びない」と思い、転職を決めました。また、当時は残業で帰れない日も多かったのですが、結婚もしたころだったので残業の少ない落ち着いた職場で働きたいとも考えていました。
ーー転職にあたって施設看護を選ばれた理由は何ですか?
病院で働いていて、患者さまの普段の生活の様子が気になったのが大きな理由ですね。心臓血管外科では、心臓の病気を抱えたまま生活する患者さまをたくさんみてきました。心臓の病気は一度発症すると全快することはあまりないんです。そのため、患者さまの自己管理が重要になるのですが、それができずに入退院を繰り返す患者さまが多くいらっしゃいました。そこで、病気を抱えた人が普段どんな生活をしているのか興味を持ち、「施設看護をしたい」と思うようになりました。また、看護学生時代に体験した在宅の実習が面白かったのも理由の1つですね。
ーー施設看護師になるのに不安はありましたか?
あまりありませんでした。施設看護に興味があったので「病院とは違う経験ができる」というワクワクが不安を上回っていましたね。また、前に働いていた病院が「これ以上忙しいところはないのでは」と思うような職場だったので、転職してもどこでもやっていけると考えていました。
ーー実際に働いてみて病院と施設でギャップはありましたか?
ありました。病院は急性期で重症の患者さまは喋れない方も多かったのですが、施設では喋れる利用者さまがほとんどで、コミュニケーションの機会が増えて楽しいと感じましたね。また、シフト面でも働きやすくなりました。現在は非常勤で働いているのですが、有給が取りやすくシフトに融通が利きます。気が楽ですね。
また、業務においては備品の使い方について病院と施設で違いがあり、最初は戸惑いました。病院だと一回一回使い捨てるものを、施設では消毒して使い回すことがあるんです。やりながら施設のやり方に慣れていきましたね。
ーー施設看護のやりがいや面白いところを教えて下さい。
私は指導するのが得意なので、利用者さまのご家族に看護のアドバイスをしてサポートできるのがやりがいですね。たいていの場合、利用者さまのご自宅で介護をするのはご家族が中心です。そのため、施設ではご家族のことも考慮してケアの内容を決めるんです。患者さまだけに焦点を当てる病院とは異なる点ですね。また、自分のケアやサポートによってご家族が前向きになってくれるとうれしいです。たとえば、病院だと患者さまが病室で亡くなってしまうことも多いのですが、施設では希望があればご自宅で最期を迎えられるようお手伝いします。ご家族の方の思いに寄り添えたときはやりがいを感じますね。
ーー利用者さまとのやりとりで印象に残っているエピソードを教えて下さい。
現在も担当しているのですが、アルツハイマー認知症を患った50代の女性の利用者さまとご家族の関係性が変わったことが印象的ですね。その方は娘さんと旦那さまの3人暮らしで、娘さんは介護に一生懸命でしたが、旦那さまは非協力的でした。ときには怒って奥さまに手をあげることもあったそうです。私はそれを知ったとき、「旦那さまは認知症の奥さまの症状を理解できておらず、関わり方が分からないのでは」と思いました。認知症になるとコミュニケーションの取り方が分からなくなり、聞いたことに対して関係ない返事が返ってくることもあるからです。そこで、私はご自宅にお伺いして、旦那さまに奥さまの介護を手伝わないか尋ねると、「全くない」と最初は断られてしまいました。ところがしばらく話すうちに「どう関わって良いか分からない」「病気のことは受け入れているが何を話しても意味の分からない返事が返ってくる」「俺のことを嫌がるんだ」と旦那さまの本音を聞けたんです。
私はそれらの奥様の行動が病気の症状であることを説明し、一緒に介護をしないかもう一度尋ねると、「やりたい」と仰ってくれました。それから旦那さまに介護の指導をはじめると、以前とはまるで違う雰囲気の家庭になりました。旦那さまは率先して奥さまを介護し、家族3人で笑っている様子を見れるようになったんです。バラバラだった家族がまとまってよかったと感じました。
今思えば、旦那さまの素っ気ない態度は寂しさの裏返しだったのかもしれません。もともと旦那さまは自衛隊員で、仕事で家をあけることが多く、奥さまや娘さんとは距離ができていたそうです。しかし、奥さまが「もう長くはないかもしれない」と医師に宣告されたときはひどく泣かれたようです。現在は旦那さまも優しく声がけしながらケアをされていて、看護師としてご家族の絆をつなぐことができてたのはうれしいですね。
ーー施設看護の大変なところはどこですか?
在宅医療では利用者さまの気持ちを優先するので、看護師として管理するのが難しいですね。たとえば、糖尿病を患っているのに血糖値を気にせず好きなように食べている方もいます。そんなとき、病院だったら食事制限もありますし、「それ以上は駄目です」と厳しく止めることもできます。しかし、在宅では利用者さまの気持ちを優先させて、看護師はあくまで症状が悪化しないようにサポートするんです。また、末期がんを患っているのにタバコをどうしても吸いたいと仰る方もいました。そういうときも、厳しく止められないので、ときには「しょうがない」と割り切って対応しなければなりません。看護師としてどこまで踏み込むべきか迷うこともありますね。
ーーこれから施設看護師としてどんなことに力を入れていきたいですか?
ご家族に寄り添える看護をしていきたいです。たとえば、利用者さまが口からものを食べるのが難しい状態でも、お楽しみ程度に食べさせてあげたいと考えているご家族もいらっしゃいます。それを看護師の目線で「駄目です。無理です」と止めるのではなく、「食べるにはどうすればいいか」と一緒に考えられるようになりたいですね。利用者さまやご家族によって考え方は異なるので、一人ひとりに合ったやり方を考えたいです。また、今後は病院に戻ることもキャリアプランの一つとして考えています。在宅分野で得た経験を活かして、前に病院で働いていたころとは異なる視点で患者さまと関わっていきたいですね。
ーー施設看護に興味がある方へひとことお願いします。
私は、在宅分野は病院でキャリアを積んだ人が選ぶルートというイメージがありました。そのため、病院のキャリアが6年で施設看護師になるのは、まだ早いと感じていたんです。ただ、実際に働いてみると、病院での知識が活かせているのが実感できますし、また病院に戻ることもできるのでキャリアの選択肢も複数あります。私はチャレンジしてよかったと感じますね。
とはいえ、施設看護師を目指すなら病院である程度の経験を積んでからの方が良いと思います。特養など完全に入所型の施設なら経験があまりなくても大丈夫だと思うのですが、当施設のように訪問看護があると話は別です。利用者さまの状態が正常かどうかを見分けなければならないので、幅広い疾患に対する知識が必要だからです。また、施設看護は、病院より医療処置が少ないため、状態の落ち着いた利用者さまを長く看たいという方も多く働いています。一方、私は急性期が好きですが、それでも楽しく働けています。未知の領域でありましたが、病院経験があったからこそ、それを活かして生活の支援ができていると実感しますね。
ーーありがとうございました。
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