化学療法を受ける患者はとても不安定な心身状態にあると考えられます。私たち看護師はどのようにして、複雑な心理状況にある患者とコミュニケーションを図っていけばいいのでしょうか?今回は、化学療法を受ける患者とのコミュニケーションについて考えていきたいと思います。
「化学療法とは抗がん剤治療であり、その治療を行うということは、患者の命の危機的状況にあるということである」
*このことから、患者は肉体的・精神的・社会的にダメージを受けている状態であるといえます。『余命宣告後の患者とのコミュニケーション』に出てくる、エリザベス・キューブラー・ロス医師(スイス)の提唱する、『死の受容5段階モデル』のような心理的過程をたどるといってもよいでしょう。
しかし、化学療法を受ける患者はまだ余命宣告前の段階であり、化学療法やその他の治療法により回復していく可能性もあるのです。その点が余命宣告後の患者とのコミュニケーションとは違ってきます。患者の心理として挙げられる”思い”をご紹介します。
・不安⇒自身の今後に対する漠然とした不安を含む、治療・副作用の問題・余命など
・絶望⇒化学療法=がんという現実と自身の病気に対する絶望感
・葛藤⇒受け入れざるを得ない病気という事実を受け入れることがあらゆる葛藤を生む
・焦り⇒健康を取り戻すことや、社会的地位の安定を求める欲求から生まれる
・希望⇒化学療法(やその他の治療)により、健康を取り戻せるという思い
などです。
1.医療従事者は専門用語を多用するが、患者側は医療知識が乏しく、理解困難な状況に陥りやすい⇒円滑なコミュニケーションを図れていないと考える
2.患者は精神的にも肉体的にもダメージを受けている状態⇒コミュニケーションの妨げになると考えられる
3.化学療法の副作用に伴う各症状による患者の変化⇒容姿の変化・体調の悪化や苦痛を伴い、コミュニケーションの妨げになると考えられる
4.化学療法に伴う重大な副作用に繋がる情報の共有が難しい⇒化学療法による下痢や尿量減少など、生命に関わる情報をいかに看護師に伝えてもらえるかが課題になると考えられる
上記した問題点を受けて、看護師として患者やそのご家族に対し、どのようにアプローチしていくかを考えていきます。
1.医療用語・専門用語を使用しつつも、患者にわかりやすい言葉選びをしながら、正確に病状・治療方法・効果・副作用などを伝えていく。その際には、患者がどのくらい理解できているか?適切な表現であるか?など、観察・評価しながら行っていく
2.患者が話しやすい環境作りを行っていく。落ち着いた雰囲気の部屋をセッティングしたり、静かなベッドサイドに訪問したり、患者がリラックスできるような環境を創造していくこと
3.できるだけ安楽な態勢でのコミュニケーションを図っていく。2.でもご紹介したように、例えば、化学療法の副作用である脱毛を気にされている場合、なるべく他者の目に触れない場所選びをしたりするなどの配慮を十分に行うことで、患者に安心感を与えていく
*コミュニケーションは繊細な心遣い、気配りが求められるので、看護師はそういった配慮を十分に行えるようにしていけることが重要である。
Case1:胃がんで化学療法を受けた患者Aさん
「Aさんは手術後に化学療法を始め、激しい嘔気に悩まされていました。もちろんお食事もままならず、お話をするのもつらそうなご様子です。
看護師はコミュニケーションとして、会話だけではなく、背中を擦ったり、手を握るなどのスキンシップによるコミュニケーションを図りました。
苦しい中Aさんに『背中を擦ってもらうと楽になる』と言ってもらえた時には、スキンシップが患者さんにとってケアの一部になるということを実感しました」
Case2:肝臓がんで化学療法を受けたBさん
「ご自身の病を受け入れられないまま化学治療を開始したBさん。倦怠感と嘔気、嘔吐に苦しんでいらっしゃいました。それでも話すこと自体は好きな方だったので、看護師とのコミュニケーションは図れていました。
主に話を傾聴する姿勢でBさんと接していくうちに、Bさんの気持ちに変化の兆しが。ある日、『俺も頑張らなくちゃな。みんなも頑張ってるもんな』という言葉が聞かれ、思わず涙が出そうになりました。傾聴すること・気持ちに寄り添い共感することが大事ですよね」
Case1:乳がんで化学療法を受けたCさん
「乳房を切除後、心の傷も癒えぬまま化学療法を受けました。副作用のことは説明がありましたが、髪の毛がズルズル抜けていく様子に私はパニックに…。
そんな中で私を支えてくれたのが看護師さんたちです。
バンダナをくださったり、いろいろとお世話になりました。泣いて泣いてろくに言葉も出ないのに、側に付いていてくれたりしました。
どれだけ心強かったかわかりません。余計な言葉なんていらなくて、一緒に居てくれるだけでいい。そんな風に思いました。ありがとうございました」
Case2:骨髄性白血病で化学療法を受けたDさん
「娘が白血病と診断され、化学療法を受けました。その時、説明してくださった看護師さんが先生の言葉を一般人の私でもわかりやすい言葉で通訳するように説明してくださったんです。
あの時は気が動転していましたが、おかげで説明内容がスッと頭に入ってきました。まだ幼い娘にもとてもわかりやすく話してくれました。かなり不安で、それでも何をどう質問すればいいのかもわからなかった私にわかりやすく説明してくださったことは、本当にありがたく、感謝しております」
コミュニケーションは治療を受ける側の患者にとっても、私たち看護師や医療従事者にとっても非常に重要です。円滑なコミュニケーションから得られる様々なメリットを活かして、良い治療環境が築けるようにできるといいですよね。
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