

他職種が訪問看護師との連携についてどう考え、どんな経験をしてきたかを知り、連携を円滑にするヒントを探るシリーズ企画。第2回のケアマネジャーに続き、今回は理学療法士の三浦祐司さんに話を聞きました。

理学療法士は訪問看護師にとって連携の機会が多い職種。
そして三浦さんは訪問看護ステーション勤務を通じての内部の訪問看護師との連携、訪問リハビリ事業所のスタッフとしての外部の訪問看護師との連携、どちらの経験もあります。そんな三浦さんに、連携のポイントや具体例をお話しいただきました。
―訪問看護師と理学療法士の連携で、取り組むケースが多いものはなんですか?
三浦:高齢者のケースで多いのは、排泄のリハビリです。
たとえば訪問看護師さんに同行するケースだと、まず理学療法士から「今、この利用者さんはこんなふうにトイレ動作ができますよ」と伝え、看護師さんに実際に介助してもらいます。
うまくいかなければやりづらい点を聞いて、理学療法士が筋力、動作、認知機能などの観点から、どこにどんな問題があるかを評価します。
そしてその評価を看護師さんにフィードバックし、再び介助する…という流れを繰り返し、利用者さんの機能アップを図るんです。このサイクルは、両職種が連携する形の1つですね。
―訪問看護師からは連携がどのように役立つと言われますか?
三浦:やはりADLの状態や評価が分かるのは介助の役に立つと言われますね。
もちろんこちらからお伝えするだけではなくて、訪問看護師さんから、利用者さんの尿意、便意の状況を教えていただくこともあります。「ある」「ない」「かなり曖昧ですが、時間誘導で行けますよ」といった情報を頂け、リハビリの方法を考えるうえで役立ちます。
排泄を例にしましたが、このようにリハビリは一職種だけで完結するものではなく、お互いに情報共有しながら進めることが重要だと思っています。
―利用者のお宅に行く頻度が高い訪問看護師に、直近の様子を確認するために連絡を取ることも多いと思います。それはリハビリにどう活きますか。
三浦:リハビリは精神状態に合わせたアプローチが必要なので、状態を聞くことで「どんな雰囲気で接すると良いか?」「どんな会話内容が適しているか?」を判断しやすくなります。
例えば、がん患者さんでも、抗がん剤治療の影響でうつ状態になったり、倦怠感や痛みの強さによって元気がなかったりします。日によっても、一日の時間の中でも変動しますしね。
―情報によって、その日のリハビリ内容を変えることもあるのでしょうか?
三浦:ありますね。たとえば訪問看護師さんから「今日は体調が良さそうですよ」と情報をもらって、様子を見ながら歩く距離を伸ばしたり、活動量を増やしたり。
逆に「今日はあまり元気がなく言葉が少なかったです」と言われたので私が詳しく見て、空気をうまく吸えずに苦しそうだと分かったことがあって。医師と訪問看護師に伝えて、「感染症がありそうだから、対応しましょう」となったケースもありました。
糖尿病の利用者さんのエピソードで…訪問看護師さんから「今日は気分が優れないみたい」とお電話を頂いて我々が訪問してみると、足の指にすごく小さな血の塊ができていて、指の壊死が始まっていたこともありました。こうした小さな変化に気づき合い、情報共有できると助かります。
―やはり「情報を得る」という面は、理学療法士にとって訪問看護師との連携が生きるポイントなんですね。
三浦:看護師さんは、コミュニケーションが上手な方が多いですしね。利用者さんやご家族からの希望、要望、本音などを聞き出して伝えていただけると、とても助かります。
その日のメニューの調整や声掛けでも役に立ちますし、リハビリ計画を作成・実行するうえで、利用者さんやご家族のことを知ることは大切ですから。
―在宅の理学療法士が働く場所には、①訪問看護ステーションと、②そのほかの医療機関や訪問リハビリがありますよね。仕事内容や看護師さんとの連携の取りやすさ係はどう違いますか?
三浦:仕事内容に関しては、まず訪問看護ステーションで関わる利用者さんは、生活期(慢性期)の方が中心で、身体機能の維持や悪化予防を目的としたリハビリが多くなります。
一方、病院やクリニックでは急性期、回復期のリハビリも多く、 生活期(慢性期)の場合でも、身体機能が改善する傾向にある方が多くなります。
内部と外部で比べると、やりとりのしやすさが違ってきますね。
外部の訪問看護ステーションでいうと、事業所によっては24時間営業だったりと勤務時間が異なりますよね。MCS(医療情報共有システム)でやりとりできるケースもありますが、MSC未加入の医療機関も多く、その場合はFAXや電話でのやり取りが多くなるので手間がかかります。
―訪問看護師との連携が活きた、印象に残っているケースがあれば教えてください。
三浦:ASL(筋萎縮性側索硬化症)で、在宅で療養されている女性のケースです。最初は訪問リハのみが入って、呼吸状態の評価や、最低限の筋力を維持するためのリハビリをしていました。
症状が進行してADLが低下してきたので、訪問看護師さんを入れてはどうかと提案しました。でもご家族はまだ大丈夫だと思われていたようで、「そのようなサービスは入れたくないです」と乗り気ではなくて。
―それでどうされましたか?
三浦:知人の訪問看護師さんに相談して、一度お試しで同行してもらいました。女性で年齢も近かったのでご本人は話しやすかったようで、安心された様子で。そしてケアプランに訪問看護を組み込んでいただいたんです。
入った後に看護師さんがご本人から話を聞き出してくれて、排泄にすごく困っていることが分かりました。手が動かないので自分で拭けなくて、旦那さんが毎回介助していたと。そこで、陰部を洗浄できる機器を入れて、旦那さんの介護負担を軽減できました。
ALSは進行性の疾患のため動作が徐々にできなくなるのですが、排泄などセクシャリティに関する部分については性別の違いで聞くことが難しい場合があります。進行には個人差があり、適切な時期に聞き出すことが必要な情報もあります。
ですので入浴についても、看護師さんが入っていただいて困りごとを把握して、段階に応じて手すりと昇降式の電動機器やシャワーキャリーも導入できた。これは大きな収穫でした。
―がんの利用者さんが多いとのことでしたが、印象に残っているケースはありますか?
三浦:前立腺癌の70代男性の利用者さんです。医師には余命半年と言われ、退院時は要介護5、寝たきりの状態でしたが、ご本人は最期に旅行へ行きたいという希望を持たれていました。
―どんなリハビリをされたのですか?
三浦:体力温存療法を使ってリハビリを行いました。活動と休息の時間を明確に分け、エネルギーを節約しながらリハビリを行う方法で、がん患者や手術後の回復期などに使われます。
まずは座ることから始め、立って、ポータブルトイレを使う。次は自宅のトイレへ行く、そうしたことを少しずつできるようにしていきました。
歩行訓練を行ううちに、日中に2~3時間動けるようになってきたんです。「近所のコミュニティに参加したい」とおっしゃっていましたが、それもできるようになって、地域の方と一緒に花壇を整備する作業にも取り組まれました。
―訪問看護師さんとはどんな連携がありましたか?
三浦:そのときは、介護チームの一員だった訪問看護師さんに、体力温存療法の中で利用者さんが動ける時間に入るよう調整していただきました。
また、予後予測や旅行へ行けそうな時期をチームで話し合い、ご本人やご家族とリハビリの目標を設定するうえでの調整もしていただきました。
また、がんによる悪液質の症状があり、タンパク質合成よりも分解のほうが増えて筋肉量が減少していくので、その点もチームとしてご家族に説明いただいて、栄養補給の対策も取りましたね。
―旅行へは行けたのでしょうか?
三浦:はい。1年後に、お墓参りを兼ねて地元へ旅行に行かれました。息子さんが運転する車で奥さまも一緒に片道3~4時間かけて、1泊されたそうです。
お帰りになられて最初の訪問で、「行けて良かった~!」とおっしゃっていたのが印象的でした。本当に嬉しかったんでしょうね。それから半年ほどで亡くなったのですが、ご家族も「しっかり送り出せた」と悲しまずにいたのが印象的でした。

―看護師がよく使う専門用語で経験の浅い理学療法士だと分かりづらいもの、理学療法士がよく使う専門用語で経験の浅い訪問看護師だと分かりづらいものを教えていただけますか。
三浦:私が経験したもので思い浮かぶのは、前者だと例えば「ケモ」「コアグラ」「グル音」あたりですね。治療方法の略称や疾患に関わる専門用語ですね。
後者だと筋肉やその短縮した専門用語、たとえば「ハムストリングス」「ハムスト」あたり。あるいは「この痛みはインピンジメント症候群が起きているからだよ」と言って、「インピン…?なんですか?」、と聞き返されたことがあります。
▼三浦さんが挙げた、「理学療法士、訪問看護師が分かりづらかった言葉」
■理学療法士が分からなかったことのある言葉
| ケモ | chemotherapy(化学療法)の略。 |
| コアグラ | Coagulationの略で、血の塊、凝固した血。 |
| グル音 | 消化管の蠕動運動に伴って出るゴロゴロという音を「腸蠕動音」、慣習的に「グル音」とも呼ぶ。蠕動運動が低下すると消化に時間がかかったり、便秘の原因となる。 |
■訪問看護師が分からなかったことのある言葉
| ハムストリングス | おしりの付け根から太ももの裏側、太ももから膝裏周辺にある、3つの筋肉(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の総称。 |
| インピンジメント症候群 | 肩を上げていく際、特定の角度で痛みや引っかかりを感じて、それより挙上できなくなる症状をインピンジメントといい、インピンジメント症候群は、肩のこすれや肩関節への骨や軟骨、靱帯の挟まり込みなどが原因になると考えられている。 |
私の周囲では、お互いなるべく専門用語を使わないようにしています。利用者さんやご家族にもご理解いただけるようにも。
―三浦さんは介護、医療保険外の取り組みもされていらっしゃるんですよね。どんな目的からですか?またその中で、訪問看護師さんとのコラボもあるんですか?
三浦:個人企業を作り、介護・医療保険ではカバーできない、健康に関わる総合的な相談事業という位置づけで行っています。具体的にははり師、きゅう師の資格を活かした整体や、保険でできること・できないこと、各自治体の住宅改修への補助金に関する情報提供などです。保険内では埋められないことが増えてくると思うので。
訪問看護師さんとのコラボは、まだあまりないんですが、今後増やしていきたいと思っています。たとえば爪切りやネイルアートなど「爪の専門店」をされている看護師さんが地域にいますし、自費での旅行の付き添いも広まっていて…今後、看護師さんと一緒にいろんなことができればと思っています。 看護師さんがどんどんそういった業界に入ってきていただけると、面白くなってくるんじゃないですかね。
―最後に、訪問看護師さんにメッセージがありましたら、お願いできますか。
三浦:連携して働くことになって以来ずっと思っているのは、看護師さんってコミュニケーションの得意な方が多くて、忙しい中でも利用者・患者さんとのやり取りを大事にされているんだなということ。24時間対応が必要な事業所で働かれる方もいて、頭が下がります。
その中で、時々ですが、徐々に視野が狭くなっていかれる方も目にします。
たとえば利用者のケアや治療に専念するあまり、その方の家計状況や、食事の準備など利用者の周辺の家事を誰が行い、負担がどのくらいか、といった周辺環境についての視点が疎かになったり。もちろん、どの職種でもあることですが、看護師さんは業務が幅広いこともあるのでしょう、ほかの職種と比べてその傾向を感じます。
周りには、リハビリ職や介護スタッフ、ケアマネジャーさんなど、支え合う仲間がいると思います。時々捕まえていただいて大丈夫ですので、ゆっくり話す機会があると良いなと思います。
その中で、自分たちのこと、利用者さん、患者さんのこと、いろんなことを話し合えれえれば、ほかの人たちの気持ちや自分の振り返りなどにつながり、後々大きな成長につながっていくのではないでしょうか。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載
コメントはありません