仕事
2017.2.7
西オーストラリア・パース在住11年、パース市内の公立病院一般内科勤務歴10年目のKayです。
「看護師と薬」について4回のシリーズに分けてご紹介しています。
第1回目では「薬品名と処方箋」、第2回目は「配薬方法、手順とナース処方」、第3回目は「点滴管理」についてご紹介しました。
最終回となる今回は「麻薬管理と薬剤師さん」についてご紹介しますね。
麻薬はスケジュール8と呼ばれ、病棟内にあり、入るのためには暗証番号が必要な薬剤管理室の中のカギのかかる戸棚に保管されています。
ストックされている麻薬の種類は病棟にもよりますが、同じ薬品でも強さ(mg)が違うなどをあわせると大体30種類ぐらいにものぼります。
麻薬はナース2人(どちらかが正看護師でないといけません。准看護師二人でのチェックは違法です)で麻薬管理ノートに患者名、使用日時、使用数、残りの数、処方ドクター名、チェックしたNS2人のサインを記入します。
チェックしたナース2人必ずそろって病室まで行き、一人がメッドチャート、一人が患者のIDを照らし合わせ、患者を確認し投薬します。
経口の場合は飲み込んだか口の中を確認します。
なぜかというと、患者さんによっては飲んだふりをして口の中に麻薬を隠しておき、後で口の中から出して他の人に譲渡したり、砕いて自己注射したりする事故につながるからです。
日本ではそんなことが起こるの?とびっくりするかもしれませんね。
ここ、オーストラリアでは実際に起こるのです。
もう一つびっくりしたのは麻薬の使用済みアンプルや経皮シールは保管せず、医療廃棄物のごみ箱(一度捨てると中身を取り出すことはできない仕組みになっている)に捨てることです。
いつもの癖で麻薬アンプルもうっかり破棄してしまって、医療廃棄物のアンプルの山をかき分けて麻薬アンプルを探した経験をしたことがあるのは、私だけではないはずです。
初めてこちらで、モルヒネの注射を準備した時に一緒に確認したナースが空になったアンプルを捨てそうになったので、「捨てちゃダメ!」と止めたことがあります。
そのナースからしてみれば「え?なんで??」と不思議だったことでしょう。
その時に麻薬の空のアンプルも半分残っているアンプルも医療廃棄物のごみ箱に捨てていいのだと聞いても、アンプルの山をかき分けた過去のトラウマが私を疑心暗鬼にさせ、しばらくは安心できませんでした。
準麻薬扱いの薬はスケジュール4と呼ばれ、同じく病棟内の薬剤管理室に麻薬の保管場所とは別の戸棚に保管され病棟の看護職員が持っているスワイプカードでアクセスすることができます。
準麻薬管理ノートに麻薬の時と同じように必要事項(患者名、使用日時、使用数、残りの数、処方ドクター名)を記入します。
麻薬を扱うのと違うのは一人で取り出せることで、ナースのサインも自分のもののみ記入します。
ただし、投与量の関係で錠剤の半分やアンプルの半量を破棄しなければならない時だけもう一人のナースに破棄するところを確認してもらい、サインをしてもらいます。
患者さんに投与時にもナース2人の患者確認はいりません。
いつもいつもお世話になっている頼れる味方の薬剤師さん!
日勤中は病棟に1名常在しており、一人一人の患者さんの処方をチェック、退院処方のチェック、看護師が書きだした患者さんの処方薬のオーダーをチェックして取り寄せてくれたり、退院する患者さんに退院処方の説明までしてくれます。
患者さんのメッドチャートに書かれているDrの個性豊かな文字をわかりやすく下に記載しなおしてくれたり、面倒くさい計算もしてくれて、処方量の横に「50mg錠剤×2個」など記載してくれたり、静脈注射点滴の場合は「50mlの生食バックに入れて30分かけて落とす」「20mlのシリンジに希釈し5分かけてプッシュ(この場合はポンプは使いません)」など、希釈量や投与速度までのアドバイスまで書いてくれます。
薬の事で疑問に思ったことは何でも聞けるので、頼もしい限りです。
薬剤師さんも24時間体制ですが、夜間は常在はしていません。
その代わり夜間はオンコールの薬剤師さんがいます。
オンコールの薬剤師さんがいるのに、その人が実際に病院まで時間外に呼び出されることはあまりありません。
なぜなら、オンコールの薬剤師さんが呼び出されるたびに病院は$300(約2万8千円)ものお金を手当として呼び出された当直薬剤師に払わなくてはならないからです。
呼び出す時は、かなり特殊な抗生剤や薬がDrの指示で緊急で使う時などで、そのシフトのリーダー業務のナースとAHCNS(After Hour Clinical Nurse:当直の師長さんレベルのナース)などに相談して呼ぶことが鉄則になってきます。
間違っても、次の日までオーダーが待てる薬、病棟ストックがなくて見つからないなどの緊急性のない理由で勝手に呼んではいけないのです。
その代わり、電話での対応は無料だそうです。
今まで、4回にわたりお届けした「看護師と薬」シリーズ、いかがだったでしょうか?
麻薬管理にしても配薬、処方にしてもナースの権限も管理方法も全く違うんですね。
こちらのシステムに慣れてしまうと、日本の現場に戻った時に大目玉を食らいそうですね。
「レバウェル看護」を使うと、より詳しく話を聞くことができます。どんな転職先があるのか等も事前に知ることができます。
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