針なし注射器は市販されていますが、バネの力によって液体を高圧で体内に届けるため、皮膚を貫く際に神経を傷つけ痛みをともなうこともあります。
しかし近年に入り、針を必要としない注射器が新たに開発されました。「針なし注射器」として早くも注目を集めていますが、この注射器にはどのような特徴があるのでしょうか。
針なし注射器は、2014年に九州大学大学院 工学研究院 機械工学部門 山西陽子教授が、世界で初めてこの注射器の開発に成功した製品です。
バネの力で液体を高圧の状態で発射し、「気泡」の圧力だけで針の代わりに皮膚に穴をあけて、試薬や遺伝子を体内の目的の場所に届けることが可能となっています。
使い方は簡単で、注射器を皮膚に直接押し当ててプッシュするだけで、気泡が高速で発射し皮膚に微細な穴をあけます。そこから試薬が入った気泡が注入され、気泡ガスは収縮して、試薬だけが患部に届きます。
一般的な注射針(献血用)の直径が0.9ミリメートル程度であるのに対し、針なし注射器の穿孔径はわずか4μm(マイクロメートル)程。細胞へのダメージが少なく痛みをともなわない治療が可能になります。さらに液中でピンポイントで気泡を飛ばすメカニズムは今までにない技術であり、物理的にまったく新しい仕組みの注射器という点が特徴となっています。
この針なし注射器の使用によって、患者さん自身の注射への恐怖心を和らげるだけでなく、無痛での注射ができるようになり、さらに針を使うことによるさまざまな医療事故も予防できるようになります。
2016年現在では、針なし注射器の特許を持つHNSインターナショナルの委託を受けて、樹脂製造のタカギセイコー社が新しい針なし注射器を製造しています。こちらの針なし注射器も、直径の小さなノズルから高圧のジェット流で薬が皮膚に注入されるシステムとなっており、インスリンの投与などに使われています。
注射といえば、何かと痛いイメージがつきものの治療ですが、針なし注射器の登場によって無痛での治療に注目が集まっています。
近い将来、針なし注射器の精度や機能の向上によって日本国内でも実用化されれば、小さなお子さんやインスリン治療中の患者さんなど、頻繁に注射を打たなければならない方へ最適な方法になります。
現在では他にもさまざまな大学機関や企業が「針なし注射器」や「痛くない注射」の開発を手掛けはじめており、患者さん・医療スタッフともにストレスの少ない注射治療の実現が期待されています。
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