仕事
2018.6.8
手術室に配属になった看護師、手術室で働きたいと思う看護師、看護学生のみなさんの最初の壁は、「手術室看護の勉強の方法」だと思います。
病棟実習では、看護過程を進めながら次週中に、病棟で必要な知識や仕組みをある程学ぶことができます。しかし、手術室看護に関しては、手術室実習がある学校は少なく、あってもそのほとんどが見学実習なので、 学生時代に経験できること、学べることが限られてしまいます。
手術室に配属されても、自分の勉強方法を確立させるまでに時間がかかってしまう…なんてことも。
器械の名称など特殊な知識も必要なので、私も初めはスタッフ同士の会話聞き取れず、「英語?」と戸惑ったことがあります。
手術室での勉強のポイントは、「直接介助」と「間接介助」、そしてその他手術室で使用する必要物品の知識・取り扱い方法(洗浄・滅菌・組立方法を含む)に分けて学習を進めることです。
今回は、「直接介助」をするときの勉強方法についてご紹介します。
まず家でできることですが、各手術室にあるマニュアルや手順書を参考に、手術に関わる部分の解剖生理と疾患、術式についての知識を得ることです。
教科書や参考書、インターネットなども活用するといいですね。
また術前にできる準備として、異なる症例であっても同じ疾患の患者様のレントゲンやCT、MRI画像を事前に見ておくと、手術前の限られた時間でも画像を見やすくなりますよ。
また近年では、多くの診療科で手術を録画していますから、手術の録画映像があれば確認しておくようにします。慣れてくると術野の手術映像だけで執刀医が分かるくらいにはなりますよ。
私のオススメは、2倍速以上で録画映像を見ながら、手術の介助をイメージしていくことです。
例えば「心臓血管外科」の手術では、人工心肺装置ON・OFFや循環停止注意など素早く正確な介助が求められるので、その間の器械やポンプ、針糸の取り扱い(さまざまな種類大きさ針糸を両端針で100本前後使用することもあります)などを繰り返し練習してから手術に入ります。
8-0以下の辛うじて目に見える小さな針糸を取り扱う場合は、サンプルや練習用のものを活用して術前に触れて目を慣らしておくと安心です。
そうすると実際の手術で余裕ができますし、術野をよく見れるようになります。また、緊急時に臨機応変な対応ができるようになりますよ。
ポイントは、疾患と術式をセットで勉強していくことです。
なぜなら同じ術式でも異なる疾患であれば、実際の手術で目の当たりにする光景が全く異なるからです。
当然、注意するポイントや使用する器械、アプローチ方法も異なる場合があります。
例えば、同じ帝王切開術式であっても、「正期産での前回帝王切開術」と「早産期の前置胎盤早期剥離」という診断に対する帝王切開術ではそのリスクが異なり、それぞれに応じたスキルや起こりうる状況を予測した対策が必要になるわけです。
また執刀医によっても必要な器械やアプローチ方法、好みが違います。
ですから1つの症例を経験するごとに、患者さまの状態や執刀医、助手などをメモしておくと、同じような症例の依頼があった場合に対応しやすくなると思います。
実際に手術の準備をします。まずは器械、衛生材料集めです。施設によっては看護助手が準備しているところもあるかと思いますが、当然看護師も理解しておく必要があります。
翌日の朝一の手術等で担当が決まっているものは、前日にマニュアルを見ながら準備しておきます。先輩の指導の下、必要な器械と衛生材料を器械台に集めておきましょう。
ただ器械台やワゴンに集めるのではなく、その時に滅菌の有効期限や梱包に汚染や破損がないか確認します。術前に気が付いても滅菌には時間がかかってしまうため、手術を遅らせることになってしまうからです。(もちろん、展開時にも再度確認します)。
さらに集めた物品は術前に展開しやすいように、また術中に展開してもらう物品(術前に全て展開してしまうと場合によっては汚染されてしまったり、操作上危険があったり、組織の状態に合わせて選ぶ必要がある物品があるため)は、間接介助看護師にとって分かりやすいように整理してセッティングしておきます。
慣れない症例は、必要物品とセッティングの仕方を必ずメモしましょう。
ここで効率よくセッティングできるようになれば、緊急手術の際も無駄なくスムーズに正確な準備ができるようになります。
手術介助が上手くいくかどうかは準備の段階で8割は決まると感じます。ですから初めはゆっくりでいいので確実な準備を心掛けてください。
また、この時に聞きなれない物品や使用方法が分からない物品があれば、手術前までに何にどのように使用するのか把握しておくべきです。
術前に滅菌物の展展をします。滅菌物の取り扱い方法は、オリエンテーションで指導されると思いますが、大きさや重さがある手術器具の展開は意外と難しいものです。
また器械台の限られたスペースに、「こんなにあるの?」と目を疑うほどたくさんの器械や衛生材料を展開していくこともあります。
しかし、カウントや準備のがしやすい順番や器械の位置・方向など展開していくコツがあります。また、針など危険なものものあります。
先輩の展開方法を図に書いたり写真を撮ったりして、上手に展開できるように覚えてくださいね。
ここからは、手術時の手洗いを済ませてガウン手袋を着用した後の流れです。
器械や衛生材料を手に取り、破損や汚染がないか確認しながらカウントして並べていきます。ネジが多い器械や筒状の器械は要チェックですね。
展開時と同様にここでもコツがあります。基本は「手術で使用する順番」で準備を進めていきます。
また準備に時間がかかるものや術中には準備が難しいものも、ここで準備をしていきます。
さらに患者さまのアレルギーの有無が確認できてから、薬剤を用意することもあります。
先輩の準備を見ながら、その順番と配置、準備の仕方を滅菌された紙とペンでメモしてください。
滅菌の紙とペンは術中にメモをとるときにも使うことができます。
患者様の消毒が終わったら、術野の布掛けが始まり、術野セッティングが行われます。
手術部位ごとに方法が異なりますが、それぞれ決まったやり方で毎回行われるので、メモをとって覚えるようにしてください。
術前からスムーズに術野の準備が整うと、気持ち良く手術が始めることができますね。
手術が始まってからは術野を見るようにしてください。
「術野を見ろと言われても何処を見てればいいの?」と初めは思うかもしれません。
実際の解剖生理を確認することはもちろんですが、私たちはその組織の部位(深さや配置から器械や助手の介助で視野を確保する方法を考えます)や、その柔軟性、厚さ、取り扱いやすさ(強弱、破れやすい、裂けやすいなど)などを見て、器械をどのように用いて手術を進行させるのか、見た目やその性質から組織の扱い方、器械の使い方を考えています。
術野を見ていて、場面ごとのアプローチ方法、器械の使い方が分かってきたら、次は先輩看護師の動きを見てみましょう。
必要な場面になってから器械や衛生材料や薬品を手に取って医師に渡しているのではないことがわかると思います。
必要になる少し前の場面から、それらを自分の近くに持ってきておいて、動作チェック等、準備を済ませてから術野に出していることがわかると思います。
必要な器械を必要な場面で使用するためには、手術の進行の1?2手先が準備できている必要があるのです。先輩の動きを見ながら、場面場面の器械台の様子をメモしておくことをおすすめします。
ようやく手術が終わりましたね。長い時間介助についていると緊張もあってドッと疲れを感じると思います。しかし、ここで終わっては勿体無いです。術後時間があれば、すぐに振り返りを行うことがとても大切です。
取り扱いが難しかった器械などは、急ぎで使用する手術が控えていなければ、術後取り扱い方法を確認しておくといいですよ。先輩に質問するのもいいですね。
手術で使用する器械はすぐに滅菌してしまったり、借用の器械は返却してしまうため、次の手術まで手に取って確認することができないのです。
この時も取り扱いには充分注意してください。汚染された器械ですので、針刺し等の危険が生じるものはやめましょう。
そして、もっとも重要なのは「振り返り」です。メモを見返して、ノートにまとめることが学習につながります。
「振り返り」といっても初めは「何がわからなかったのかがわからない」と思います。
必要物品に関しては、不足があったかどうかを確認して、ノートに書き足しておきます。
その後、次回から一人でも出来るように詳しく書き直します。(2回目で1人になることはないと思いますが、いつでも1人でできるように備える気持ちが大切です)。
術中も可能ですが、特に準備の段階までは、自分の書いたノートを見ながら、不足なく準備することも可能です。
手洗い後の準備は過不足なく出来るように、順番にノートに書き出しておく(大きな字で、絵や写真を用いてパッと見たら分かるものがいいですね)と良いです。
術中はあまりお勧めできませんが、要点やどうしても不安な箇所だけは紙に書いて貼っておくと安心できることもあります。手術中に頭が真っ白になってしまうこともありますし、長い行程の中で混乱してしまうこともあります。患者様の安全を第一に考えて、勉強と対策をしてみてくださいね。
手術では、患者様の生命に直接関わる場面が少なくありません。また患者様の安全、安楽を守るために手術室看護師ができる看護は、病棟で患者様とコミュニケーションを図りながら関わる看護とはかなり違うと感じられるかもしれません。
しかし、手術室看護師による確実な準備と介助で手術が安全に進行すること、その結果、麻酔時間が短縮したり、低侵襲の手術が行われることは、患者様に対しての大切な看護のひとつの形です。
医療の進歩によって次々に新しい術式やアプローチ方法、器械が導入されていきます。その中で、最善の準備で患者様を迎えることができるように、私たち手術室看護師は日々勉強しているのです。
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