仕事をしている中で患者さんから好意を寄せられ、プライベートの誘いを受けることがありませんか?
看護師が患者さんと個人的な関係を持つことは好ましくありません。 しかし、看護という仕事の重要な部分として、「心に寄り添う」という面があるのも事実です。
では、患者さんから誘われた場合、看護師はどのような対処をすればよいのでしょうか?
今回は、ちょっと難しいテーマですが、患者さんから個人的な好意の誘いを受けた場合について、考えてみたいと思います。
これから看護師が患者さんから好意を寄せられ、誘いを受けた3つにケースをご紹介します。
※個人情報保護のために一部脚色させて頂きますが、話の髄は伝わるようにしております。
精神科急性期に入院してきた17才の男性患者・Aさんは、自傷行為で何度か入院を繰り返していた。3度目の際、受け持ちになったS看護師(28才)は、Aさんが自傷行為をしないよう、こまめに様子を見に行き、声かけをするようにしていた。
ある日、AさんがS看護師に、「一度でいいから一緒に出かけてくれたら、もう二度と(手首を)切らないって約束するから」と言ってきた。S看護師は、どう返答していいか悩み、「仕事以外で患者さんと会うことは禁止されているので」と断った。
その後、AさんはS看護師に暴言を吐き、服薬を拒むようになり、うつ状態が悪化。飛び降りるために窓につけられた柵を壊そうとしたり、食事拒否もするようになった。
S看護師は受け持ちをベテランに代わってもらい、担当にもつかないようになった。
Aさんは次第に落ち着きを取り戻し、退院していった。
Aさんが再入院する可能性を考えると不安。Aさんにどう断ればよかったのか、今でもわからない。
先輩看護師の意見
⇒このケースでは、S看護師がハッキリと断ってよかったと思います。Aさんの誘いを受けても建設的な解決策にはならないばかりか、トラブルになる可能性があったと思います。
ただし、S看護師はAさんから誘いを受け、断る前か直後に、他のスタッフに相談するべきでした。
Aさんは自傷行為を行う可能性のある患者さんですので、問題が起きてからではなく、早めに情報共有するのが望ましかったのではないでしょうか?
外科病棟に入院された36才の男性患者・Bさんは、腰の椎間板ヘルニアの手術予定だったが、手術により歩行ができなくなる可能性があることを恐れ、手術拒否。
受け持ちのN看護師(25)が、親身になって話を聴くことで、Bさんは手術の決意ができた。
術後は成功したが、術後のリハビリが上手く行かず、Bさんは落ちこむことが多かった。
N看護師が夜勤の時、Bさんは泣きながら「手を握っていてほしい」と言ってきた。N看護師が手を握るとBさんは安心したのか入眠。以後、N看護師が夜勤の時は、Bさんから手を握るようお願いされるようになった。N看護師は戸惑いながらも応じた。
1週間後、Bさんはリハビリセンターへ移るため退院。その3ヶ月後、N看護師が帰宅途中にBさんと遭遇し、食事に誘われたが断る。その後、何度も帰宅途中で待っていて誘われたため、怖くなったN看護師は師長らに相談。男性看護師が付き添い、帰りにN看護師を待たないように警告し、Bさんはさんも承諾したが、N看護師の恐怖心は消えず、その職場を退職、転居した。
また同じようなことがあったら断りたいが、どうすれば相手を怒らせずに断れるのかわからない。
先輩看護師からの意見
⇒看護の中で、夜間に不安な患者さんを安心させてあげるという行為が必要な時はあります。ただ、Bさんが36才の男性で、N看護師はまだ経験の浅い若い看護師であることも考慮し、はじめの1回はしかたなかったとしても、夜勤のたびに手を握る必要があったかは疑問です。まずはじめの時点でペアに報告、申し送りでも伝え、主任などに相談するのが良かったように思います。
「また同じようなことがあったら」という不安があるのなら、新しい職場でも前もって上司に相談しておくことをオススメします。
がんセンターで働く看護師が、ステージ5で、転移も複数見られる72才の男性患者・Cさんから、誘いを受けたF看護師(45才)のケースです。
Cさんは「昔、好きだった女性に似ている」といつもF看護師に言っていました。入院当初は年齢よりひとまわりは若く見える雰囲気で、明るく親しみ安い人柄の方でしたが、治療が進むにつれ、体重が減り、肌にハリがなくなり、若々しさや人懐っこさがなくなっていきました。
それでもF看護師がいる時だけは気分良く、自分から話をします。そんな会話の中で、Cさんは「退院したら美味しいご飯をご馳走してあげるよ」とか「お礼に○○(ブランド)のネックレスを買ってあげるよ」などと言っていました。
F看護師は、Cさんが退院が難しい、あるいは退院できても自宅から出ることが難しいことをわかっていたので、この誘いに対しどう答えるべきか悩み、いつも曖昧に微笑んでいました。
Cさんは退院することなく最期を迎えられましたが、F看護師はCさんがなくなる数週間前に、「あなたが居てくれたから、心が崩壊しそうなときも頑張れました。ありがとうございました」と言う言葉をもらいました。
・実現するのが難しいから適当に「行きましょう」と答え、治療のモチベーションにしてもらうこともできるけれど、それがかえってCさんに「どうせ退院できないと思ってるんだろ?」とネガティブにさせる可能性があって(Cさんが時々、極端に落ち込まれる傾向があった)、なんと答えるのが正解かわからなかった。
先輩看護師からの答え
⇒CさんとF看護師の関係性がうまくいっていたケースだったので、おそらくどのような答えでも、乗り越えていけたのではないかと感じます。
しかし、患者さんとの関係によっては、「これが正解」というものはないと思います。
上記、3例からもわかるとおり、患者さんの病状や進行状態、性格、看護師との相性、患者さんの周囲の人間関係など、さまざまな要因により、どう接するのが良いのかは違うものです。
つまり、看護師が患者さんから誘いを受けた際にこうすれば解決できる、というマニュアルは一切ないのです。
この問題については、『個人で判断しないこと』がとても重要です。受け持ちの看護師として自分と患者さんの間で解決したい、良い道を見つけたい、という思いが生まれるかと思いますが、『患者さんからの好意』というのは、ひとつの症状、経過であると捉え、周囲にも共有するべき事項です。
治療において患者さんのメンタルの問題は、とても重要な事柄ですので、個人間の話に留めず、情報を共有し、その患者さんにおいての最善策を模索していくことが看護にとって必要なのではないでしょうか。
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