病院・・・それは人が生まれ、そして、去っていく・・・この世以外のどこかに近い場所・・・。
だからでしょうか? 夜中も休まず仕事をしているからでしょうか?
看護師に奇妙な体験について聞いてみると、色々な体験をしている方が結構いらっしゃるんですよね。
怖い話、不思議な話、ちょっといい話・・・看護師が体験した奇妙なお話から、ひとつ、ご紹介しましょう。
私が3年前に勤務してた小児病棟で体験した話です。
そこは入院治療がメインで、外来は紹介のみでした。私が受け持っていたのは、年長児で一部屋に4床ずつの4階フロア。
付き添い入院は原則なし。21時以降は面会に来ていたご家族が帰ります。
ある日、原因不明の熱発と関節痛で入院していた9歳の男の子・Kくんが、消灯した後の廊下の角で、壁に向かって話しているのを見かけました。
寝ぼけているんだな、と思った私は、K君の視界に入ってから、腰を屈め、優しく肩を触って、「ベッドに戻ろうね」と言いました。
Kくんは、はっきりと目を開け「うん」と素直に従ってくれたのですが、翌日も、その翌日も・・・毎晩、同じ廊下の角で壁に向かって話しているのです。
しかも、Kくんの目の下がだんだん青黒くなっていきました。
ドクターにそのことを報告しても、「寝不足なんだろ?」、「病状が改善しないからなあ」などと言って、廊下でのことは真剣に取り合ってもらえません。
でも、実際にKくんの様子を見ている私には、あの角の壁に何かがあるように思えてならなくなり、勤務のない日まで気になるようになってしまったのです。
そこで、私はKくんを観察してみることにしました。
いつもの角に立ったKくんは、自分の背より少し上の方を見て、小さな声で話しています。
私は少し離れて、Kくんの言葉を聞き取ろうと耳を澄ましていました。
するとKくんが、まったく振り向いていなかったのに「あの看護師さんは大丈夫だよ」と言ったのです!?
私は背筋に寒気を感じました。
Kくんのちょうど視線の先あたりの壁は、角なので、非常灯が影を作っています。いつもの病院の、いつもの壁・・・ですが、直視した瞬間、かすかな匂いを感じました。
その匂いは、よく高齢の男性の方からする匂いでした。田舎の木造家屋のような、古い着物のような、どこか懐かしい匂いです。
はっきりとした匂いに、私はそれがK くんのおじいさんではないかと思いました。
私は、幽霊などは信じない方ですが、その匂いやKくんが怖がりもせず毎晩、来ることを考えると、おじいさんがKくんが可愛いばかりに、一緒に連れて行こうとしているのではないかと心配になりました。
そこで、私はいつものようにKくんの肩に手をかけると、壁に向き直り、勇気を出して「Kくんが元気に大きくなって欲しいなら、ちゃんと成仏してください!」と怒鳴りつけました。
その後、Kくんにも、「ちゃんとさよならしなさい」と言うと、Kくんは素直に「バイバイ」と言って、病室に戻って眠りました。
一番、怖かったのは、翌朝になってKくんの熱が嘘のように下がり、関節も痛くないと聞いたときです。
昨夜、私が退治した何かは、本当にそこにいたのかもしれない、と思うと恐ろしく、その後に私が熱を出したほどでした。
今も、夜勤の時、廊下の角は見ないようにしています。
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夜間の廊下でそれを体験したときより、翌朝の方が恐怖を感じるものなんですね。
もしかしたら、Kくんが大好きなおじいさんの死を受け入れるための心の病だったのかもしれないし、本当におじいさんがKくんに会いに来ていたのかもしれません。
真実はわかりませんが、とにかくKくんが回復してよかったですね。
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