「短時間正社員制度」の導入で、看護師の夜勤負担の軽減と看護師不足は改善されるのか?

2017.10.8

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看護師不足問題の改善のため厚生労働省が推奨する「短時間正社員制度」は、現在いくつかの医療機関で取り組みが行われています。
また看護師不足の要因にもなっている夜勤についても、さまざまな取組がなされています。

今回は、看護師不足解消と夜勤負担軽減のためにどのような施策があり、どのような変化が起こっているのかをまとめました。

潜在看護師のネックになっている長時間拘束・夜勤

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2017年の看護師国家資格の合格者は55,367名。全体の看護職員は1,537,813人(平成24年時点)いるとされています。

しかし、看護師不足を叫ぶ声が消えることはありません。それは資格を持ちながらも看護職から離れている「潜在看護師」の存在が大きく影響しています。

潜在看護師になっている理由はさまざまですが、出産・育児のためだったり、介護のために離職されているケースが多いようです。また病など体調不良により負担の多い勤務ができないという方もいます。

夜勤には体力、精神力などが必要。しかも拘束時間は長いですよね。
そんな中で、家庭のこと、育児や介護との両立は難しく、また体調のよくない方にはやりたくてもできないという方も少なくないようです。

 
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看護師のワークシェアリング

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最近では、看護師の働きやすさを重要視して短時間勤務制度を設けるなど、ワークシェアリングを重視した雇用形態が増加傾向にあります。しかし、現状では夜勤専門看護師がいるなど、まだ一部に限らているようです。

潜在看護師が働ける時間帯というのは、平日の昼間が多いというのが実情です。そのためには大勢の潜在看護師へ呼びかける必要がありますが、個別の事業所で潜在看護師がどの程度、どこにいるのかを把握することは難しいでしょう。
また潜在看護師側も、看護師のワークシェアリングがあること自体を知らない方も多いですし、どこの事業所がワークシェアリングを実施しているかもわかりません。
この問題を解決するためには、事業所や潜在看護師おのおのに任せるのではなく、自治体や看護業界全体で、情報を共有し、求人紹介できるシステム作りが必要なのではないでしょうか。

また復職した後も看護師が定着して勤務できるよう、ワークシェアリングによる看護師全体のワーク・ライフ・バランスを向上も必須事項と言われています。

看護師ワーク・ライフ・バランス支援制度

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日本看護協会の「看護師のワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック」では、「時間単位で有給を取れる」、「学校休業期間の休暇、及び時間休の取得」、「育児や介護、看護の休暇制度」、「非常勤職員の待遇の改善」など、潜在看護師が復職できるような環境作りを呼びかけています。

看護師のワークシェアリングには看護師のワーク・ライフ・バランスの充実が必要であり、看護師のワーク・ライフ・バランスには看護師がワークシェアリングできる人数の確保が必要なのですね。

日本看護協会 ワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック

ワーク・ライフ・バランスのための夜勤の改善

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看護師として働く上で「夜勤が辛い」と言う声が多い理由として、最大で17時間にも及ぶ長時間の拘束が挙げられます。

日本看護協会では「看護職の夜勤・交代勤務に関するガイドライン」を策定し、看護師がワークライフバランスを取りやすいよう、「拘束時間は13時間以内とする」、「勤務時間は最低11時間以上の間隔をあける」などの具体的な勤務基準を打ち出しています。

また「3交代制勤務は月8回以内を基本とし、それ以外の勤務は労働時間に応じた回数」とするなど、夜勤に関する明記もされています。

これに対し看護師からは、忙しい日勤帯の拘束時間が増えることを不安に感じている声も多いため、日勤勤務も早番・遅番などワークシェアリングする必要がありそうです。

また3交替制では、11時間以上あけることが難しいため、深夜勤怠の時間を伸ばすなど、全体の勤務時間の調整が必要になりそうです。

日本看護協会「看護職の夜勤・交代勤務に関するガイドライン」

看護師が何を優先するか?

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ワークシェアリングについてもう一つの問題があります。
それは夜勤の時間が短くなるということは、その分手にできる給与も減るということです。

しかし17時間もの長時間の拘束を続けていると、人によっては健康的なリスクを伴うおそれもあります。少しでも夜勤にかける時間が減れば、それだけ体にかかる負担も減らすことができます。

末長く看護の仕事に関わっていくためにも、健康は第一です。たくさん働いてしっかり稼ぎたいという方もいらっしゃいますが、体調を優先的に考えるならば、ワークシェアリングや勤務時間の短縮などを考えるのも、一つの方法かもしれません。

まとめ

看護師不足を解消するには、看護師がワーク・ライフ・バランスを取りやすい環境づくりが欠かせません。

そのために看護師のワークシェアリングを導入する試みが始まっていますが、多くの看護師が必要であり、潜在看護師の復職は問題解決にとって大きな鍵となります。

潜在看護師はとくに夜勤勤務の改善、時短正社員制度の導入などにより、ワーク・ライフ・バランスが取りやすくなることで、復職の期待ができます。

つまり看護師不足の問題には、ワーク・ライフ・バランスを充足させるための、ワークシェアリング制度を看護業界全体で本格化させていく必要があります。

そのためには、地方自治体もかかわり、看護師のワークシェアリングの存在を潜在看護師にも広く知ってもらう活動や、自治体などで潜在看護師の数を把握し、地域の看護師のワークシェアリングを行っている事業所の求人紹介なども行っていける大規模な改革が必要とされているのかもしれません。

長年問われ続け、改善が見えなかった看護師不足と看護師の労働環境の改善ですが、2025年問題を前に、今こそ声を上げ、動かしていくべきときが来ているのかもしれませんね。

 
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