仕事
2021.9.15
本記事では、先天性ミオパチー患者を支援する団体、病気に苦しむ患者さんとご家族の悩みや不安に寄り添いIT技術でサポートする団体、産前・産後の女性に向けたケアプログラムの実施に力を入れている団体を紹介します。
特定の病気を患う方の気持ちになり、プロジェクトを発足したり、アプリ開発に取り組んだり、赤ちゃんを産み育てる女性の日常をより良いものにしたりと、団体それぞれが活動に対して並ならぬ思いを持っています。今回は、人々の暮らしに密着した、各団体の強い思いとその取り組みに迫ります。
先天性ミオパチーの会は、6歳の時に先天性ミオパチーの診断を受け、病気と共に人生を歩む伊藤亮氏が発足した団体です。
団体は先天性ミオパチーの社会の理解を深めると共に、地域格差がない医療体制の構築、早急な治療法の確立を目指して、講演会・相談会・プロジェクトなどあらゆる活動に力を入れています。また、伊藤氏は自身の経験を基に、呼吸ケア・リハビリテーションの必要性や人工呼吸器の適切な設定の重要性も発信しています。
先天性ミオパチーは、生まれつき筋組織の形態に異常があり、手足のみならず、呼吸をしたり食べ物を飲み込んだりする力も弱く、筋力低下が持続する進行性の筋肉の病気です。
先天性ミオパチーの症状は、新生児期から呼吸筋と哺乳力が弱い【乳児重症型】、発達の遅れで気付かれやすく、転びやすい、階段の昇降に手すりがいるといった症状がある【良性先天型】、小児期から筋力低下があったとしても症状は極めて軽く、成人になって肺炎になるなどして先天性ミオパチーが発覚する【成人発症型】の3つの型に分けられています。
団体では、先天性ミオパチーに関する講演会を開催しています。過去には、口から安心して食べるための呼吸リハビリテーション、気管切開を行わない呼吸補助法といった患者さんの為になる情報や、治療可能になった筋疾患の話、筋肉難病の治療法開発に関係するiPS細胞研究の最前線の話などの最新医療の情報に触れた内容の講演を行っています。
また、講演会と同じ日に相談会も実施しており、団体の学術顧問である医師の埜中先生、石川先生をはじめ理学療法士や作業療法士の先生を招き、病気やリハビリ、日常生活の相談に乗っています。メールからの相談も常時受け付けており、先天性ミオパチーを患う方々の不安や悩みの解消に尽力しています。
団体は、社会や先天性ミオパチー患者に向けた3つのプロジェクトを行っています。
1つ目は、国に先天性ミオパチーの難病指定を求める署名を308(ミオパチー)万人集める活動「308プロジェクト」です。
署名活動には、先天性ミオパチーをより多くの人に知ってもらいたいという背景もあり、さまざまな場所に出向き署名活動をし、オンライン署名も実施しています。その結果、多くの署名が集まり、厚生労働省へ4回に渡り署名と要望を届けた結果、2015年に先天性ミオパチーが指定難病に追加されることになりました。
2つ目は、鼻マスクの人工呼吸器を使用している患者さんの顔形状を3Dスキャナーや3Dプリンターなどの技術を使い、個人それぞれに合ったマスクを提供する「KAITEKIプロジェクト」です。これにより、長時間マスクを使用する患者さんの不快感を改善することを目指しています。
3つ目は、軽量コンパクト・シンプル・低コストの腹巻型呼吸補助具を開発する「HARAMAKIプロジェクト」。人工呼吸器を常に装着している方のQOLを高めるべく、携帯可能で着衣で隠すことが可能な腹巻型の人工呼吸システムの研究に取り組んでいます。
特定非営利活動法人エムアクトは、病気に苦しむ患者さんやその家族が抱える悩みや不安を調査・集約し、ITを用いた改善策を提供しています。
その一つの事例に、オストメイト患者の方が気軽に外出できるよう開発されたアプリ「オストメイトなび」があり、病気を患いながらも快適に日常を過ごせるシステムを開発・運用しています。その他、セミナーやシンポジウムの開催、ネットを通した情報提供も行い、医療の質の向上と患者さんのQOLの向上を目指しています。
オストメイトとは、病気や事故などの理由により、お腹に排泄のためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人のことをいいます。オストメイトの方々は、排泄物を一時的に受けるストーマ装具(パウチ)をお腹に装着した状態で日常生活を送っています。
団体が運営する「オストメイトなび」は、オストメイトの方々の為に作られたスマホアプリ。オストメイト対応トイレの場所がひと目でわかるマップを表示できたり、ストーマ外来設置医療機関やストーマ器具取り扱い店舗を検索できたりと便利な機能を備えています。
その他にも、電子版患者情報カードとして使えたり、セミナーや相談会の情報を把握できたり、全国の自治体の給付金情報を調べることができたりとオストメイトの方の日常に役立つツールがあるのも魅力です。
オストメイトの患者さんと関わる看護師さんは、このアプリを使ってみて、患者さんの立場に立って情報を収集してみてはいかがでしょうか?オストメイトの患者さんの外出に付き添う場合などに、オストメイトなびのマップがあれば、安心して出歩くことができるのではないでしょうか。
団体は、オストメイトの方に向けた動画配信サイトと情報サイトの「オスとぴ」を運営しています。動画配信サイトには、オストメイトへの理解を深めてもらうためのアニメーション動画をはじめ、オストメイトの方のインタビュー動画、トイレの使い方や入浴時のポイント、オストメイトの方向けの料理動画などがアップされています。オストメイトの方のリアルな実情や医療の知識として役立つ内容が充実しているので、気になる看護師さんはぜひチェックしてみるといいでしょう。
情報サイトには、オストメイトに関するニュースや書籍の情報、オンライン相談会の情報などが掲載されています。このように、団体は動画と記事を通して、オストメイトの方々に有益な耳寄り情報を届けています。
特定非営利活動法人 マドレボニータは、産後うつ・乳児虐待・夫婦不和などの産後が起点となる社会問題の解決を目指す団体です。
団体は、産前・産後の女性を対象にしたエクササイズやセルフケア等のプログラムの実施や、調査研究を通した啓発活動、法人向け産後の復職支援プログラムの提供、産後を迎えるカップルを対象にした講座・講演の実施など、多岐に渡る活動で産後ケアの普及を行っています。
また、産後ケアのインストラクター育成にも力を入れており、スクール形式のオンライン養成講座を実施しています。ボールエクササイズ指導士、産後セルフケアアドバイザーなどを含む4つの養成コースがあり、産後のセルフケアの知識と技術をしっかり身につけられるよう数ヶ月に渡って指導を行っています。
特定非営利活動法人マドレボニータでは、様々なタイプの産前・産後ケア教室を行っています。「産前・産後のセルフケア オンライン教室」では、ビデオチャットツールを用いて、全身をほぐすストレッチや、受講者同士が想いを分かち合う対話のセッションなど、女性の体と心の健康をサポートするためのプログラムを開催しています。
また、対面プログラムとして「産後ケア教室」もあり、出産でダメージを受けた体の回復を目的とした有酸素運動を実施しています。ここでも受講者がペアとなり話し合うコミュニケーションワークを行っており、母となった自分自身について、また一人の女性としての人生やキャリア、パートナーシップについての気づきや望みを分かち合う場を作っています。その他、有酸素運動のみに重点を置いた「産後のバランスボール教室」もあり、それぞれのニーズに応じた講座を提供しています。
団体が実施するインストラクター養成スクールでは、「認定産後セルフケアインストラクター」「准認定ボールエクササイズ指導士」「准認定産後セルフケア指導士」「産後セルフケアアドバイザー」の4つのコースが用意されています。
その中の1つ、産後セルフケアアドバイザーは、産後をとりまく社会問題への理解を深め、産後ケアの必要性を世の中に広めるためのスキルを習得できる講座です。こちらは産後が起点となる社会課題や、産後女性の心身についての理解と知識、産後のセルフケアが学べる内容になっています。産後ケアに対する知識や技術の向上を望む看護師さんは、ぜひ講座を受講してみてはいかがでしょうか。
団体は、女性の出産後の心と体の変化、産後の働き方、妊娠・出産で変化する夫婦関係などの調査研究も実施しています。その調査結果をもとに、産後に特化した機関誌や書籍を制作しており、産後の女性とパートナーのリアルな声、産後に起きる問題の原因と解決策も提案しています。
「レバウェル看護」を使うと、より詳しく話を聞くことができます。どんな転職先があるのか等も事前に知ることができます。