仕事
2022.10.11
西オーストラリア・パース在住11年、パース市内の公立病院一般内科勤務歴10年目のKayが、日本の病棟ではありえない!仰天エピソードをお届けするシリーズ第4弾です。
今回は発熱時の看護やハサミのことなど、処置に関する日本との違いについてご紹介します。
日本のご家庭なら体温計が家に一本ぐらいはあると思います。
小さなお子様がいらっしゃるご家庭ならば保育園に行く前に子供の体温を測ったり、プールの日は家庭での体温測定が必要になったりしますものね。
学生時代に、ちょっと具合が悪いなと思って自分で熱を測って、「思ったより熱が低かった…」なんてがっかりしたりした記憶ありませんか?
それほど、日本では体温計は気軽に体調を知る時の目安になる、なじみの深いものだと思います。
オーストラリアで働き始めて思ったことは、自分の平熱を知らない患者さんがあまりにも多いことです。
バイタル測定でデジタル式の体温計(こちらでは腋窩にはさむよりも舌下式の法が一般的。小児科や開業医のクリニックでは耳に当てて計るタイプが主流)で体温測定をして、「36.8度ですね」と伝えても「それって、良いの?悪いの?」と聞かれることが多いのです。
ちなみに、オーストラリアでの温度の表示は日本と同じ摂氏(℃)です。(アメリカなどはカ氏〔?〕が使われています)
平熱を知っている患者さんは経過が長くて入院慣れしている人、もしくは医療従事者の人くらいだと思います。
もちろん、患者さんにそう聞かれた時は「とっても良好ですよ!」と笑顔で答えると皆さん安心なさいます。
オーストラリアの病院で働き始めてすぐの時に受け持ち患者さんが熱を出してしまいました。
顔も火照って赤くなっていたので、氷枕を作ろうと思い病棟中をウロウロして探しましたが見つかりません。
同僚に聞くと「そんなもんないわよ」とあっさりと言われてしまいました。
え?氷枕がない?遠い昔看護学校で「発熱時の看護」の基本として習った冷罨法。
腋窩部(わきの下)や鼠径(そけい:太ももの付け根)部に氷嚢を当てることによってその下に流れる大きな血管を冷やし、体の熱を下げると習ったんですが・・・。
同僚ナースに「受け持ち患者さんが熱があるのですが」と相談したところ、返ってきた答えは「体温が38.0度以上なら受け持ちのDrに報告する(Drによっては血液培養を取る人もいるので)。そして、パラセタモール(Paracetamol:日本ではアセトアミノフェンで知られている解熱鎮痛剤)を飲ませる」でした。
このパラセタモールはこちらではとってもポピュラーな薬で市販の薬局で購入できます。
さらに驚いたことに、この薬はDrによる処方がなくても看護師が処方して患者さんに飲ませる事ができるのです。
またまたびっくり!でした。
では、患者さんが発熱して暑がっている時はどうするのか?
かかっているブランケットや掛物をはいで「扇風機で風を当てる」のがこちらでは主流のようです。
扇風機は病院内の物品倉庫に保管してあり、在庫があれば貸してくれます。
だから、冬でも患者さんの部屋で扇風機を見かけるので、ちょっとびっくりしますよ。
もちろん、患者さんの希望があれば小さいタオルを冷たい水で濡らして額に当てたり、顔を拭いたりもします。
私の病棟では、手や腕などの腫れを冷やしたい時は、検体を入れて送る為の使い捨てのチャック付きの袋に、飲水用の氷を詰めてタオルや枕カバーに包んで患者さんに渡しています。
他の病院や病棟では暖めても冷やしても使える「メディパック」と呼ばれる、中に青いジェリーのようなものが入っているパック(お店でケーキなどを買った時についてくる保冷材を大きくしたようなもの)を使っているところもあるそうですが、基本的に他の患者さんとの共有はせずにその患者さんが退院した時点で破棄するそうです。
個人的には熱を出した時には扇風機よりも氷枕のほうが気持ちがいいなと思うのですが。
これも、文化の差なのでしょうか?
オーストラリアの病院には包交カート(病棟で傷の処理に使う消毒液や滅菌ガーゼ、セッシなど必要物品が乗ったカート)がありません。
褥瘡処置、傷の処置を行う時はその患者さんの「Wound care management plan:傷のケアプラン(ケアプランには傷の大きさ、処置の手順、処置に使う物品、処置の頻度が書いてある)」に従って患者さんのベッドサイドまで処置に必要な物品を持って行って行います。
傷口の処置なので感染症を起こさないように無菌ガーゼ(5枚ずつパックされています)を使うのはもちろん、消毒セット(トレイ、プラスチックのセッシ3本、6枚の小ガーゼや綿球、処置の時に下にひくシートなどが入っています)も包帯もすべて使い捨て。
びっくりしたのが、この滅菌ガーゼなどを切る一本ずつパックされている「滅菌ハサミ」が使い捨てだったことです!
日本で使っていたものより少し薄いけど、とても使い捨てとは思えない立派な作りのハサミ。
滅菌ガーゼを傷の大きさに合わせてチョキンと切って、ポイッ??
「もったいない文化」の日本人の私、もちろん、使用後は持って帰りましたよ!
だって、まだまだ使えるハサミを捨てるなんて、私にはできなかったんです。
でも、しばらくして思いました。
ハサミってあまり消耗しないんですよね…。
もうおわかりの通り、家には持って帰ってきたハサミがたまっていく状態に…。
これって、たぶん私だけじゃないはず!
オーストラリアのナースの家にはハサミがあふれかえっているのはそういうわけなんです。
今は使い捨てハサミも回収され院内で滅菌して再利用されるようになりました。
症状は同じでも、国によってその対処法や看護の仕方が全く違って、戸惑うこともあります。
今まで日本で当たり前のようにしていたこと、きっかけは何であれ「なんでだろう?」と初心にかえって考え直すことも必要ですよね。
そして、患者さんの状態を見ながら柔軟に対処する事はどの国に行っても同じことなのだと思います。
「レバウェル看護」を使うと、より詳しく話を聞くことができます。どんな転職先があるのか等も事前に知ることができます。
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