美味しいスイーツを食べながら、キャリアや人生、お金のことなどを学べると好評の「ナースときどき女子会」。その一環として訪問看護の仕事について学ぶキャリアイベントが2月19日(月)、渋谷・ヒカリエにある「看護のお仕事」で行われました。
第一部では、訪問看護大手ソフィアメディ(株) の人事担当 海老澤 清子さんがトークゲストとして登壇し、業務内容や給与、待遇面など、訪問看護職のイロハを紹介。
続く第二部では、同社で実際に現役訪問看護師として活躍されている福田 夏香さん、麻里 陽子さんをお招きし、現役の訪問看護師が訪問看護のリアルを語るトークセッションを開催。
今回は訪問看護のさまざまな疑問に迫った第二部のレポートをお届けします!
◆登壇者プロフィール
福田 夏香(ふくだ なつか)
宮崎県出身、WOC認定看護師取得、訪問看護師歴11年。総合病院に1年、脳神経循環器専門病院に6年勤務後、訪問看護の道へ
麻里 陽子(まり ようこ)
静岡県出身、訪問看護師歴7年。総合病院に7年、神経内科専門病院での勤務(1年)を経て、訪問看護師に
「看護のお仕事」が看護師957名に実施したアンケート調査によると、「訪問看護に興味がある」と答えた割合は32.7%に上ったものの、92.6%が「実際に働くことになった場合、不安を感じる」と回答しています。
そんな中お二人はなぜ訪問看護師の道を志したのでしょうか。
福田さん:前職では脳神経外科と循環器の救急外来でオペ室に居たので、オペコールが鳴ったら夜でも30分以内に駆け付けなければならなかったんです。そんな状況で昼夜なく働いて心身ともに疲れ果ててしまい、こんな生活が続くならちょっともう看護師はいいかな、と思い、前の病院を退職しました。
転職活動中、「次は全く違う業界で働きたいな。でもこの資格を活かさないのももったいないな」と考えていた時に見つけたのが、訪問看護の仕事でした。経験もないけれど、何か新しいことに取り組みたいという思いがあって今の会社に入社しました。
麻里さん:私は、今だ!ってチャンスをモノにしようと飛び込んだのが訪問看護ステーションでした。以前からいつか必ずとは思っていましたが、果たしてそれはいつなんだろう?自分に自信が持てた時なのかな?と考えているうちに、”たった一度の看護師人生、悔いなく誇れる自分でありたい”って思ったんですよね。そんな気持ちからですね。
ソフィアメディ(株)に所属する訪問看護師の1日のスケジュール(※一例)。「病院とはだいぶ違うと思う」と麻里さん
次に、病院勤めの場合にはイメージしにくい訪問看護師の1日のスケジュールを麻里さんが教えてくれました。
麻里さん:弊社の場合、9時から18時が常勤の時間です。8時55分から朝礼をして、事業所内の簡単な掃除をしてから訪問に出かけます。8時半頃に出勤するスタッフが多いですね。
私たちは担当制で、毎週決まったお客様を訪問させていただきます。その日、それぞれのお客様にどんなケアをするのかもわかっているので、病院みたいに1時間も早く出勤して情報収集をするスタッフはほぼいないですね。でもお客様の変化などは適宜共有しあっています。
そして訪問先へは電動自転車で伺います。10~15分で移動できる半径2、3キロ以内が基本です。1件あたりの訪問時間は60分、1日の訪問件数はひとり5、6件ですかね。ケアマネとはお昼か夕方、ステーションに戻った時に電話で連絡を取り合うことが多いです。
看護記録は、お客様の名前を全部書かないのであれば持ち出しOK。紙カルテで運用しておりますので、皆その日のカルテを抜き出して持っていきます。
訪問先ではバイタルとケア内容を記録します。弊社ではフォーカスチャーティング式(※)で看護記録を付けていますね。それは移動の余った時間に書いたり、休憩に戻ってきたときに書いたり。
※ 患者の経過を出来事に焦点を当てて系統的に記述する看護記録方式。
これで1日の流れとしては終わりです。弊社では直行直帰は認められておりませんので、夕方ステーションに戻って、各所への連絡、ステーション内での報告などを行い、そこから帰宅となります。
患者が自ら受診しに来る病院と、看護師が患者宅に伺う訪問看護。そのギャップや患者との関係性についても聞いてみました。
福田さん:病院とのギャップはそんなに感じませんが、訪問看護師というのはご家族やケアマネが「この人には看護が必要だ」と判断したら、例えお客様ご本人が「来てくれるな」と言っていたとしても行かなければならない。
病院に来る患者さんは自分の意思があるのでケアも比較的スムーズにいくのですが、訪問看護ではお客様ご本人が望んでいないものを提供することの難しさを感じましたね。
麻里さん:時にはそういった場面に対応する技術も必要になりますよね。服薬管理に入って欲しいと依頼をいただいても、最初はそこまでたどり着けないこともあるので、まずはお客様と信頼関係を築くところから始めます。
福田さん:お伺いしても1時間おしゃべりだけして帰るとか、そういったことが何回か続いたりもしますよね。
麻里さん:例えば認知症のお客様だと、まだ信頼関係ができ上がってない中で足を見せてくれるよう頼んでも、「大丈夫、大丈夫」となかなか見せてくれなかったりします。でも、「この看護師さんだから」とお客様から信頼を得てケアにつながった瞬間は、やっぱりやりがいを感じますね。
福田さんは訪問看護師歴11年、麻里さんは7年とベテランのお二人ですが、ともに訪問看護未経験で入社。当初、技術面での不安はなかったのでしょうか。
麻里さん:約8年の臨床経験があったので、なんとかなると思っていました。ただどれだけ判断を任されるのか、訪問看護師としてどのようなスタンスでいけばいいのか、そういった不安はありましたね。
いざ始めてみると、まずは管理者と一緒に訪問するのでわからないところは聞けば答えてくれるし、経験がない技術は先輩についてもらって現場で教えていただきました。判断だけでなくそういった面でもバックアップしてもらえたので、安心の体制でしたね。
それから、オンコールに対する不安と覚悟はありました。でも不安よりやってみたいという気持ちのほうが勝っていましたし、皆やってるんだから私にもできないことはないだろうとプラス思考が働きまして、実際に飛び込んでみたらなんとかなりました。
あとは環境面のこと。雨の日でも電動自転車で行くんですよね。方向音痴な自分でも大丈夫かな?って気にしていたのですが、今はGoogleマップもありますし、カッパも支給されますし。雨のなか颯爽と出発する先輩方がかっこよくて、私もつられて付いて行きました。
福田さん:私はオペ室と救急外来にいたので、技術は本当にオーソドックスなものしかできませんでした。吸引や胃ろうはできましたが、ストーマは学生時代から見たことがなかったですし、ポートも触ったことがなかったです。呼吸器疾患の方の在宅酸素や人工呼吸器にも自信がありませんでしたね。
11年続けてこられたのは、疑問に答えてくださる周囲の方々が居たからです。機械関係は業者さんに勉強会をお願いしたり、ポートとかはクリニックの看護師さんが教えてくれたりすることもあります。
初めてのことってどこの病院、どこの科でもあると思いますが、そこで「わからない、教えてください」って言える勇気さえ持てば、必ず誰かが助けてくれます。そうやってなんとか乗り越えてきた感じですね。
それから一番大変だと思うのは記録と報告書、計画書ですかね。私も残業の多くがその作業でした。でも早い方は早いし、個人差があると思います。
麻里さん:そうですね。1件行ったら実績を提供票に書いたりします。病院にいると医療保険や介護保険などの制度を実感する機会ってあまりないんですよね。
日々の流れと1ヶ月の流れを頭と身体に組み込むまでがちょっと大変かもしれないです。最初の1ヶ月が踏ん張りどころですかね。3ヶ月経てば、「まあこんなもんかっ」という感じになってきますね。
一時期、採用面接も担当していた福田さんによると、訪問看護職志望者の大半が「急変はある?」「もしもの時、どのように対応すればいいの?」という不安を抱えているといいます。
福田さん:まずはお客様の命に関わるレベルか、今すぐ対応しないと呼吸も心臓も止まってしまうかどうかを見極めることが大事かなと思います。
判断に困ったら、まず主治医の先生に連絡をして、もし先生に連絡がつかない場合はステーションの管理者、所長、先輩看護師に相談していただければ大丈夫です。どう対応すればいいのか一緒に考えてくれますよ。
麻里さん:容態が安定している方への訪問が多いので、急変なんて滅多にないですよね。
福田さん:急変の種類にもよりますが、目の前で呼吸が止まって…というような急変はほぼ無いですね。日々訪問していると、そろそろこの方はこういう状況になるかな、って大体予測ができるんですよね。
ですから「その時はこういう対応をとりましょう」と、ステーションの皆と事前に情報共有をしておけば、そんなに慌てることもないです。ただ、訪問時に脳梗塞を発症していたとか、そういった場面に出くわすことはありますよね。
麻里さん:私は救急車を要請するような事態を6年間で2度経験しましたが、その時もそんなに差し迫った状況ではありませんでした。
福田さん:私はもうちょっとありますが、本当に状態が悪くて呼んだのは1、2回かな。明らかに前日に転んでて、見る限り骨折してるだろうなっていう方とか。命に別状がある救急搬送っていうのは、2、3回ですね。
訪問看護師の不安もやりがいも、本音で語ってくださった福田さんと麻里さん。最後にお二人に訪問看護の魅力をお聞きしました。
福田さん:私が大切にしたいのは、お客様が居たい場所に、1日でも1秒でも長く居ていただくということです。そのためにお客様と予防的な関わり方をするのも私たち訪問看護師の非常に大事な役割だと思っています。
例えば入浴介助でお伺いさせていただいたとしても、ただ入浴介助をするだけだったらヘルパーさんで十分だと思うんですね。そこに看護の視点が入るからこそやりがいがあると思うんです。
住み慣れたご自宅でご家族と笑顔で過ごしていただく。看護師としてそういったお手伝いができるのが、訪問看護のいいところじゃないでしょうか。
麻里さん:病院で働いていた時は、ナースコールで呼ばれて行って「ではまた来ますね」の連続で、ちょっと悶々としていたんですよね。でも今は同じお客様のご自宅に毎週行って60分間ケアをしていて、すごく寄り添ったケアをできているなあと思って。
お客様からもご家族の次にご自分のことをよく知っている存在だと思ってもらえますし、やりがいを感じ続けられる職業です。一回在宅に来たら、本当にやめられないですね。
トークセッション後には、訪問看護師の業務内容などをより深く掘り下げる座談会も行われた
実際に現場の声を聞くことで「まだできないことも沢山あるし…」「急変したらどうしよう」などという訪問看護の不安のタネが少し解消されたのではないでしょうか。後で行われた座談会でも、皆さん積極的に質問をされていたのが印象的でした。
トークセッションで福田さん、麻里さんが口を揃えて言っていたのが、「まずは飛び込んでみた」という一言。2018年度診療報酬改定によって、訪問看護師の需要はますます高まることが予想されます。誰しも初めてに不安はつきものですが、今こそが飛び込んでみる絶好のタイミングなのかもしれません。
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