

他職種が訪問看護師との連携についてどう考え、どんな経験をしてきたかを知り、連携を円滑にするヒントを探るシリーズ企画。第1回の医師に続き、今回はケアマネジャーの白木裕子さんに話を聞きました。
基礎資格として”看護師”を持つ白木さんは、ケアマネジャーになって現在25年目。利用者の「こう暮らしたい」を実現するために、チームでどう協力しているのか。看護師に知っておいてほしい連携のコツや実際のエピソードを伺いました。
―利用者への支援を進めていく中で、訪問看護ステーションとの方向性や考え方のズレを感じることはありますか。
白木:20年くらい前は時々ありましたが、今では在宅支援や理解が進んだことで、本当に少なくなりました。でも、ゼロではありません。
―なるほど、減ったとはいえ完全にはなくなっていないのですね。どんな理由で意見の違いが生じる場合があるのでしょうか?
白木:基本的に医療は「治す」、介護は「生活を支える」という視点が強く、そこから意見の違いが生じることが多いんだと思います。

―視点の違いですね。具体的にはどういった点でズレが生じることがありますか?
白木:ポイントはいくつかあります。
▼白木さんが挙げる、ケアマネジャーと訪問看護師で意見に食い違いが生じがちなこと
| ポイント | 概要 |
| ①本人が在宅生活の継続を望む場合の「在宅か施設か」 | どこまで自宅で暮らせるかは、専門職それぞれの考え方や見立てがあり、意見が異なる場合がある。 |
| ②どこまで経口摂取を維持するか | 重度の摂食嚥下障害で誤嚥性肺炎や窒息のリスクがある場合に、経管栄養にするのか、楽しみ程度に経口摂取も維持するのか。 |
| ③入浴を行うか清拭に替えるか | 「ご本人の体力面からもう入浴は難しいのでないか」「とても風呂好きだったので入れてあげたい」と意見が分かれることがある。 |
白木:たとえば、「在宅か施設か」で意見が分かれるケースです。利用者さんが「リスクを負ってでも最期まで自宅で暮らしたい」と強く希望していて、苦労して夫婦で建てた家だからという背景があるケースがあったとします。
このときケアマネジャーが在宅生活を続ける方法を探る一方で、訪問看護師さんは「夜中に家から出ていってしまったら?」「転倒したらどうする?」といったリスクから、「施設に入所したほうが良いのでは」と考えることもありますね。
ご家族がいらっしゃる場合はその意向も大きな要素になりますし、想定されるリスクが在宅生活の中で対応できるかどうか、医師の意見も必要です。
ただ、在宅支援の経験や個々の考え方によって、看護師さんの中でも意見の違いが出ることはあります。ですので、職種間の齟齬を埋めること自体が課題ではなく、「利用者さんを中心に据えた場合に、どんな選択が良いのか」という議論が大切なのかなと思いますね…!
―興味深いです。意見がズレた場合は、どう対応されるのでしょうか。
白木:私の場合は、できるだけご本人や家族のご希望に添いたいと思っていて、普段から「どこでどのように終末期を迎えたいか」のご希望を繰り返し聞き、生活歴※も確認するように工夫しています。そして、各担当者ともカンファレンスを重ねて、可能な方法を探り、方向性をすり合わせていくイメージです。
在宅生活継続の限界点や最適解はケースによってもちろん異なってくるのですが、「利用者の意向に極力沿う、利用者本位」が大切なポイントです。
―終末期での連携について詳しく伺いたいです。
白木:看取りが近付くと、訪問看護師さんとヘルパーさんは頻繁にお宅に訪問してご家族とも密にやり取りすることになります。
終末期は時間との勝負。医療面は看護師さんが主体となり、ヘルパーさんが介護面を、ケアマネジャーが「繋ぐこと」を担当します。そんなふうにチームで情報を共有し、各職種の役割を果たすことで、看取りまでスムーズに進められると実感しています。
―各職種の役割をそれぞれ果たす、チームプレーですね。ケアマネジャーと訪問看護師がうまく連携するのに必要なことは何でしょうか?
白木:相手が理解しやすいように、できるだけ専門用語を使わずやり取りしてくださる看護師さんを見ると、非常に助かるな…と感じます。
ケアマネジャーの半分近くは基礎資格が介護福祉士で、医療に強くない方もいらっしゃるためです。

▼わかりにくい伝え方と、わかりやすい伝え方の例
| 例 | 理由 |
| 分かりにくい: 「心不全で血清クレアチニン値が……、クリアランスが……。」 | 用語が専門的なため。 |
| 分かりやすい: 「ペースメーカーは昼間の脈拍が〇〇、夜間は△△に設定しています。そのうえで、▽▽な状況だったらすぐに訪問看護ステーションかクリニックに連絡してください」 「『慢性腎不全で、□□の値が高くなっているので、■■の点に気をつけてください』、と先生からコメントがありました」 | どのような条件になったらどうすれば良いのか、内容が具体的なため。 |
―専門用語についての話がありましたが、情報という点で、ケアマネジャーが、訪問看護師から共有してもらえると助かるのって、どんなことでしょうか?
白木:利用者さんの心身の状態の変化を報告してもらえると、私たちケアマネジャーはすごく助かります。たとえば以下のようなことです。
▼訪問看護師から報告してもらえると、ケアマネジャーが助かる主なこと
細かい数値というよりは、改善したのか、悪化したのか、どの程度変わったのか?が気になるポイントです。
加えて、もし看護師さんが利用者さんにとって必要そうだと気づいたことがあれば、提案いただけるととても嬉しいです。
たとえば「薬の管理のために薬剤師さんに来てもらったらどうですか?」「食べにくそうなので、歯科医に一度行くと良いかもしれませんね」といった形で、異なる視点から提案いただけると、ケアマネージャーも発想を広げられるはずです。
―話が少し前に戻るのですが、そもそも、ケアマネジャーが訪問看護の導入を利用者に提案する契機について、お教えいただけますか。
白木:利用者の担当になってケアプランを立てる際に、医師から主治医意見書をもらうのですが、「訪問看護」の欄にチェックマークが入っていることがあります。それが契機の1つです。
私たちケアマネジャーは、なぜ必要か?をアセスメントしたうえで訪問看護の活用を検討します。
―そういう流れなんですね。その後はスムーズに導入が進むものでしょうか。
白木:その点はケアマネジャー側の課題もあって。ケアマネジャーの半分近くは基礎資格が介護福祉士と話しましたが、医療への苦手意識から、利用者さんへの訪問看護の提案や、医師への訪問看護指示書の作成依頼が不得意な方もいるんです。
とはいえ訪問看護の検討はとても大切なことですし、導入を契機に、医師や看護師との連携も取りやすくなります。「何かおかしいな」と思ったときに、相談しやすい訪問看護師さんがいらっしゃれば、自己判断でのミスも防げますしね。
―ケアマネジャーの立場から、こんな訪問看護ステーションは選びやすい!というのはあるんでしょうか?
白木:そうですね、連携がしやすいことが一番大切かなと思います。
たとえば重度の方や難病の方の場合、複数の事業所さんに入ってもらうことがあるんです。土日に営業していない事業所があったり、1日に複数回訪問が必要なケースがあったりするためです。
複数事業所での対応になったときも、看護師同士が手順書や連絡ノートで細かくやり取りしたり、訪問に穴を開けないよう柔軟に動けたりするステーションだと、チームを組みやすいと感じます。
―ちなみに、介護保険から医療保険へ切り替えた場合に、医療制度上はケアマネジャーへの報告義務がなくなって、報告が不足するケースがあると聞きました。実際のところ、チーム内の情報共有に影響が出ることはあるのでしょうか。
白木:末期のがんやALSなどでは医療保険でサービス提供を行うよう定められていますし、急性感染症などの急性増悪期や真皮を越える褥瘡がある場合にも、医師の特別訪問看護指示書の発行によって医療保険に切り替えることがあります。
それで、そうした場合も医療単独になるわけではなくチームでアプローチするので、連携方針は変わらないです。もし必要な情報が届かないことがあったら、むしろ我々ケアマネジャーが積極的に取りにいくと良いと思いますね。
―これまで、訪問看護師と連携して良かったと感じたケースを伺いたいです。
白木:訪問看護師が入るケースで多いのは、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、全身性エリテマトーデスなどの難病の方です。喀痰吸引、胃ろう注入などの医療ケアが必要なため、訪問看護師が健康面を支える軸となって、介護職がそれを補完する形になります。
看護師さんには、健康面での注意点を家族やヘルパーにも伝えるなど、重要な役割を果たしていただきます。それがうまく進んで利用者さんやご家族の満足につながると、連携がうまくいったと感じますね。
具体例では、認知症の方で便秘を訴えられず不安や苛立ちを感じておられたケースで、訪問看護師さんに状態を確認してもらい、その情報をもとに医師に対応を依頼したことが何度もあります。
ほかにも糖尿病では傷が治りづらくなり、自己流で足の爪を切ると感染症を起こすリスクがあるので、「足の爪切りを訪問看護師さんにお願いしましょう」と利用者さんやご家族に提案したことも。
―近年では一人暮らしの方も増えていますが、その場合はいかがですか?
白木:同様に看護師さんが入ってくださると安心感が増しますね!たとえば「水分が摂れていない」「便秘が続いている」といった健康管理の課題に気付けるからです。
認知症に加えて高血圧や糖尿病を抱えている利用者さんで、健康管理に意識が向かない方もいます。
「薬は飲んでいる」とおっしゃるものの、訪問看護師さんのサポートのもと服薬カレンダーを使い始めた結果、押入れに入れたまま忘れていた薬が見つかって。そんなふうに「薬をきちんと飲めていない」と発見できたケースもありましたよ。
―健康管理の面で連携の良さがあるのですね。一方で、課題に感じる点はありますか?
白木:そうですね…利用者さんの状態によっては「この時間では足りません」というケースが時々あります。
たとえば介護保険での入浴と清拭。以前よりも利用者さんの動ける範囲が狭くなり「1時間では終わらないので時間を見直してほしい」と要望を頂くことがあります。
私の場合は、同行したヘルパーさんと現場を確認し、次回から看護師さんとヘルパーさんに共同で介助してもらったり、1時間半に伸ばしたりします。
ただ、時間を延ばすと介護保険の区分支給限度額を超えてしまって自己負担が増える場合もあるので、どうすべきか議論になることがありますね。

―ケアマネジャーと訪問看護師との理想的な関係は、どんなものだとお考えですか。
白木:オーダーを出す人と受ける人というよりも、対等な関係でしょうか…!
両者の視点は異なるのですが、共通認識として「利用者中心」を持ちながら、お互いの専門性と違いを尊重できる関係が築けるととても素敵だなと思います。

―ありがとうございます。最後に、訪問看護師の方々へ伝えたいメッセージがありましたら、お願いします。
白木:訪問看護師さんは、利用者さんの在宅生活、そして地域にとって本当に欠かせない存在です。
地域には、「認知症カフェ」や「通いの場」といった交流の場所があります。こういった場所があることを知っていただけると、訪問看護師さんが地域との繋がりをさらに深めるきっかけになるかもしれません。
実際に私たちの地域の勉強会では、認定看護師さんによる研修を受けることがあり、これが他職種にとても役立っているんです。そういった専門職間の学び合う繋がりにもぜひ関わっていただけると、地域全体がさらに良い方向に進むと思っています。
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2025年2月19日 19:58
訪問看護師に興味があります。外からだとどんな仕事なのかあまり正直イメージできないので、なるほど納得、勉強になりました。